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第11話 なんで無傷なんですの?

 実習終了後。


 リーゼは完全に囲まれていた。


 前にはクラリス。


 右にはミーナ。


 左にはカイル。


 後ろにはゴードン。


 逃げ場はない。


「説明してくださいまし」


 クラリスが微笑む。


 だが目は真剣だった。


「何をでしょう?」


 リーゼは視線を逸らした。


「全部です」


 逃げられなかった。


 教師まで近付いてくる。


「私も聞きたいな」


「先生までですの!?」


 リーゼは頭を抱えた。


 どうやら本当に逃げられないらしい。


 仕方なく口を開く。


「まずですね」


 全員が耳を傾ける。


「レベルアップしましたの」


「それは見てた」


 ミーナが頷く。


「それで変なスキルを覚きましたの」


「変なスキル?」


 カイルが首を傾げた。


 リーゼは深くため息を吐く。


「挑発ですわ」


 沈黙。


「挑発?」


 クラリスが聞き返す。


「挑発です」


「魔法じゃないな」


 カイルが即答した。


「魔法じゃありませんわ!」


 リーゼも即答した。


 教師が鑑定を使う。


 しばらくして頷いた。


「確かに挑発だな」


「ほら!」


「効果は敵意を自分へ向ける」


 全員が納得した顔になる。


「あ」


 ミーナが声を上げた。


「だからゴブリンがリーゼに向かったの?」


「そういうことだな」


 教師が頷く。


 リーゼは頭を抱えた。


「わたくし火属性なんですのよ?」


「そうだな」


「魔法学院なんですのよ?」


「そうだな」


「なぜ挑発なんですの?」


「知らん」


 教師は即答した。


 リーゼは泣きそうになった。


 するとゴードンが腕を組む。


「でも」


「はい?」


「それより気になることがある」


 リーゼは嫌な予感がした。


 非常に嫌な予感だった。


「なんで無傷なんだ?」


 全員が頷く。


 そっちだった。


「棍棒が頭に当たりましたわよね?」


 クラリスが聞く。


「当たりましたわ」


「痛かったんだよね?」


 ミーナが聞く。


「痛かったですわ」


「でも怪我はなかったな」


 カイルが言う。


「ありませんでしたわ」


 沈黙。


 全員がリーゼを見る。


「なんで?」


 綺麗に揃った。


 リーゼは天を仰いだ。


 自分も知りたい。


 本当に知りたい。


「たぶん」


「たぶん?」


 教師が聞く。


「VITですわ」


 また沈黙した。


「いくつだ?」


 教師が聞く。


「四十五ですわ」


 さらに沈黙した。


「……四十五?」


 ミーナが聞き返した。


「四十五ですわ」


「四十五?」


 カイルも聞き返した。


「四十五ですわ」


「四十五ですの?」


 クラリスまで聞き返した。


「四十五ですわ!」


 リーゼは少しキレた。


 教師が眉をひそめる。


「ちなみにゴードン」


「おう」


「VITはいくつだ?」


「十二」


 全員固まった。


 リーゼも固まった。


「十二?」


「十二だ」


 ゴードンは頷く。


「俺が知る限り、新入生では高い方だぞ」


 教師も頷いた。


「確かに高いな」


 リーゼはゆっくりとゴードンを見る。


 大きい。


 筋肉も凄い。


 どう見ても前衛。


 どう見てもタンク。


 そして自分を見る。


 火属性志望。


 魔法学院。


 ファイア使い。


 十五歳の少女。


 VIT四十五。


「…………」


 嫌な汗が流れる。


 クラリスが遠慮がちに聞いた。


「リーゼさん」


「はい」


「もしかして」


「はい」


「わたくし達の中で一番硬いのでは?」


 リーゼは固まった。


 教師を見る。


 教師は目を逸らした。


 ゴードンを見る。


 ゴードンも目を逸らした。


 ミーナを見る。


 苦笑いだった。


 カイルを見る。


 笑いを堪えていた。


 答えは出ていた。


「なんでですのーーーーーー!!」


 リーゼの悲鳴が学院中に響き渡った。

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