186 浪川さんはオトナ
琥珀のクラスに行くと割と中は簡素だった。ただ、壁に色々貼ってあるのと、黒板に所謂黒板アート?的なものがあってそのクオリティが高い。中でも中央のキャラを描いた人は別格だ。そして俺には分かる。これは琥珀の絵だと。
「あっくん。来てくれたんだ」
俺を見つけると、嬉しそうに近づいてくる琥珀。ぐうかわですわ。
「当たり前だよ、黒板の凄いね」
「えへへ。皆で描いたの。あっくん私が描いたの分かる?」
「真ん中のやつでしょ」
「凄い!正解だよ」
ほらね。俺は琥珀センサーには敏感なんだよ。
「相変わらず絵上手いよね琥珀は」
「そ、そんな事ないよ〜」
「そんな事あるって。本当に凄いよ琥珀」
「そうかな?えへへ」
もうさ、何もかも可愛いの反則でしょ。いいんだよ琥珀がルールだもの。
「あ、ちなみにあの端のやつは黒華ちゃんが描いたんだよ」
「端のやつ……あれか」
謎のゆるキャラ。宇宙人?
「幻想的といえばいいのか」
「上手よね〜」
琥珀は優しいなぁ。俺とどっこいどっこいの画力なのはよく分かる。いや、地を這うような美術力をなんとか普通レベルで誤魔化そうとしてる俺よりは上手いか。
「人に文句出来るほど絵上手いの?」
そんな風に琥珀と話していると、何故かそのゆるキャラを被った浪川がやってきた。
「それなに?」
「……手芸部の先輩に着せられた。なんか良い出来だからそのまま着てて欲しいって土下座されて断れなくてこうしてるの。笑えば?」
勿論笑いますとも。
「似合ってるよ、黒華ちゃん」
「そうかしら?」
「うん。可愛い〜」
「……そう、ならいいわ」
琥珀たんたら、あの浪川をここまで骨抜きに……やっぱりこの子は珍獣使いの力があるのかも!それだと俺も珍獣になるか。まあ、普通に琥珀は魅力に溢れてるからこの結果は必然だよね。
「午前中は浪川と回るの?」
「それがね〜。黒華ちゃん面倒だから本読んで過ごすって」
「高校や大学ならまだしもこんな田舎の中学の文化祭なんてたかが知れてるしね。それだったら適当に本読んで過ごした方が有意義だもの」
まあそうなるよな。
「その格好でか?」
「……幸い配色的にバレない位置あるし、私なんかよりも問題起こしそうなのが居そうだからやり過ごせるでしょ」
そう言って、「琥珀、楽しんできなよ」と言いながらカッコよく去ってく浪川さん。それで着ぐるみ着てなければ格好もついたが……なんか愛らしさが増すやつだよそれ。
「黒華ちゃんはオトナだよね〜」
「そうかもね」
大人になりたい普通の女の子というところか。まあ、俺に気を使ったのではなく普通に文化祭に興味無いのだろう。来年もし同じクラスならステージ発表で琥珀と組ませて色々やってみてもいいかもな。琥珀も喜ぶだろうし強制参加させた方がマシだろう。そんな訳で琥珀を意図してもしなくても一人占め出来ることになりました。うれぴい。




