231 可愛い計画
思えば誕生日の予兆は確かにあったのかもしれない。主に琥珀の行動とか。それでも忘れてて琥珀の様子に『何かあるのだろうけど、危ないことではないようだし可愛いから見守ろう』してた俺はほんまもんのアホですね。
「あっくん。今日は黒華ちゃんと帰るから少しゆっくり帰ってきてね」
お昼に琥珀の元に行くと、そんな事を言われる。浪川に視線を向けると『琥珀はちゃんと送るけど、その後は知らないわよ。あとこっち見んな』的な視線を受けたのでとりあえず琥珀に頷く。
「分かったよ。何かあったら連絡をしてね」
「うん!」
可愛い恋人の企みには乗るべきだろう。一人で家に返すのは反対だが浪川が一応途中までは送るようだしそこは信じよう。それはそれとして今日は部活もないしどこかで時間を潰して帰るしかないのか。うーむ、琥珀の居ない学校とか死ぬほど何もないしな。どうしたものか。
「あっくん、あとなるべくお腹は空かせておいてね」
「今日は美味しいものが出そうだなぁ」
「えへへ、楽しみにしててね」
何をしても可愛いは正義だね。そう思いながら琥珀との昼休みを過ごしてから午後の授業を受けるが、何をして時間を潰すかはかなり命題だな。琥珀が居ない以上したい事はほぼ皆無。図書室で時間潰すか。本読んでれば多少はマシだろう。
「暁斗、暁斗」
「なんだよ、授業中だぞ」
「これ見ろよ。めちゃくちゃ回しやすいぜ!」
授業を受けてると言うのにアホはペン回し用のペンで遊んでいた。これくらい単純なら俺ももう少し生きやすかっただろうか。いや、琥珀の居ない世界だったどこも同じか。
「川藤」
「なんだ?言っとくがこれはやらんぞ。なんとか隣のクラスの奴からパクってきたんだからな」
「奪ってきてるじゃん」
「借りてるんだよ。それに見ろよこのペン……俺に回さてれ喜んでるようだろ?」
生憎と無機物の心を読めるほど俺は悟ってないんだよ、アホ。
「そうか。それより知ってるか?ペン回しの達人はバク宙してる時もペン回しできるらしいぞ」
「マジか!やってやるぜ!」
そう言って立ち上がったと思ったらマジでバク宙する川藤。勿論ペン回し用のペンは吹っ飛んで行き、運悪くそれは理科の先生のヅラを吹っ飛ばしてしまう。はらはらと舞いながら落ちるヅラに生徒たちは一斉に黒板から目を離す。
「……川藤。後で職員室な」
「俺じゃないっすって!」
「お前らこれ誰が飛ばしてきた?正直に指さしてみ」
その先生の言葉に川藤以外は川藤を指す。
「いやいや、見えてないやつも手上げてるのは詐欺でしょ!」
「いいから黙って授業受けて、放課後は俺と楽しくお話しようか。なに心配するなお前が知らない世界を教えてやろう」
そういえばあの先生って……哀れ川藤。そんな悲痛なクラスの空気に川藤は「せっかくのオフがー!」と騒いでたがスルーして授業は続く。逞しいクラスメイト立ちを持ったものだ。




