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第15話 堅牢

 実技試験から数日後。


 リーゼ達は再び森へ来ていた。


 定期実習である。


「今日はホーンラビットの討伐だ」


 教師が説明する。


 生徒達が頷く。


 ホーンラビット。


 頭に角の生えたウサギ型モンスターだ。


 弱い。


 だが油断すると突進で怪我をする。


「では行け」


 班ごとに森へ入る。


 しばらく進むと。


「いましたわ」


 クラリスが指差した。


 木の陰。


 一匹のホーンラビットがこちらを見ている。


「任せてくださいまし」


 リーゼが前へ出た。


「お?」


 カイルが笑う。


「珍しいな」


「魔法使いですもの」


 リーゼは胸を張った。


 杖を構える。


 魔力を集める。


「ファイア!」


 火球が飛ぶ。


 見事に命中。


 ホーンラビットは吹き飛んだ。


「やりましたわ!」


「おお」


 ミーナが拍手する。


「上手くなってるね」


「当然ですわ」


 リーゼはご満悦だった。


 やはり自分は魔法使いなのだ。


 前衛ではない。


 絶対に違う。


 その時だった。


 別の茂みが揺れる。


「もう一匹ですわ!」


 クラリスが叫ぶ。


 だが。


 現れたのは二匹だった。


「二匹!?」


 ミーナが驚く。


 ホーンラビット達は一斉に走り出した。


 こちらへ向かって。


「迎え撃つ!」


 ゴードンが前へ出る。


 だが一匹が横へ回り込んだ。


「まずい!」


 カイルが叫ぶ。


 リーゼは反射的に振り向く。


 目の前。


 ホーンラビットの角が迫っていた。


「え?」


 回避は間に合わない。


 ドスッ!


 角が脇腹へ当たった。


「痛いですわ!」


 リーゼは叫ぶ。


 だが。


「……あれ?」


 思わず首を傾げた。


 痛い。


 確かに痛い。


 だが。


 前回の棍棒よりかなり軽い。


 むしろ。


「前より痛くありませんわ?」


 全員固まった。


「え?」


 ミーナが言う。


「え?」


 クラリスも言う。


「え?」


 カイルも言う。


「え?」


 ゴードンまで言った。


 リーゼは脇腹を触る。


 服は少し汚れている。


 だが怪我はない。


 本当にない。


「え?」


 今度はリーゼが言った。


 その隙にゴードンがホーンラビットを倒す。


 戦闘終了。


 しかし誰もホーンラビットを見ていなかった。


 全員リーゼを見ていた。


「前より?」


 ミーナが聞く。


「はい」


「比較対象は?」


 カイルが聞く。


「ゴブリンの棍棒ですわ」


 沈黙。


 全員が頭を抱えた。


「比較対象がおかしい」


 カイルが言う。


「そうですわね」


 クラリスも頷く。


「普通は比較しない」


 ミーナも言う。


「だな」


 ゴードンも言う。


 リーゼは納得できなかった。


「でも本当に前より痛くありませんでしたわ」


 その時だった。


 教師が近付いてくる。


「堅牢だな」


「堅牢?」


 リーゼは聞き返した。


「先日のスキルだ」


 教師は頷く。


「防御力向上系だろう」


 リーゼは固まった。


「防御力」


「ああ」


「防御力ですの?」


「ああ」


 教師は当然のように頷く。


 リーゼは天を仰いだ。


「魔法ではありませんわね」


「ないな」


 即答だった。


 リーゼは膝をつく。


 絶望だった。


 その時。


 体が光に包まれた。


「え?」


 見覚えのある光。


【レベルが5になりました】


 嫌な予感しかしない。


 そして。


【VIT+20】


「ですよねーーー!!」


 もう驚かなかった。


 少しだけ慣れてきていた。


 さらに文字が浮かぶ。


【シールドバッシュを習得しました】


「…………」


 リーゼは固まった。


 もう一度見る。


【シールドバッシュを習得しました】


 変わらない。


 三度見る。


【シールドバッシュを習得しました】


 やはり変わらない。


「どうしましたの?」


 クラリスが心配そうに聞く。


 リーゼは遠い目をした。


「わたくし」


「はい」


「盾持ってませんわ」


 沈黙。


 教師が頷く。


「そうだな」


 ミーナも頷く。


「そうだね」


 カイルも頷く。


「持ってないな」


 ゴードンも頷く。


「持ってない」


 リーゼは震える声で続けた。


「魔法使いですもの」


「そうだな」


 教師が頷く。


「なぜシールドバッシュなんですのーーー!!」


 リーゼの悲鳴が森中に響き渡った。

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