191 浪川発見伝
「あれ?あれって黒華ちゃんかな?」
展示をほぼ見て周り、さてどうするかとなった時に、ふと外を見た琥珀がそんな事を言う。丁度窓際で校舎の裏が見えたので俺も覗くと確かに見覚えのある着ぐるみがいた。
「行ってみる?」
「うん、行きたい」
そう言うので琥珀と校舎裏に。ドキドキイベントをしたいけど変な着ぐるみがいるし望み薄だな。そう思いながら降りていくと、スヤスヤと眠る着ぐるみ浪川。
「この着ぐるみ温かいんかね?」
「そうみたいだね〜」
ぽふぽふと浪川の着ぐるみを触って感触を楽しむ琥珀。こういうの好きだよね。
「起こすのは悪いか」
「うん。黒華ちゃん普段から頑張り屋さんだからきっと疲れてうたた寝しちゃったんだね」
しかし流石にこのまま放置はあれか。いくら浪川でも場所が悪いし。
「琥珀。少しここで休もうか」
「えへへ。あっくんならそう言うと思ったよ」
嬉しそうに微笑む琥珀。これは琥珀のためであって浪川のためではない。琥珀の友人だから仕方なくというやつだな。そう思いながら腰を下ろすと日陰と日向の割合がちょうど良くて、少し晴れ間も見えてるので不思議と寝心地良さそうに思えた。
「すぅ……すぅ……」
というか、琥珀寝ちゃったし。仕方ないなぁと可愛すぎる恋人に俺の制服の上着を脱いでかける。無いよりはマシだろう。本当に風邪ひきそうなら起こすけど、琥珀はお昼のお弁当作りで早起きして疲れもあるだろうし、はゃいで回ってたからそれの疲れもある。ゆっくりしてもバチはあたるまいと俺も少し肌寒くなりながら傍で見守る。
「んぁ?琥珀?」
そう思って琥珀を眺めていたら、タイミング良く起きたのは着ぐるみだった。
「起きたのか」
「なんでいんのよ」
「琥珀がお前を見つけて放っておくとでも?」
「……思わないわね」
スヤスヤ眠る琥珀に微笑む浪川。
「てか、寒くないの?天気悪くはないけどそこそこ肌寒いよ」
「うるさい。そんな気分じゃないだけだよ」
「ふーん。まあ、いいけど」
よっこいと立ち上がる浪川。
「浪川。来年は楽しめよ」
「なにそれ?いつから教師になったの?」
「来年は同じクラスだろうしな。琥珀のよしみで楽しんでもらうってことだ。文句は受け付けない」
「あっそ」
テコテコと歩き出す着ぐるみ。
「……腹黒のくせに。琥珀にだけは本当に甘いわね」
「好きだからな。お前も恋すれば分かる」
「私が恋したら相手は翌日にはコンクリートに詰められて海と仲良ししてるわよ」
「だろうな。相手に同情するよ」
「ふん」
あの親父さんならマジでやるだろうし。
「……ありがとう。琥珀にも伝えといて」
「自分で言えよ。その方が琥珀は喜ぶ」
「ふん。来年はあんたさし押して琥珀と楽しむから」
「それは怖い。気をつけよう」
ふふふと笑って立ち去る浪川。俺とあいつはこのくらいの距離がいいだろう。恋人の親友とかその程度だ。琥珀の嫉妬する姿は気になるけど、嫉妬させたくないしね。そう思いながらそっと琥珀の髪を撫でる。悪くない文化祭一日目でした。本当に悪くなかったよ。




