81 証拠隠滅
「このアンポンタンおバカ! 考えて魔法を使いなさいよ!」
リリーちゃん、ドロップキックしながら無事生還しました。
「守護対象をアンポンタンおバカとか酷いわ~」
「酷いのはそっちでしょうが! 一度ならず二度も吹き飛ばされたんだから!」
あ、イ〇ナズンのときも居ましたっけね。自分のことで精一杯であなたに気が回りませんでしたわ~。メンゴメンゴ。
まあ、リリーちゃんの怒りはともかくとして、各都市の傭兵団が逃走とか情けないにもほどがある。死霊が溢れたら不味いから集結したんだろうがよ。
だかまあ、悪いことばかりじゃないか。戦奴を置いてってくれたんだからよ。
本当ならカイヘンベルク内でいただこうとしたのだが、前倒しでいただけるならそれはそれでよしだ。
「……幼いとは思ってたが、まさか、子どもだったとはな……」
オレの愛らしさに驚くガイオーグ・ランドラル。無理もなかろうよ。フッ。
「……どの口で言うのかしら……?」
この愛らしい口でだよ。だあってろっ!
「皆、生きてる?」
「ああ。あんたの、いや、リン様のお陰でな。感謝する」
「気にしなくていい。それが代表の役目。リンに呆れたらいつでも去ればいい」
そのときはオレが負けたとき。変な団体になる前に解散して欲しい。死して恥を晒したくはないわ。
「ガイオーグたちは拠点にいって。次の戦いに備えて」
ケダモノどもに所有権を主張されるのも面倒だ。さっさと退くに限る。
「残ることは許されないか?」
「今回はここにいる者らで事足りる。余剰戦力は懐を痛めるだけ。拠点に下がって身と心を癒して。拠点には家族や同胞が待っている。慰めてあげて」
イビスから成功の報は昨日届いた。今は拠点に向かってるとのことだ。
「……バルガドを襲ったのか……?」
「兵員の家族や同胞を取り返しただけ」
うちはホワイトな傭兵団。家族手当も支給されるのですよ。
「敵にはブラックな傭兵団だけどね」
ハイそこ! お黙り!
「……その珍妙な生き物? 人形? は……?」
「わたしはリリー。不本意ながらこの子の守護天使よ」
あ、守護天使とか言っていいんだ。神の基準が本当にわからんわ。
「しゅ、守護天使?」
「そう。守護天使。よろしくね」
戸惑うガイオーグたち。そりゃ、守護天使とか言われても意味わからんわな。見た目が人形なんだからよ。
「リリーはリリー。それで納得しておいて」
「……あ、ああ。わかった……」
「ジェス。誰か一人を案内に出して」
「わかりました。ビシューラ。頼む」
エルフの若い……と思う女性が出て来た。
「ビシューラ。お願いできる?」
なんか残りたそうな顔をしたのでオレからもお願いする。
「わかりました。届けたらまた戻って来てもいいですか?」
「戻って来てもいいけど、戻って来るのに時間を使うより覚悟を込めてたほうが有益」
無駄ではないだろうが、いつまでもカイヘンベルクにかかわってらんない。と言うか、うちが恋しくなって来た。もう終わらせにかかるしよう。
「ビシューラ。大人しく覚悟を込めていろ。今のお前では荷物持ちにしかならん」
ジェスってたまに辛辣になるよね。まあ、団長なら厳しくしないと味方殺しになっちゃうしな。オレはジェスのやり方を支持するぜ。
「ビシューラ。人の矜持は努力は積み重ね。そこで腐り、ケダモノに堕ちるならリンが排除する。グランディールの名を汚すことはさせない」
規律が取れてこその人。鞭で従うケダモノなどいらないわ。いつ手を噛まれるかわかったもんじゃないからな。
「はい! グランディールの名を汚すことはしません! リン様に従います!」
「うん。お願い」
素直な子は大好きだよ。
表情が引き締まったビシューラは、ガイオーグの前に立ち、一礼した。
「わたしは、ビシューラと申します。あなたたちを案内します!」
「あ、ああ。よろしく頼む」
ビシューラに気圧されたのか、ガイオーグがどもりながら一礼を返した。
話が纏まったので、死体回収を兵員に任せ、ジェスを連れて本隊がキャンプしたとこへと向かった。
……さすがにじーちゃんたちは逃げてないよね……?
なんて心配する必要もないと、じーちゃんと雇い主様が迎えてくれた。
「……また、凄まじいものを放ったもんじゃな……」
「本当は使いたくなかった。災害竜に対する奥の手だったのに。半年の努力が消えた……」
唇を噛んで悔しがる姿をじーちゃんに見せる。
「……そうか。まあ、光の指輪があるんじゃ、大丈夫じゃろう」
オレの勘が言っている。無理だとな。そんな楽に倒せるならオレの人生、ハードモードになってねーわ。
「それで、どうするの?」
「ど、どうするとは?」
「戦うか逃げるか、どうするの? 戦うなら作戦は? 逃げるのならさっさと逃げる」
見た感じ、半分以上が逃げたようだ。たぶん、仕切ってたヤツも逃げてるだろうよ。クズは見切るのが早いからな。
「正直、どっちも選べん状況じゃ。逃げることもならず戦うこともできず、じゃよ」
「泣き言など聞きたくない。この場で最上位は誰?」
まあ、じーちゃんじゃなくたって泣きたくなる状況だけどよ。
「……不本意ながらわしじゃ……」
オレ的には望ましいしだけどな。
「なら、リンからの提案。最上位のじーちゃんが判断して決断して」
少々状況は違ったが、ほぼオレが望んだ状況になったのだ、断ってくれたりするなよな。
「な、なんじゃ?」
「カイヘンベルクを吹き飛ばす。跡形もなく」
証拠隠滅はしっかりとしましょう、だ。




