第一章「ネオンの残響」/第三話「みつけた夜」
本作は、小説と連動楽曲で構成されたシリーズ作品です。
ゆっくりと進行しますが、気軽にお付き合いいただければ嬉しいです。
いつもの場所には、まだ誰もいなかった。
時間も場所も、特に決めてはいない。
ただ、気づけばそこに集まっているだけだった。
なのでこんな日は珍しくもなんともない。
ネオン街の中心から少し外れた場所。
仲間たちとよく集まる一角。
時間が早かったわけでもない。
遅かったわけでもない。
ただ今日は、たまたま誰もいなかった。
いつもの夜。
ただそれだけ。
Revyは壁にもたれかかり狭い空を見上げる。
見上げたところで星なんて見えない。
ネオンの光と街の灯りが夜を薄く染めている。
なので、本来なら見えるかもしれない星も、ここからは見えない。
それはそれで嫌いじゃなかった。
少し歩こう。
そう思った。
特別な理由はない。
誰かを待つのも悪くないが、歩くのも悪くない。
むしろ夜の街の多様な顔を見て回るのは好きだ。
歩くという行為も苦ではない。
喧騒から離れる。
普段なら足を運ばない方へ意味もなく歩く。
人通りが減る。
賑やかで華やかな光も減る。
ネオンが後ろへと遠ざかる。
街の輪郭が少し曖昧になり、なんとなく空気も変わった気がする。
薄暗い路地に差しかかった時だった。
先ほどより一段、空気が変わった。
声が聞こえた。
――歌だった。
立ち止まる。
無意識だった。
誰かに聴かせるための歌。
そういう感じではなかった。
かといって独り言とも違う。
誰もいない夜に向かって。
それでも確かに誰かに向かって。
声を絞り出しているような歌だった。
小さな灯りに照らされ。
歌っている人がいる。
顔は見える。
けれど、はっきりとは見えない。
近い。
でも近すぎない。
そんな距離。
Revyは引き返そうとは思わなかった。
だからといって近づこうとも思わなかった。
ただ、聴いていた。
歌詞がどうとか。
歌が上手いとか。
そういうことではない。
どうしてか気になった。
なぜか耳に残った。
何も分からない。
でも、その場を離れたくなかった。
離れることができなかった。
やはりハッキリとはわからない。
わからないけど、とどまった。
歌は続く。
路地は静かだ。
聞こえるのは歌声だけ。
なんとも言えない不思議な時間だった。
仲間たちのことを忘れていたわけではない。
戻ればいつも通りの夜が待っている。
焦る理由などない。
たぶん。
それでも今は、ここにいたかった。
初めて聴く歌だけど、自然とリズムに乗れる。
気がつけば、ペットボトルを持った指が自然にリズムをトントンッと勝手に刻んでいた。
歌声の主は気づいているだろうか。
気づいていないだろうか。
そんなことも分からない。
ここで聴いているよと伝える必要もない。
だって声が届くところに留まっているのだから。
それだけで耳を傾けていることが伝わるだろうと感じた。
けどそれも、分からないままでよかった。
ただ一つ分かったことがある。
この歌を、もう一度聴きたい。
この声に触れたい。
声の主が誰なのか。
名前は何なのか。
そんなことは、今はどうでもよかった。
ただ、
またこの場所に来れば、
また聴ける気がした。
後になって思えば。
本当に後になって思えば。
あの夜は、何かの始まりだったのかもしれない。
けれどその時のRevyは、そんなことは少しも考えていなかった。
それぐらい無意識に。
それぐらい自然に。
そして当たり前に。
ただ、そこに引き止められていた。
第三話「みつけた夜」をお読みいただきありがとうございます。
連動楽曲
「I can hear U」
https://www.youtube.com/watch?v=J0w9deMMLSw&list=PLotKldLgKicyyp9-bdCqgLr4qxS7-FEE-&index=6




