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転生探偵~殺人事件よりも、俺はキスがしたい。  作者: 長月透


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転生探偵11 雪解け

挿絵(By みてみん)

どこで、どこで間違えたのだろう。

私は、もう引き返せない。

手に残る、頭蓋を砕く音、刃が肉を貫いていく感覚。

「あぁ…神様…どうして…どうしてこんな邪魔をするんですか!」

何もかもが、うまくいかない。

これはきっと、罪人に対する神罰なのだ。

でなければ、ありえない。

ーー死体が動くなんて。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


リビングの机の上には、血まみれのナイフが置かれた。

「…これ、どうしようかね」

新沼は助けを求めるかのように周りに意見を求めた。

「金庫にしまえば…」

そこまで言った所で、佐藤が殺されていることの意味を思い出した。

「いや、金庫は開けられないよ。佐藤さんが暗証番号を設定しているからね…つまり…そういうことだ。」

「じゃあ…」

坂本さんが何か思いついたかのように喋り出す。

「佐藤さんの部屋に置いておくっていうのはどうですか?外側から鍵をかけて、あとはペンチか何かで鍵を曲げて差し込めないようにすればいいと思うんです…確か倉庫にペンチがあったような…」

倉庫には、工具箱があった。それを使えば確かに、鍵を使えなく出来るかもしれない。完全に曲げる事は難しくても、多少歪ませることくらいなら出来るはずだ。

「確かに、それはいい案かもしれないね。誰が鍵を持ってるんだっけ?」

全員が顔を見合わせる。

「…そういえば、鍵のことはすっかり忘れていたね。佐藤さんがもっているばずだ、探しに行こう。」

なぜ誰も気づかなかったのか、自分達の情けなさを感じながら佐藤の部屋に向かった。犯人が持ち去っていたらどうしようーーそんな事を考えながら部屋に向かったが、それは杞憂に終わった。

「あ、あった。ポケットに入ってたよ。」

新沼はストラップのついた鍵をプラプラと揺らした。

俺たちは先ほど見つかったナイフと、キッチンにある残り二本の包丁を集め、部屋の中に置いた。

「カチャリ」

部屋の鍵がかかる音が聞こえる。

「後は…この鍵をペンチで曲げればいいだけだね。工具箱は確か倉庫だったよね?」

そういって新沼は二階に向かう。俺たちはそれについていく形となった。…ふと、床に染みついた赤色に目が向く。そういえばーーこの血痕は佐藤さんの部屋に続いている。まるで何かを引きずったかのように。それは何か…考えるまでもなく明白だった。

「死体だ…」

俺達は犯人が佐藤の部屋に侵入して殺したと考えていた、だが、それは間違いだ。犯人は、部屋の外で佐藤さんを殺した後、引きずって部屋の中に戻した。だから、佐藤は扉の方を向いて倒れていたのだ。

「黒野さん?皆もう行っちゃいましたよ...?」

階段の方を見ながら坂本さんが呼びかけている。

「あ、今行きます!」

引きずって部屋の中に戻した理由は何なのだろうか。室内で殺したと誤解させるため?だとしたら、廊下の血痕はふき取るべきだし、死体の向きだって変えるべきだ。あるはずだ、何か、死体を部屋の中に戻さなくてはいけなかった理由が。二階に着くと、倉庫の中で新沼がペンチを握っていた。

「これを使えばっ...!思ったよりも硬いな、ふんっ!!」

数分の格闘の末、新沼の手には微妙にゆがんだ鍵が握られていた。目的を達成した一同は、なんとはなしにダイニングへと向かった。

「...凶器が見つかったのは、犯人にとっては誤算だったんでしょうか。」

坂本さんの質問に、新沼は当然と言わんばかりに答える。

「そうだね、包丁は袋に入っていたし、隠そうとしていたのは明白さ。もう一度犯行に使おうと思っていたのかは分からないが、こんな風に見つかるとは思っていなかっただろう。」

「犯人はこの後どうするんでしょうか、もう刃物はないですし。」

「まぁ、犯人を捜すのにこだわり過ぎない方がいい。大人しく全員で固まっていればいずれ警察が来るわけだからね。もう皆分かっただろう。一人になるのは危険だって。」

新沼はもう犯人を見つけるのを諦めたかのような口ぶりだった。だが、その気持ちも理解できた。まず、森田の殺人も、佐藤の殺人も両方深夜に行われたもので、誰もアリバイがない。しかも、殺害方法に関しても既に割れている。森田はおそらく突き飛ばされたことによる後頭部の出血、佐藤は背後からの刺殺。ミステリーならではの難解なトリックという事もなく、誰もが思いつくような殺人方法だ。おまけに凶器も見つかっている。現代の技術なら、ここまで情報がそろっていれば犯人を突き止めることは容易だろう。残っている謎とすれば、森田の死体を水浸しにした理由と、佐藤の死体を部屋に戻した理由、そして、動機。

「皆、なにかコーヒーでも飲むかい?安心してくれ、毒なんて入れないから」

そういって新沼は笑みを浮かべた。その時、ダイニングの電気が一瞬とまり、そしてまた点いた。

「...誰か今電気消した?」

壁に設置された電気のスイッチには、誰も触れていない。その数秒後、また電気はチカチカと点滅を繰り返した。そしてーーー

「...完全に消えたね。これはつまり...」

新沼が電気のスイッチを何回か押す。反応は無い。そのままリビングへと移り、別のスイッチを押す。

「もしかして、電線が駄目になったのか?よりにもよってこんなタイミングで。」

「え!皆見てください!雪が、雪が弱くなってます!」

窓の外を指さして白石が叫ぶ。

「やった!これなら車無しでも下山できますよ!早く、早く準備しなくちゃ!」

部屋に戻ろうとする白石を、斎藤と坂本さんが押さえつける。その様子を気にもかけず、新沼は窓の外を眺めていた。

「…新沼さん、どうしますか?下山しますか?一時的に弱まっているだけの可能性もあると思うんですけど」

「まぁ、その可能性もあるね。ただ、殺人が二件起こった上に電気まで通らなくなったんだ。これ以上ここに留まっていたら全員殺されてしまうような気すらするよ。」

新沼はしばらく考え込んだ後、決断を下した。


「…決めた。急いで下山しよう。」


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