第36話 風の勇者と猫獣人
「何がどうなったの?」
上空からカイル達の様子を見ていたノアールが安全になったとみて降りてきた。
「どうやらアレク様とアマデウスさんが、お互い一目惚れしたみたいなんだ」
「え! お似合いじゃない! よかったね。アマデウスちゃん」
「ええ、ありがとう。ノアールちゃん」
そう言って喜び合う女性たち。
生涯の伴侶を見つけて優しい笑顔を浮かべるアイク。
無事に戦闘が終わって、ほっとするカイル。
唯一、今の状況に満足していないのがクリスだった。
それもそのはずだった。一歩間違えば殺されていた戦いで、あと一手で終わっていたのだ。それまでの努力を全て無にされたのだ。生半可な事ではクリスの気持ちは収まらない。なにか代償が無ければ。
「何がどうなったニャ? アマデウス様は無事なのかニャ?」
そんな五人の中に、遅れてネーラがやってきた。
「な!!!」
ネーラを見た途端、クリスの様子が変わった。
それを見たカイルは、一度解いた緊張を取り戻した。
人魚とは違う、魔族。
もしかしたら腹いせにネーラを殺す気か? そう、カイルは警戒したのだった。
「かわいい~~~~~~~~!!!!! ねえ、ねえ、撫でて良い? もふもふして良い? 頬ずりして良い? もう、かわいい~~~~~~~~!!!!!」
クリスはネーラにハグすると、頭からお足の先までもふもふし始めた。
「な、何するニャ! 離すニャ! ネーラが可愛いのはそうだけど、なんでもふもふするニャ!?」
「あなたの名前はネーラって言うの? 名前も可愛いわね。ねえ、ねえ、ネーラちゃん。いま、フリー? ねえ、ねえ、お姉さんが養ってあげるから、ウチに来ない? 三食昼寝付き! 好きなときにもふもふさせてくれれば、お姉さん、お仕事頑張るから。ねっ、ねっ、良いでしょう。うちの子になりなさいよ。あ~何だか良い匂いもする。もう、サイコー!!!」
クリスの豹変ぶりを見たカイルは思わず口をあんぐりと開けて、ネーラを助けることすら忘れて見ているだけだった。
「離すニャ、この変態! カイルも見てないで助けるニャ! こら! ノアール、何笑ってるニャ!」
クリスのハグからなんとか逃げだそうと四苦八苦しているネーラを見て、ノアールは笑いをこらえきれなくなっていた。
「クリスさん、もうその辺にしてあげてください。ネーラが嫌がっていますから……あれ? クリスさん、今、自分の事をお姉さんって言ってませんでしたか?」
カイルの言葉にまったくネーラを離す様子のないクリスは答えた。
「ええ、言ったわよ。何か問題でも?」
「クリスさん、女性だったんですか? いつから女性だったんですか?」
中性的な顔立ちなため、女性と言われれば女性にも見えてきた。
そのクリスの隣で、ノアールと同じように腹を抱えているアイクがいた。
「カイル君、クリスは生まれたときから女性だよ。小さい頃から一緒だったから間違いないよ。大きくなる途中でアレが取れちゃったわけじゃないからね」
「うるさい! アイク! ネーラちゃんをもふもふして機嫌が良いから、今日は許してやるけど、今度ボクにそんなことを言ったら、アイクのアレを引っこ抜くぞ!」
「駄目ですわ。アイク様のアレは、もう私の物なのですから」
「なに下ネタを言ってるニャ! そんなことより、あたいを助けるニャ~~~!!!」
ネーラの叫び声が湖に響いたとき、遠くからその声に応える声が聞こえてきた。




