216 一番の薬
「あの時のあっくんの手、凄く安心したんだ」
昔を思い出したのかそう笑う琥珀。
「ゼリーもね、美味しかったの」
「なら良かったよ」
「でもね。こうしてあっくんがまた私に色々してくれたのが一番……嬉しかった」
そう微笑む琥珀。そんなの当たり前だろ。
「琥珀は俺の大切な恋人で、幼馴染で、婚約者みたいなもので……家族みたいなもので、俺の一番――世界一大切な人だから当たり前だよ」
そう言って、そっと俺はまた琥珀の手を握る。
「琥珀、謝らないで。琥珀は何も悪くない。それに俺が琥珀から聞きたいのは謝る言葉じゃないんだよ」
今も昔も琥珀は自分に厳しすぎる。世界が琥珀に厳しすぎる。だからこそ、俺は琥珀の幸せを求める。琥珀が笑顔で幸せに暮らせるようにしたい。
「寂しいならいくらでも言ってよ。必ず琥珀のそばに居るから。甘えたい時はいくらでも言ってよ。いくらでも琥珀の気の済むまで……それこそ満足してもいくらでも甘やかすから」
「あっくん……」
「だからさ。琥珀は俺にもっと頼って欲しい。俺をもっと信じて全部全部を俺と乗り越えていこう。さしあたってはゆっくり休んで元気になって一緒にご飯だね」
「……うん……うん……ありがとう……あっくん」
そう涙を零す琥珀の涙を俺はそっと拭って言った。
「うん……やっぱり琥珀は笑顔が一番可愛いよ」
そう言うと少し頬を赤らめて「もう……あっくんのバカ……うそ、大好きだよ」と呟く。俺はそれを笑顔で眺めつつ、琥珀が寝るまでそばに居る。
翌日には琥珀の風邪はよくなっていた。母さんもギリギリ帰ってきたが、念の為もう一日休みを取って病院に行ってきたがその頃にはほぼ完治しており本当に良かった。
世界はいつだって琥珀に残酷。そんな世界はクソ喰らえだ。ここから先琥珀に悲しい涙は流させない。俺がさせない。絶対に琥珀を守る。
そんな決意とともに琥珀の看病を全うした俺だが、翌日から看病してる時に見てしまった琥珀の柔肌に悶々とした夜も少し過ごしたりしたので格好つかないなぁ。忘れたいけどあれは忘れられない。絶対無理。俺への罰だとしてもこれは寧ろご褒美では?そんな気さえしてるが、そんな事よりも琥珀が元気になってくれたのが本当に心から嬉しい。
なお、この日から琥珀が寝てる時に俺に抱きついたり手を握る頻度が極端に増えたりもしたが……これ、俺の言葉で遠慮が和らいだのかな?だとしたら可愛すぎ!そういえば俺は琥珀の看病でほとんど一緒だったが風邪はひかなかった。風邪は人にうつすと治る聞いてたのでそれも覚悟してたが、風邪ひいて琥珀を心配させたくなかったのも事実。俺が大馬鹿者だから風邪をひかなかったのだと今だけは少し自分のアホさ加減に救われた気がした。少しだよ。やっぱり風邪の一番の薬って愛情なのかもね。月並みだけど。




