第14話 実技試験
実技試験当日。
訓練場には多くの生徒達が集まっていた。
リーゼ達も開始を待っている。
「緊張しますわね」
クラリスが言う。
「少しだけですわ」
リーゼも頷いた。
だが内心は少し違う。
試験そのものより。
別の不安があった。
「前衛」
教師の言葉が頭をよぎる。
「違いますわ」
即座に否定した。
「何が?」
ミーナが首を傾げる。
「なんでもありません」
言いたくなかった。
非常に言いたくなかった。
その時。
教師が全員を集める。
「試験内容を説明する」
生徒達が静かになった。
「森の中に配置されたモンスターを討伐してもらう」
予想通りだった。
「討伐数と連携を評価する」
リーゼは頷く。
連携。
つまりパーティ戦だ。
「それでは開始」
班ごとに森へ入る。
しばらく進む。
最初に見つけたのはスライムだった。
「任せてくださいまし」
クラリスが前へ出る。
「ファイア!」
火球が命中。
スライムが消える。
「お見事ですわ」
「ありがとうございます」
順調だった。
その後もゴブリンを一体討伐。
ミーナもウォーターで援護する。
カイルは風で牽制。
ゴードンは前に立つ。
理想的な連携だった。
そして。
「次ですわ」
リーゼが前を見る。
そこにいたのは。
三体のゴブリンだった。
「三体?」
ミーナが顔を引きつらせる。
今までより多い。
「どうする?」
カイルが聞く。
「いつも通りですわ」
クラリスが答える。
だが。
その瞬間だった。
一体のゴブリンが横から飛び出す。
「まずい!」
カイルが叫ぶ。
ゴードンが反応する。
しかし少し遅い。
ゴブリンの棍棒が振り下ろされた。
狙いはクラリス。
「危ないですわ!」
リーゼが飛び出した。
考えるより先に体が動いていた。
ドゴッ!
鈍い音が響く。
棍棒がリーゼの頭へ直撃した。
「リーゼさん!」
クラリスが悲鳴を上げる。
ミーナも顔を青くした。
だが。
「痛いですわーーー!!」
リーゼは叫んだ。
叫んだだけだった。
倒れない。
怪我もしない。
ゴブリンの方が驚いていた。
「え?」
ミーナが固まる。
「え?」
カイルも固まる。
「え?」
クラリスも固まる。
「え?」
ゴブリンまで固まった。
リーゼ本人も固まった。
その隙に。
ゴードンがゴブリンを吹き飛ばす。
「大丈夫か!?」
「痛いですわ!」
「怪我は!?」
「ありませんわ!」
沈黙。
全員がリーゼを見た。
「…………」
「…………」
「…………」
リーゼは視線を逸らした。
嫌な空気だった。
非常に嫌な空気だった。
そして残る二体のゴブリンが動く。
「まだですわ!」
リーゼは杖を構えた。
「ファイア!」
火球が飛ぶ。
一体へ命中。
ゴブリンが倒れた。
最後の一体はカイルのウィンドで体勢を崩し、ゴードンが止めを刺す。
これで終了だった。
その瞬間。
リーゼの体が光に包まれる。
「またですの?」
見覚えのある光だった。
【レベルが4になりました】
嫌な予感がした。
非常に嫌な予感がした。
目の前に文字が浮かび上がる。
【VIT+20】
「やっぱりですわーーー!!」
思わず叫んだ。
「どうしたの!?」
ミーナが驚く。
「なんでもありませんわ!」
全然なんでもよくなかった。
さらに文字が浮かぶ。
【堅牢を習得しました】
「…………」
リーゼは固まった。
もう一度見る。
【堅牢を習得しました】
変わらない。
三度見る。
【堅牢を習得しました】
やはり変わらない。
「どうしましたの?」
クラリスが心配そうに聞く。
リーゼは震える指で自分を指差した。
「わたくし」
「はい」
「魔法使いですわよね?」
沈黙。
クラリスが目を逸らした。
ミーナも目を逸らした。
カイルも空を見上げた。
ゴードンは何も言わなかった。
答えは出ていた。
「違いますわーーーーーー!!」
リーゼの悲鳴が森に響き渡った。




