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転生探偵~殺人事件よりも、俺はキスがしたい。  作者: 長月透


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3/9

転生探偵3 一日目、夜

挿絵(By みてみん)

コンコン、誰かがドアをたたく音で俺は目を覚ました。どうやら寝てしまっていたらしい。外から佐藤さんの声が聞こえてくる。

「黒野様、森田様、ご夕飯の用意ができましたので、よろしければ一階にお越しください。」

「あ、すいません、今行きます」

俺は未だに夢の中にいる森田をたたき起こして、軽く身支度を整えた後一階に向かった。

一階に向かうと、すでに俺たち以外はダイニングに集まっているようだった。ダイニングには、四人は座れるであろう丸机が四つ設置されている。無駄に机が大きいせいか、一人で席についている白石と新沼が寂しく見える。だが、その寂しさもすぐに解消されることとなった。俺たちが席に着こうとしたとき、白石がこちらを見つけて手招きしてきた。

「黒野さん!よかったら一緒にご飯食べませんか?一人だとなんだか寂しくって…他の皆さんも良ければ一緒に食べませんか?」

凄いな、この子は。小学生でもここまで積極的に友達を作りにはいかないだろう。嫌がるかと思ったが、意外にも他の三人は、椅子を動かしてこちらに移動してきた。これも彼女の人当たりの良さの効果なのだろうか。結局、丸机を二つくっつけて、それを囲んで六人で座ることとなった。俺の左には白石が、右には坂本さんが座っている。両手に花とはこのことだろうか、俺はそんなことを考えながら運ばれてきた料理に目を落とした。料理自体はシンプルなもので、焼き立てのパンとチキンソテー、体の温まるコーンスープに付け合わせのサラダというラインナップだった。料理も出そろったところで、白石の提案で各々軽い自己紹介をすることとなった。佐藤は料理を出し終えた後、自室に戻ろうとしたが白石に捕まり、自己紹介に加わることとなった。可哀想に。まず先陣を切ったのはもちろん白石だった。彼女は明るく、はきはきとした声で名前や趣味などを述べていった。自己紹介は白石から右回りで行われることになったので、次は俺の番である。俺は先ほどのように声が裏返ることがないよう気をつけながら、白石に倣って自己紹介をした。その後も自己紹介は順調に進み、最後は森田の番となった。

「初めまして、森田って言います。今は大学二年生で、そっちに座ってる黒野と二人でスキー旅行に来ました。趣味は…う~ん、キャンプとか家族でよく行きます。」

森田が言い終えるのとほぼ同時に、白石が食いついた。

「え!キャンプ好きなの?私も好き!」

二人がそのままキャンプの話題に移ったのを見て、何となく全体の自己紹介は終わった。俺はせっかく坂本さんと隣になれたので、勇気を出して話しかけてみることとした。

「坂本さんは…どういった本が好きなんですか?」

幸いにも先ほど坂本さんは読書が趣味だと言っていたので、会話のネタには困らなかった。

「ジャンルで言ったら…ミステリー小説が好きですね。犯人はこの中にいるとかいう、あれです」

流石、俺の理想をすべて盛り込んだヒロインである。小説の好みが俺と全く同じだ。

「僕もミステリー好きなんですよ!クローズドサークル物とか大好きです。」

「えっ!そうなんですか?ミステリー好きな人あんまり周りに居なくて…オススメの本とかあったら教えて欲しいです!」

顔を近づけてくる彼女にドキドキしながらも、俺たちはミステリー小説の話をしながら食事を楽しんだ。一番好きな本は何だとか、隠し通路は嫌いだとか、どんでん返しについてどう思うかとか、ミステリー好きでなければ何を言っているのか分からないであろう話を小一時間つづけた。突発的な交流会だったが、思っていたよりも親交が深まったようだ。新沼と斎藤も、なにやら楽しそうに二人で話している。佐藤は…どうやらキッチンでデザートの用意をしているみたいだ、自己紹介に参加してくれた上、わざわざデザートまで用意してくれるなんて頭が上がらない。目線を坂本さんに戻すと、彼女と思い切り目があったのでドキリとした。

「もし良かったら…ラインとか交換しませんか?ぜひ小説について色々お話ししたいです。」

…何という事だ。女性とまったく縁の無かった俺が、会ったばかりの超絶美人からLINEの交換を要求された。やはりこの世界は最高である。俺はスマホを取り出し、ラインを交換しようとした-----が、

「なぁ黒野、あのピンクの車俺たちのだよな!」

「えー!そうなんですか!?てっきり坂本さん達が乗ってきたやつかと思ってました。」

森田め!どうでも良い話題で良い雰囲気を邪魔しやがって!しかもピンクの車なんて微妙に恥ずかしい事を大声で言わないでくれ。

「え、あぁそうだよ。親のやつだけどね、親の。」

俺は言い訳をするかのように質問に答えた。すぐにでも坂本さんとの会話に戻りたかったが、そのまま二人はこちらの会話に入り込んできたので、ラインを交換するタイミングを失ってしまった。

「黒野、デザートなんだと思う?予想しようぜ」

俺はこいつを許さない。絶対に。その後、白石と坂本さんは使っている化粧品の話で盛り上がり、その流れで斎藤も巻き込み女子トークが開催された。そして、お役御免となった男共も、野郎トークを開催する事となった。

「へー、じゃあ今はIT関係のお仕事をされてるんですね。」

「はい。いつもパソコンにしがみついているので、たまの息抜きとしてスキーをしにきたんですよ。あのまま椅子に座ってたら、いつか石になっちゃいそうでしたから。」

よくもまぁここまで嘘をつけるものだと俺は感心した。新沼の本当の職業は記者なのにも関わらず、IT関係の仕事だと平気で嘘をついている。ほとんどの人にとって、IT関係と言われてもピンとこないだろう。深掘りされないような仕事を選んでいるのだ。そうこうしていると、佐藤さんが食後のデザートを運んできた。一般的なカットフルーツの盛り合わせ、俺は先ほど森田に恋の邪魔をされたため、どこかイライラしていた。どうにかしてこのイライラを収めたい。そう思った俺は、佐藤さんにお酒は無いかと聞いてみた。つまりやけ酒である。意外にもこのペンション内にはワインやウイスキー、日本酒といったお酒が置かれているらしく、別料金ではあるがいただくことができるようだ。俺はせっかくなのでワインを注文すると、森田もそれに倣ってワインを注文した。二人とも一応二十歳にはなっている。

「新沼さんもどうです?せっかくの旅行なんですから吞みましょうよ!」

俺にとってはただのやけ酒なのだが、その原因の森田にとってはただの旅行イベントでしかないのだろう。新沼は飲まないだろうなと思ったが、彼もワインを注文した。悪徳記者である事がバレないように、人付き合いも良くしようと心掛けているのかもしれない。こんな悪人と酒を飲みかわすなんて…と気が進まなかったが、意外にも楽しく語り合った。

「最近の若い奴は駄目だ、結果が出ないとすぐに諦める!何事も粘り強く続けるべきなんだ!」

新沼はこう見えてお酒に弱いらしく、すぐに呂律が回らなくなり面倒くさいおじさんになった。彼の言う粘り強さとは、おそらく人の家の前に何日も張り込むことだろう。このまま自分が記者であることをうっかり話してしまうのではないかと思ったが、そこはかろうじて自制できているようだ。そういう俺も、かなり酔いが回ってきた。視界がぐらつき、足元がふらつく。

「俺が二十歳の頃なんて、朝から晩までひたすら走り回ってたよ、毎日それの繰り返し。足を使うのなんて古いって皆言うけど、まずは結果。結果を出すことが大事なんだよ!」

新沼の話を右から左に受け流しながらふと、女性陣の方を見てみた。相変わらず美容の話で盛り上がっているみたいだ。未成年の白石は当然として、坂本さんと斎藤もお酒を飲んでいる様子はない。初対面の男がいる場所で酒を飲んで酔っ払ってしまうような女性たちではないのだろう。…パリーン!背後でお皿の割れる音がした。何事かと振り返ってみると、酔った新沼が椅子から転げ落ち、その反動でデザートの皿が落ちて割れた様だ。すでに新沼は半分寝息をかいている、こいつは酔いすぎだ。音を聞きつけた佐藤が、床に散らばったガラスの破片を集めようと洗面所に掃除道具を取りに行った。肝心の新沼は、森田によって二階の部屋に運ばれることになった。俺も手伝おうと思ったが、思っているよりも酔っていたらしく、かえって危険だから辞めてくれと女性陣に制止された。森田が新沼を二階に運んでいくのを眺めながら、俺は椅子に座り直し、ぼんやりと天井を眺めていた。すると坂本さんがコップに水を入れて、机の上に置いた。なんと優しい子なのだろうか、俺は感動で目に涙が浮かんだ。そのおかげもあってか、先ほどよりは酔いがましになっていった気がする。

「申し訳ないのですが、どなたか新沼さんの部屋に水だけ持って行ってもらってもよろしいですか?」

床のガラスをかたずけていた佐藤が申し訳なさそうに言う。

「あ、じゃあ私持っていきます。」

斎藤がそういって立ち上がり、コップに水を入れ始めた。ちょうどそのタイミングで新沼を二階に運び終えた森田も帰ってきた。どうやら彼もそれなりには酔っているらしく、足元がおぼつかない。はしゃぎすぎたな…俺は少し反省しながら大きく息を吐いた。それとほぼ同時に、先ほどまで佐藤の掃除を手伝っていた白石が、小さく欠伸を漏らした。ダイニングの壁にかかっている時計をみると、時刻は二十二時を回っている。

「今日は皆さまお疲れでしょうし、早めにお休みになった方がよろしいかと思います。」

佐藤さんの忠告もあり、俺たちは各自部屋に戻ることとなった。おぼつかない足元に気を付けながら、階段を上り、二階へと上がっていく。途中、新沼の部屋の前に着くと、ちょうど斎藤が外に出てきた。どうやら新沼も目を覚ましたようで、軽く顔をだしてこちらに会釈した後、自室に戻り内側から鍵をかけた。そのまま斎藤も合流し、軽くあいさつをした後それぞれが自分の部屋に戻った。部屋に戻った俺はひとまず洗面所で顔を洗い、ベッドに横になった。森田はベッドでスマホを弄っている。まだ電波は飛んでいるようだ。明日になれば雪崩でネットも使えなくなり、このペンションから出られなくなる。今日のように酒を飲んで楽しく談笑するなんて事も出来なくなる。俺は酔いも覚め、逆に頭の中がすっきりした事で明日以降の事を考える余裕が生まれていた。まず明日の朝、新沼が過去の死亡事故をネタに佐藤から金銭を要求し、自分の電話番号だけ残して足早にこのペンションを去る。これは、佐藤に反撃されないようにする為である。しかし、新沼がペンションを去ろうと車を走らせると、このペンションにつながる唯一の道が雪崩によって塞がっていることに気づく。さらに豪雪によってペンションは圏外となり、外部と連絡が取れない状況になってしまう。 それから…確か…

そこまで考えた所で、俺はまた、眠りに落ちてしまった。










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