212 親というものは
11月に入った。秋から冬に明確に四季が動くのを感じる。具体的には父さんがスタッドレスのタイヤを取り出してタイヤ交換していたり、冬物の服に取り替え始めたりというところかな。
「少し早くない?」
「あっという間に冬になるからね。タイヤ交換はしておいて損はないよ」
「まあいいけど」
そう言って一緒に交換を手伝う。
「あれ?暁斗いつの間にやり方覚えたの?」
「タイヤ交換なんて小学校高学年男児の嗜みだよ」
「そうなの?最近の子供は進んでるねぇ」
とか言いながらもうっかりノリで父さんにこの頃に教わってないことまでやろうとしてたのは危なかった。
「うんうん、やっぱり力ついてきたね。これならそのうちネジ回しは暁斗にお願いできるね」
万が一、走ってるときにタイヤが外れては大惨事なのでタイヤ交換の手伝いはさせてもタイヤのネジまでは任せなかった父さんがそんな事を言った。そもそも、自分でタイヤ交換するより頼んだ方がお金はかかっても多少心持ち安全なんだろうけど……父さん自分でできるから基本的にタイヤ交換くらいなら自分でやるんだよね。
「暁斗。学校はどう?」
「琥珀と楽しんでるよ」
「そっか」
「どうしたの急に?」
いつもはそんな事聞かないのでそう聞くと、父さんは少し考えから答えた。
「少し、暁斗のこと子供扱いし過ぎてたかなって思ってね」
「実際まだ子供だよ」
「そう客観的に認識して日々成長しようとしてるのは前の暁斗にはないものだったからね」
そうだろうな。中学生になりたての頃なんか特にだが。
「前にも言ったでしょ、琥珀を幸せにするって」
「言ってるね。何度も聞いてるよ」
「だから俺は琥珀を幸せにするためになんでもするよ。でもそれだけじゃなくて、琥珀とイチャイチャして俺も琥珀と幸せになりたいって思うようになれてきたのかもね」
そう言うと少し驚いてから、どこか安心したように微笑む父さん。
「その様子なら大丈夫かな」
「なにが?」
「なんでもないよ。というか、暁斗ってお母さんそっくりになってきたね」
「そう?」
「そこで本人聞いてるのに言い切るのは紗季にそっくりだよ」
俺たちの様子を近くで見ていた琥珀と母さんに視線を向けると、照れながら嬉しそうに笑う琥珀と、ニマニマする母さんの姿が。あれに似てるか……少し複雑だが仕方ない。好きなものは好きなんだから。
「琥珀ちゃんも大変そうだね、これは」
そう言いつつも一応は俺の覚悟を認めてくれてる様子の父さん。何も知らないのに不思議と子供を見てるよね、親って。まあ、ニマニマしてる母さんは分からんが。なんにしてもタイヤ運んでもそこまで疲れてないし体力はついてはきてるね。そう思いながらタイヤ交換が終わってからは琥珀とイチャイチャするのだった。可愛いは正義だね。




