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第10話 挑発

 歓迎実習から数日。


 リーゼ達は再び森へ来ていた。


 今回も実践訓練である。


「前回より少し奥へ行く」


 教師が言った。


 生徒達は頷く。


 リーゼも杖を握り直した。


 ファイアを覚えてから毎日練習している。


 少しずつだが上達もしていた。


「次こそ活躍しますわ」


「前回も活躍してたよ?」


 ミーナが言う。


「スライム一匹です」


「十分だろ」


 カイルが笑う。


 クラリスも頷いた。


「わたくしもまだ一匹も倒しておりませんわ」


 そう言われると少し嬉しい。


 その時だった。


 前方の茂みが揺れる。


「止まれ」


 教師が手を上げる。


 現れたのはゴブリンだった。


 小柄な人型モンスター。


 棍棒を持っている。


「ゴブリンですわね」


 リーゼが杖を構える。


「よし」


 教師が頷く。


「今回は班で倒してみろ」


 生徒達の表情が引き締まった。


 ゴブリンが二体。


 こちらへ向かってくる。


「クラリス!」


「はい!」


 二人同時にファイアを放つ。


 火球が命中。


 一体が倒れた。


 だがもう一体は止まらない。


 そのまま走る。


 クラリスへ向かって。


「危ないですわ!」


 リーゼが前へ飛び出した。


 その瞬間。


 体が光に包まれる。


【レベルが3になりました】


「え?」


 見覚えのある光だった。


 そして。


 目の前に文字が浮かぶ。


【VIT+20】


「やっぱりですのーーー!!」


 リーゼは叫んだ。


 さらに。


【挑発を習得しました】


「は?」


 思わず固まる。


 挑発?


 挑発とは何だろう。


 魔法だろうか。


 いや違う気がする。


 非常に嫌な予感がした。


 その時だった。


 ゴブリンがリーゼを見る。


 そして。


 目の色を変えた。


「え?」


 ゴブリンが走る。


 リーゼへ。


 一直線に。


「なんでですの!?」


 回避が間に合わない。


 ゴブリンが棍棒を振り上げた。


「リーゼさん!」


 クラリスが叫ぶ。


 次の瞬間。


 棍棒がリーゼの頭へ直撃した。


 ドゴッ!!


 鈍い音が響く。


「痛いですわーーー!!」


 リーゼの悲鳴が森に響いた。


 ミーナが青ざめる。


 カイルも固まる。


 クラリスも悲鳴を上げた。


 ゴードンまで顔色を変えている。


 だが。


 リーゼは倒れなかった。


「……え?」


 ミーナが呟く。


 リーゼも呟いた。


「……え?」


 痛い。


 確かに痛い。


 ものすごく痛い。


 だが。


 それだけだった。


 頭を触る。


 血は出ていない。


 腫れてもいない。


 傷もない。


「え?」


 リーゼはもう一度呟いた。


 周囲も同じだった。


「え?」


 全員の声が綺麗に揃った。


 その隙に教師が前へ出る。


 ゴブリンを一撃で倒した。


 戦闘終了である。


 だが誰もゴブリンを見ていなかった。


 全員がリーゼを見ていた。


「……」


「……」


「……」


 沈黙。


 リーゼは嫌な予感がした。


 非常に嫌な予感だった。


 クラリスが口を開く。


「リーゼさん」


「はい」


「なんで無傷なんですの?」


 逃げられそうになかった。

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