221 誕生日の相談
「お父様、お母様、少しいいですか?」
夜、琥珀と入れ違いでお風呂に入った暁斗を確認して、琥珀は居間にいる二人にそう声をかける。
「どうかしたのかい?」
「その……あっくんの誕生日についてなんですが」
「ああ、その事か」
「ふふ、二人でお祝いしたいって話かしら?」
「そ、それはもう少し大人になってから……はぅ……」
「あらあら、まあまあ」
ニヤニヤする暁斗の母親の紗季に仕方ないなぁという顔をしてから暁斗の父親の明彦が琥珀に言った。
「何かしたいのかな?プランがあるなら聞くよ。とはいえ、暁斗は多分自分の誕生日忘れてるけど」
「そうですよね、やっぱり」
琥珀は昔から知ってる。普通の子が拘るはずの誕生日の概念だが、暁斗はそれに当てはまらなかったと。そもそも当日に両親や琥珀、友人からお祝いされて『そうだった!』と思い出していたと。
「何処でどう間違えたのか、あの子人の誕生日は気にするし祝うのに自分の誕生日に執着が少ないんだよね」
「あっくんは多分、私に気を使ってたのもあると思います」
「……それもないとは言わないよ。でもあの子は同情で忘れてあげるほどお人好しでもないよ」
琥珀としては暁斗は十分優しいしそれもあると思ったが、父親としてはそれはないだろうと考える。確かに琥珀の件は色々と暁斗にも影響を与えている。だが、そもそもその前から誕生日自体にそれ程執着が湧いてないと明彦は思っている。
「いっそこんなのはどうかしら」
そう言って紗季が琥珀に何かを耳打ちすると、琥珀が赤くなってぼふんと音を立てる。「はだか……リボン……はぅ……」となる琥珀の様子に何を言ったのか分かった明彦は妻をお仕置で少しポンと叩く。すると嬉しそうに甘えてくる妻にやれやれとしながら仕方ないと流して明彦は言った。
「まあ、原因はどうでもいいんだ。僕としては今の暁斗は琥珀ちゃんに祝ってもらうのが一番嬉しいんじゃないかって思うよ」
「私が……いいんでしょうか……?」
「いいんだよ。君は暁斗の恋人なんだから」
「そうよ!あのノンデリカシーな息子をたらしこんだうちの愛娘なんだから大丈夫よ!」
「お、お母様〜、苦しいです〜」
嬉しそうに抱きつく紗季に琥珀はそう言って笑う。笑顔が増えてきたと少し安心しながら明彦はコーヒーを飲んで言った。
「僕らに協力出来ることは言ってよ。家族で遠慮はなしだよ」
「……ありがとうございます、お父様」
息子が可愛くない訳ではないし、愛してはいるがこんな娘なら益々可愛がっていたかも。不謹慎ながらそんなことを思う明彦だった。当の本人は風呂に入りながら琥珀の照れる気配に新しい人類のように反応していたが、それは本人しか知らないことだったりする。




