第二章「ネオンの影」/第一話「いつもの夜」
本作は、小説と連動楽曲で構成されたシリーズ作品です。
ゆっくりと進行しますが、気軽にお付き合いいただければ嬉しいです。
仕事帰り。
夕方から夜へ変わっていく時間。
昼間の喧騒を置き去りにして沈んでいく太陽。
少しずつ濃くなる紫。
明るいだけのアイツが沈む。
さて。
今夜も始まる。
いつもの夜。
ネオン街。
いつもの面々。
約束したわけでも、ルールでもないのに集まる。
誰かが昼間の仕事、職場の人について愚痴をこぼしながら毒を吐く。
誰かがその愚痴に助言も答えも提示せず、ただ頷いている。
夜を心置きなく楽しむために、考え事を持ち帰るのが嫌だから。
そんな理由で他人の仕事まで片付けてきたことを饒舌に、火がついたように話す。
周りで話を聞いていた連中の一人が少しからかい気味に笑いながら言う。
「よく病まないね?」
「バリバリ病んでるっつーの!」
間髪を入れないどころか、少し食い気味で言葉を投げ返す。
少し距離を置いて向かい合う形で反対側に立っていたもう一人がニヤケながら言う。
「慰めてやろうか?」
オーバーリアクションで、顔を傾け体を斜めに構えながら、真っ直ぐ伸ばした腕と指を素早く床をさすようにして。
「慰めてくれるぐらいなら、何も言わずにそこにいて、ただ話を聞いて笑ってな!」
「なら、黙って崇めとくわ」
「おう!尊敬して奉って崇めとけ崇めとけ!」
またしてもオーバーリアクションで、足をバッと開いて腕組みし、体を反り返して言い返す。
言葉は少しばかり粗いが、決して争うわけでも対立するわけでもない。
いつもと変わらぬ、伝統芸にも近いただの悪ノリの会話。
笑い。
飲み物。
ネオン。
この場の何とも言えない空気。
時折、会話をかき消すほどの街のノイズ。
誰も答えを出さない。
誰も解決しない。
でも誰も否定しない。
「心が病んでる?ハハハハッ!オーオー!ヤッてんね!」
誰かが乗っかる。
話を聞いていたRevyも少し目を細めて声を上げずにわずかに笑う。
話が盛り上がる。
脇に場所を移して、飲み物を片手にRevyが椅子に座る。
さきほどの会話の方向に耳を傾けつつも、目線は周囲を探索する。
特定の何かを探しているわけではない。
そういうわけじゃない。
……たぶん。
自分が誰かと会話をしなくとも、誰かと誰かが会話しているのを見ているだけでも暇しない。
人の動きを目で追ってるだけでも、どんどん時間は溶けていく。
しばらくして…。
背後から何者かが近づく。
スッと、Revyの肩に何者かの肘が乗る。
そのまま肘の主が頬杖をついてRevyの顔を自分の腕越しに覗き込みながら声をかける。
「よぉ。」
「とがってて肩いてぇよ。」
目線だけを肘の主に向けて言い返す。
「そんな、褒めんなよ」
Revyに負けじと言い返し、肘の主は大きく笑いながらその場を離れて飲み物を取りに行く。
割と昔から続く恒例行事。
周りも特に特別視しない。
いつもの、いつもすぎる当たり前の光景。
Revyも、肩に肘を乗せられたこと自体は何ら気にしていない。
Revyは手に持ったグラスに口をつけ、小さく一口飲む。
よく見ないとわからない程度に口角を上げて緩ませながら
笑みを浮かべたように……。
「うるさいな……まぁ、いいか。」
Revyは再びグラスに口をつける。
火照りを隠すように。
紫の街は光る。
スミレたちの声を抱いて。
この夜は、もっと光り出す。
第二章/第一話「いつもの夜」をお読みいただきありがとうございます。
連動楽曲
「NEON PURPLE and VIOLET VOICES」
https://www.youtube.com/watch?v=5GherEcRdjI&list=PLotKldLgKicyyp9-bdCqgLr4qxS7-FEE-&index=9




