54 七歳の冬
オレたちの戦いはこれからだ!
で、人生も終わってくれたら最高なのだが、神はそれを許してくれない。これでもかと試練をオレに与えるのだ。
「ナナリ、助けて!」
と、初雪が降って数日。地面が雪で覆われた頃、十一、二歳の大人びた少女がうちへと駆け込んで来た。
「ミューリー、どうしたの!?」
どうやらねーちゃんの知り合いらしい。紹介してや。
「魔物が出て、牧場が襲われてるの!」
そう聞くと、ねーちゃんはミューリーと呼んだ少女をお姫様ダッコをして飛び出していってしまった。なんやの、いったい?
「リン。どうしたの?」
かーちゃんが下から上がって来た。
「わかんないけど、魔物が出たみたい」
「魔物? 冬に珍しいわね」
いや、冬も魔物は出るから。うちはジェスたちがいるから平和なんだからね。魔物がいる世界に生きてんだからもっと危機感は持とうよ。
生きるのに必死で気がつかんかったが、かーちゃん、ちょっと天然なところがあったりするのだ。
「リンもジェス連れて見て来る」
ミューリーって少女の言動から雪ウサギとかじゃなく、強力な魔物っぽい。美味しくいただけるなら感謝を込めていただこうではないか。
「リリー、いくよ」
「わたし、コピーで忙しいのだけれど」
お前、オレの守護天使だろう。なに拒否ってんだよ。守護対象が動いたら黙ってついて来いや。あと、コピーは続けてね。
「鬼か!」
守護天使に鬼とか呼ばれるオレ。悲しいわ~。
お子さまたちと遊ぶシルバーを呼び、冬用に改造したリヤカー橇バージョンを取りつける。
「リン、どうしたの?」
いつの間にかグランディール傭兵団に入っていたネイリーやオバチャンたちが集まって来た。
「牧場のほうに魔物が出たみたい。今日の当番呼んで」
光の玉に覚悟と言う名の魔力を注入してはいるが、いつでも出れるように部隊を四つ作り、交代で本部(と言う名の集会所に成り下がってます)に詰めてもらってるのだ。
ちなみにオバチャンたちも一部隊に入っており、本部警備を担っております。茶飲んでおしゃべりしてることが多いけど!
すぐに三番隊──ハリュシュ率いるエルフ隊がやって来た。
一応、一番隊は獣人。二番隊はドワーフ。三番隊はエルフと種族別に分けてます。今は問題が起こっても解決できないから分けてるのだ。
まったく、人種でも同等に扱うってのは難しいのに、種族だとさらに難しくなるから参るぜ。
……でも、なぜかオバチャンは一括りになるから不思議だぜ……。
「牧場に魔物が出たからいってみる」
「わかったわ。バーマリ、ハイッシュ、先行して」
ハリュシュより年上っぽい感じの女と男が頷き、牧場へと駆けていった。
「二人、先導して」
すみません。オレ、牧場の場所知らんかったですわ。
「ラルフ、バイド、前に。カルンとサイランは横よ」
ハリュシュの指示でオレを囲み、牧場へと出発する。
思えばこの道を使って街道までいったことなかったな。意外と整備されてるけど、誰がやってんだ? 獣人たちか?
雪で街道の状態はわからないが、幅は三メートルもあり、等間隔で杭が刺さってる。
「街道、整備されてるんだ」
「自由貿易都市群は街道が命だからね」
と、真後ろを歩くハリュシュが教えてくれた。
「町と周り、畑?」
なんもないけど、所々に木が生えて、その周りには小屋が建っていた。
「ええ。麦や大麦、イモを植えてるわ」
結構な広さからして食料自給率は高そうだな。
街道から脇道入り、二キロくらい進むと丘が見えて来た。
「あの丘の向こうが牧場地帯よ」
地帯と言うからには牧場一つってワケじゃないんだ。
「──確認! ハーケンハイローだ!」
先導していた男が叫んだ。ハーケンハイロー? なんやそれ?
「……ハーケンハイローですって。とうとうここにも邪霊種が……!」
邪霊種? またわからん言葉が出て来たな。しかも、なんかヤバいっぽい。
「リン様。下がるべきだわ」
「見てから」
ヤバいものなら尚更見ておかないと後々困るわ。
それに、ねーちゃんが戦ってるのだ、下がるワケにはイカンだろうが。
丘の上に立ち、まずは>っと千里眼。
「……吹雪……?」
曇り空で雪がチラついているが、一カ所だけ猛吹雪に覆われ、ねーちゃんが苦戦していた。
>っと鑑定。邪霊ハーケンハイロー。霊体の魔物。物理攻撃不可。魔法での攻撃しか効かないか。
物理攻撃が効かない魔物がいるとは思ってたが、想像してたのとは違った。あれ、吹雪じゃん。
「ハリュシュ、炎の魔法で雪を溶かして」
「炎が得意なヤツ、いけ!」
一年くらい付き合えばお互いの性格や考えがわかるもの。短い言葉でなにを言ってるか理解し、的確な命令を出した。
炎の魔法が得意な四人が駆け出した。
「矢、貸して」
ハリュシュが背負っている矢筒を渡してくれた。
鉄の鏃に爆炎の魔法をかける。
「逃げたらハーケンハイローの周りに放って」
矢筒を返し、ハーケンハイローに目を戻す。
雪ウサギやオールダーと同じく雪があってこそ活動できるタイプ。なら、雪を溶かしてやればいい。
四人が炎で雪を溶かしまくると、ハーケンハイローの威力が弱まって来て、本体たる半透明の人が現れた。
まあ、人と言っても人の形をしたもの。幽霊と言っていいだろう。
「逃げるぞ! 放て!」
八本の矢が放たれ、ハーケンハイローを覆い隠すように爆炎の花が咲き乱れた。
そして、花が消え、ハーケンハイローもこの世から消された。
「ハリュシュ。倒し方は覚えた?」
「ええ。こうやって倒せばよかったのね」
なら、次は美味しくいただくとしようか。イモ一万六千個に匹敵する魔力を持っているのだからな。フフ。




