82 最終局面
返って来たのは沈黙だった。
よし、それでいこう! なんて直答されたら逆に人間性を疑うけどね。おまゆうとかはなしよ。
「判断と決断を」
無茶を言うな! と叫びたいだろうが、それを言っちゃイケないのがトップの辛いとこ。言えば自分は無能と言ってるようなもの。プライドがあれば死んでも言えないことだ。
「……わ、わかった……」
と、じーちゃんが絞り出すように言った。
必死に代替案を考えたことだろう。でも、なに一つ出て来ない。オレの提案に乗るしかないと認め、町一つ潰す決断に至るまでの苦悩は血を吐く思いだったことだろうよ。
決断したものの、自分の決断の重さに次がなかなか出て来ない。
うん。わかるよ。その重圧。胃が痛くなるよね。吐きそうになるよね。逃げたくなるよね。できることなら誰かに放り投げたいよね。
けど、それを許さない自分がいることに腹が立つよね。ほんと、プライドって面倒くさいね。
「大丈夫。誰が認めなくてもリンが認める。じーちゃんの決断は間違ってない。リンが証明する」
大事な大事なオレの防波堤。このくらいで壊れては困るんだよ。オレの野望は遙か遠くにあるんだからよ。
「……ふふ。頼もしいセリフじゃ……」
「言葉ではなく行動で示す。命令を」
あなた、命令出す人。オレ、実行する人。オッケー?
「カイヘンベルクを消せ」
「仰せのままに」
恭しく一礼する。
さあ、証拠隠滅といきますかね。
「しかし、どうするんじゃ? 奥の手もないんじゃろ?」
「魔力がないならもらえばいいじゃない」
アイテムボックスから木箱を出す。
その中には大量の魔水晶が入っており、それらを逃げずに残った者に渡して魔力を込めてもらう。おら、じーちゃんの命令じゃ、気絶するまで込めろや!
で、二日かけて二百六十三個の魔水晶に魔力を貯めることができましたとさ。
「英霊に合掌」
ナンマンダブナンマンダブ。
「いや、死んでないから」
オレの中では果敢に戦ってイッちゃってます。
「死ぬ一歩手前まで魔力を奪うとか、悪魔もびっくりよ」
守護対象を罵倒したりドロップキックする天使に比べたら愛すべき存在だわ。
魔水晶をアイテムボックスに収納して、魔力タンクに移す。エク──ではなく、リン・ザ・インパクトを一回は余裕で撃てるな。
……まあ、今回は魔法じゃないけどな……。
準備が整ったのでじーちゃんがいるテントへと向かう。
テントの前にも英霊たちで埋め尽くされているが、生きた者は屍を越えていくもの。そう、涙を堪えてな。
「……笑ってるように見えるのはわたしだけかしら……」
うん。気のせい。気持ちいいとか思ってないよ。
テントには護衛もおらず、無用心にも開けっ放しになっていた。
「うん。雇い主からも要求したからね」
人類の存亡をかけた一戦。無関係ではいられないのだよ。フッ。
テントの中も死屍累々……ではなく、最後の戦いに向けて頑張った首脳陣が力尽きていた。
「じーちゃんたちの頑張りは無駄にしない」
この世界に敬礼があるかわからないが、じーちゃんたちを讃える方法がこれしか思い浮かばないのだ……。
「どう言おうといい話にはならないわよ」
オレに取っていい話なので問題ナッシィング~!
「いって来ます」
後ろ髪引かれない思いでテントをあとにした。
「リン様」
「リン」
と、グランディール傭兵団員とねーちゃんが現れる。と言うか集まって来た。
作戦は昨日のうちに話してある。いくのはオレ&シルバー。ジェスにねーちゃんだと。
「覚悟はいい?」
なんの覚悟かはそれぞれで考えてもらえると助かります。
「勝つ覚悟しかありません」
「狩りまくる覚悟しかない」
その覚悟やよし。オレは大した覚悟はないけどさ。
シルバーに跨がり、格好をつけるために槍を出して構える。
「ハリュシュ。あとはよろしく」
撤収準備しててねってこと。
「わかったわ。任せて」
頼もしい言葉に頷いて答えた。
「シルバー、ハイヨー!」
さあ、最終局面。気を緩めることなく華麗に終わらせますかね!




