83 おぇ~!
なんて見た目には格好よく出たものの、観衆がいなくなれば待機モード。目的地までシルバーに任せる。
……だって、そこまでオレのやることないしな……。
ジェスやねーちゃんくらいになると死霊は雑魚。微々たる経験値しか稼げない。それは呪霊も同じで、マ〇オのコインでしかないだろう。
オレとしてはたとえ一ポイントだろうと集めまくるが、それは時間があるとき。必要なら、だ。
今回は物資も金も魔力も儲けた。いや、魔力はトントンかな? まあ、なんにせよ、美味しい仕事だったのは間違いないだろう。
なので、死霊や呪霊はいきがけの駄賃。届く範囲ならいただけ、って感じで目的地に向かってます。
「リン。そろそろ着くよ」
ウトウトともうちょっとで眠ってしまいそうなところでねーちゃんに声をかけられた。
あくびを一つして瞼を擦る。
「緊張感を持ちなさいよ」
うおっ。リリーいたんかい。気がつかんかったわ。
「守護天使をもっと労りなさいよ」
労らないとならない守護天使ってなんだよ? 一流(?)の守護天使なら陰日向に、存在を感じさせずに守れや。あなたん自己主張が激しいんだよ。
「リン様」
ジェスの声に意識を戻すと、死者が待ち構えていた。
「ご苦労様」
死者に……ではなく、物資回収していた者らに労いの言葉を送った。
「あとはリンたちがやる。皆は撤収して」
「なにかあるなら手伝いますが?」
「ううん。皆の頑張りで用意は整った。その頑張りを外で見て欲しい」
物資回収と同時に燃える液体を配置してもらった。さぞや映えるだろうよ。
「グランディール傭兵団の強さを世間に見せつけるんだ、中にいたら見れないぞ」
「中? 残るのか?」
「死霊や呪霊は命によって来る。それらを一カ所に集めるためにもリンたちがいないとダメ。明日まで浄化してからカイヘンベルクを消滅させる」
と言う理由で納得してくださいな。
不承不承ながらも納得はしてくれ、後ろ髪引かれながら撤収してくれた。ホッ。
姿が見えなくなったらシルバーから下り、議員館なる建物に入る。ここに邪神の揺り籠があるのだ。
見つけたねーちゃんのあとに続き地下へ下りる。
地下には結構部屋があり、金庫……と言うほどでもない金蔵があったそうだ。
もちろん、いただいたのは言うまでもないが、極秘資料もいただきました。なんかの役に立つかな~と思ってな。あ、他に書庫もあったので根こそぎいただきましたよ。
「ここだよ」
かなり頑丈な扉が破壊されている。もっと優しく開けなさいよ。
「……また地下?」
部屋かと思ったら下に続く階段だった。
「なんか鉄の棒がいっぱい並んでたな?」
「牢屋? 誰かいた?」
「ううん。誰もいなかった。ただ、骨はいっぱいあったかな」
ヤダ。カイヘンベルクの闇なんて見たくないんですけど。
そんなところに入ってケロッとしている姉も見たくはないが、まあ、こんな腐れた時代で生きるにはちょうどいいと思っておこう……。
階段は結構長いようで、先が真っ暗で見えない。なので光の玉を創って明るくする。
ねーちゃんを先頭にオレ、ジェスと下りていく。
三十段以上ある階段を下り切ると、カビ臭い臭いで満ちており、イヤな感じはそれほどなかった。
「残念。前みたく呪霊でいっぱいになってないか」
呪霊=魔力としか見てないお姉様が頼もしすぎる。
「牢屋、ですね」
「うん。紛れもなく牢屋」
それも合法的に使われている牢屋ではなく、非合法に使われている牢屋だろう。床が黒い染みがあり、拷問器具らしきものがあるからな。
「リン様。ありました。ここです」
ジェスに呼ばれて、一つの牢を見る。
牢の中ではダイヤモンドダストのように光り、中心部でシャボン玉のようなものが浮いていた。
>っと鑑定するが、やはりなにも説明が現れない。クソが。
ならば、牢の中を鑑定──して吐いた。
「……気持ち悪い……」
ノート一冊に殺してやるが書かれてるものを一ページ一ページ最後まで見せられた気分だよ。
「リン、大丈夫!?」
「……大丈夫じゃない……」
人はここまで憎悪できるのかよ。外の呪霊が陽だまりに感じるぜ。
「ナナリ! リンを上に運んで!」
「わ、わかった!」
ねーちゃんに抱えられ、上へと運ばれた。揺らさないで!
どこかの部屋に運ばれ、ソファーらしきものに寝かされた。
「リン、大丈夫?」
大丈夫じゃないけど、なんとかうんと頷く。
「リン。我慢しないで吐きなさい」
リリーがバケツを出してくれ、そこに吐いた。吐きに吐いた。おえ~。
吐くものを吐くと、気持ち悪さが少し引いてくれた。
「リン。水よ。口をゆすいで」
コップを口に当て、水を口に含んでゆすいでさっぱりさせる。
「ハァ~。マジキツかった……」
ねーちゃんに回復魔法をゆっくりかけてもらい、なんとか気持ち悪いのがなくなった。
「ジェス。邪神の揺り籠を壊して。あと、腕輪にあるものを置いて来て」
アイテムボックスからジェスの腕輪にあるものを移した。
「わ、わかりました。ナナリ様。リン様をお願いします」
「うん。わかった」
ジェスが出ていくのを確認してからねーちゃんに抱きついた。
今は人の温もりが最高の回復魔法だ。




