53 一部完、的な。
「ご馳走さまでした」
手を合わせて頭を下げるリリー。どうやらオレの知識が影響しているようだ。ってか、獣人たちにも広まってます。オレのやることは神事だと思って。
まあ、変な習慣を広めるよりはいいだろう。命に感謝することはいいことだしな。
「リリー。四阿へ」
ここでもいいが、オバチャンが絡んで来たら面倒なので四阿で話すことにする。
「ねーね! あそぼー!」
「あそぼー!」
外に出ると、お子さまたちがワラワラと現れ突進して来るが、ローブは衝撃吸収機能搭載。いなし、躱しで四阿へと入る。シルバー。お子さまたちと遊んでおやり!
「ガウ~」
うっさい。文句言うな。お前は子守ができて護衛ができる熊となれ!
椅子へと座ると、リリーはテーブルの上で浮遊する。
……指人形だから足がないのだが、どうも幽霊みたいで気持ち悪いな。暇なときに足を創ってやるか……。
「さっそくだけど、能力を見せてくれ」
まずは能力把握だ。なにができてなにができないかを知るのは大切だからな。
魔石を一つ、テーブルに置く。
「あ、まずは魔力を測るか」
>っと鑑定。やはり、オレと同じ魔力量だった。
「まずまずだな」
「もうちょっと増やせばよかったのに」
「このくらいでいいんだよ。能力以上の力を持つのは害悪でしかない」
最大の敵は驕りだ。それで滅んだアホの多いこと。オレはそんなアホになったりはせんぞ。
「魔石をコピーしてくれ」
「はいはい」
その小さな右手を掲げると、テーブルに置いた魔石と同じものが手のひらに現れた。
魔力はどのくらい減ったかと鑑定すると、イモ三十個分だった。
「おっ、意外と燃費がいいな」
魔石の魔力量はイモ百個分だ。それを三十個分で出せるとか性能いいじゃんか。
「今度はイモ一個分の魔力でイモをコピーしてくれ」
「そのイモで魔力を表すの、なんなの?」
呆れた顔をするリリーちゃん。
「オレに取ってイモが原点。苦労を忘れないためだ」
「うん。言ってる意味がまるでわからないわ」
心が読めても心を感じることはできんのかい! 守護天使と抜かしてんなら心情を察する力を持てや!
「……な、なんでもいいからやってください……」
己を守るのは己だ。外的防御に頼っても依存はするな、だ。
「はいはい。イモ一個分ね。ほいっと」
で、出たのはイモ十個。やはり燃費はよろしいようだ。
「次は肉だ」
手のひらの創造魔法でも命は創れない。それは、コピー能力とて同じだろう。けど、肉なら創れた。コピー能力はどうよ?
「ほいっと」
簡単にできた。松な坂の牛の肉が。
「よしよし。これで冬は越せるな」
グランディール傭兵団の皆様は、光の玉に覚悟(まあ、魔力だな)を入魂するので忙しくて、狩りに出てないのだ。
まあ、その分、オバチャンたちがベリー摘みや薬草採取、ゴブリンなどの魔物を排除してくれてるからなんとかなってるが、なにが起こるかわからない世界では十二分に備蓄してないと心配で夜も眠れんわ。
「次。コピーしたものをどれだけ遠く出せるかと、ローブのアイテムボックス内でできるかだ」
やってみると、コピーした物は半径一メートル以内で、アイテムボックス内ではコピーできなかった。
まあ、想定内だな。そう便利になるとは思ってないさ。
リリー用のローブを創り、コピー製作工房とアイテムボックスを搭載。オレが創ったアイテムボックス間を共通化させる。それで皆のアイテムボックスに送れるようにすれば解決よ。
「よし、リリー。魔石をコピーしまくれ!」
コピーしてコピーしてコピーしまくれ! 熟練度をマックスにするのだ!
「……わたし、守護天使なんだけど……」
大丈夫。リリーはちゃんとオレの心を守ってるよ。ほら、ジャンジャンバリバリコピーしちゃって~。オレは魔力回復薬を創るからさ~。
そして、繰り広げられる悪夢のような無限ループ。こんな自分を追い詰めるスタイル、嫌いじゃないぜ!
「リン。精神がおかしくなってるわよ」
……うん。オレもそんな気がしてた……。
気がつけばもう秋も終わりに近づいている。時が過ぎるのは早いもんだぜ。
「魔石も溜まったし、冬に備えるか。リリー。次は肉だ。ときどき野菜だ。ジャンジャンバリバリコピーしまくれ!」
「何度も言うけど、わたしは守護天使なんだからね」
わかってるわかってる。守護天使な。さあ、コピー能力を持つ守護天使よ、コピーしまくるのじゃ~!
もう頭のネジが緩んだかと思うくらいコピーと創造。オレはなんのために生まれて来たんだろうと言う自問自答を乗り越え、幸せってなんだろうと言う難問にぶつかり、我を取り戻した。
「……長い夢を見てたかのようだぜ……」
「ええ。悪夢をね」
なにやらゲッソリするリリーちゃん。どったの?
「……神界も神界で大変だけど、下界も下界で大変よね……」
なにか真理の扉でも開けたのだろうか、リリーが高次元な存在に見えた。善い方向にか、悪い方向にかは知らんけど。
「……雪か……」
七度目の冬がやって来た。
チート能力があったから、とも言えるが、よく生き残れたもんだぜ。ファンタジー世界、難度高すぎだわ。
「今回の冬は忙しいな」
主にリリーが。
「わたしなの!?」
ハイ、あなたです。来年に向けて兵たちが纏う戦闘スーツをコピーまくってもらいます。頑張って。
この冬でオレは七歳になる。
まだ子どもの体で魔力も小さい。無力ではないにしてもこの世界で生き残る力にはなっていない。だが、希望はある。生き抜く力はある。挫けなければ明日はやって来るのだ。
「オレは、幸せを掴んでやる」
苦難苦闘に負けてられるかってんだ! すべてをぶっ倒してやるぜ!




