第12話 鑑定
翌日。
リーゼは教室へ入った瞬間、嫌な予感がした。
何人かの生徒がこちらを見ている。
しかも。
ひそひそ話までしていた。
「……?」
自分の席へ向かう。
するとミーナが手を振った。
「おはよう」
「おはようございます」
リーゼが席へ座る。
その瞬間。
後ろから声が聞こえた。
「石頭のリーゼだ」
リーゼは固まった。
「誰ですの?」
「お前だろ」
カイルだった。
「違いますわ!」
「でも棍棒直撃だったぞ」
「それはそうですけれど!」
ゴードンも頷く。
「無傷だったな」
「無傷でしたわね……」
自分で言っていて悲しくなった。
するとクラリスまで頷いた。
「石頭ですわね」
「そういう意味ではありませんわーーー!!」
教室中に声が響いた。
何人かが振り返る。
リーゼは机へ突っ伏した。
酷い。
非常に酷い。
自分は魔法使いを目指しているのだ。
石頭ではない。
「頑固という意味では?」
ミーナが首を傾げる。
「それも違いますわ!」
「そうか?」
カイルが聞く。
「ファイアを即決してたぞ」
「炎は格好いいからですわ!」
「頑固だな」
「違いますわーーー!!」
笑い声が広がった。
完全におもちゃにされていた。
その後。
授業が始まった。
今日は火属性魔法の基礎理論である。
リーゼは真面目にノートを取った。
魔力の流れ。
属性変換。
火球の安定化。
どれも興味深い。
「やはり魔法は素晴らしいですわ」
授業が終わる頃には機嫌も直っていた。
やはり自分は魔法使いなのだ。
VITなど知らない。
挑発などもっと知らない。
そう思いたかった。
昼休み。
リーゼはクラリス達と食堂へ向かっていた。
「リーゼさん」
クラリスが声を掛ける。
「なんですの?」
「本当にVIT四十五ですの?」
「本当ですわ」
クラリスは驚いた顔をした。
「わたくし七ですわ」
「七ですの?」
「はい」
ミーナも頷く。
「私は六かな」
「六ですわね」
カイルは八。
ゴードンは十二。
教師が言っていた通りだった。
そして。
リーゼは四十五。
「おかしくありません?」
「おかしいな」
カイルが即答した。
ゴードンも頷く。
「俺もそう思う」
「わたくしもですわ!」
ようやく意見が一致した。
その時。
リーゼはあることを思い出す。
「そうですわ」
「どうした?」
カイルが聞く。
「先生に相談しますわ」
全員が頷いた。
確かにその方が良い。
放課後。
リーゼは職員室へ向かった。
「失礼します」
昨日の教師が顔を上げる。
「どうした?」
「相談があります」
「またか」
「またですわ」
リーゼは真顔だった。
教師も真顔になった。
そして。
「わたくしは魔法使いですわよね?」
開口一番それだった。
教師は吹き出した。
「何がおかしいんですの!?」
「いや」
教師は肩を震わせる。
「真剣な顔で言うからな」
リーゼは不満そうだった。
「昨日の件ですわ」
「ああ」
教師は頷く。
リーゼも姿勢を正した。
「挑発ですわ」
「そうだな」
「VIT四十五ですわ」
「そうだな」
「魔法学院ですわ」
「そうだな」
「おかしくありません?」
「おかしいな」
即答だった。
リーゼは少し安心した。
やはりおかしいらしい。
「ですよね!」
「だが」
教師は腕を組む。
「原因はスキルだろう」
「X-Twentyですわね」
「ああ」
信託の儀で表示されたスキル。
説明文が途中で切れていた謎のユニークスキル。
「先生は続きを知りませんの?」
「知らん」
「ですよね」
少し期待していた自分が馬鹿だった。
教師は続ける。
「中級鑑定ならスキル名までは見える」
「はい」
「だが詳細説明までは見えない」
「詳細説明?」
「スキルの本当の効果だ」
リーゼは目を見開いた。
「見えませんの?」
「上級鑑定が必要だ」
希望が見えた。
「学院に使える人は?」
「学院長くらいだな」
「学院長!」
リーゼの顔が明るくなる。
しかし。
「忙しいぞ」
教師が言った。
「今頼んでも順番待ちだろうな」
「どれくらいですの?」
「半年かもしれん」
リーゼは机に突っ伏した。
長い。
非常に長い。
「ちなみに」
教師が付け加える。
「ユニークスキルだからな」
「はい」
「学院長が見ても教えてくれるとは限らん」
「なんでですの!?」
「本人の成長を妨げる場合もある」
リーゼは絶望した。
その時だった。
教師が思い出したように言う。
「そういえば」
「なんですの?」
「来月の実技試験だが」
嫌な予感がした。
「前衛役が不足している」
「はい」
「リーゼ」
「はい」
「前に出てみるか?」
沈黙。
リーゼは立ち上がった。
「魔法使いですわーーー!!」
職員室に絶叫が響く。
教師は笑いを堪えていた。
リーゼは机を叩いた。
「笑い事ではありませんわ!」
「だがな」
教師は肩を震わせる。
「私にはもう前衛の才能にしか見えん」
「見ないでくださいましーーー!!」




