50 神の啓示
皆~。第一回、グランディール傭兵団会議がは~じま~る~よ~!
と、幼児番組風に言ってみたが、集まったのは獣耳を生やした野郎ばかり。逆に言ってもらえる立場になりてーよ、畜生が!
あ、皆を畜生扱いしたんじゃないから誤解しないでね。オレは人なら獣耳生やしてても気にはしないよ。
広場と言うか、野っ原と言うか、家屋や薪にするために伐られた場所にグランディール傭兵団に集まってもらった。もちろん、オバチャンたちも傭兵団の一員なので呼んでます。
なぜか四十人に増えているのは軽く流し、グランディール傭兵団諸君の前に立つ。
と言っても無口キャラなオレが司会とか無理なので、代わりにパペットなリリーちゃんを右手に創り出す。
「あたし、リリー。グランディール傭兵団の軍師だよ。こっちのリンとは違うから一緒にしないでね」
皆が綺麗にキョトン顔。あらら。時代を先行しすぎたかな?
まあ、ここで退いたらスベったと取られる。押し通してこそ正道である。
「来年、グランディール傭兵団の初戦闘をします」
返って来たのは沈黙。理解してないようです。
「ねぇ、聞いてる?」
聞いてなかったらリリーちゃんが泣いちゃうよ。
「……あ、あの、その、突然のことでなにがなんだかわからないのですが……」
さすがオレが選んだ未来の英雄。自ら犠牲にして質問して来た。
「なに言ってるの。物事は突然やって来るものよ。それに対応できなければ死ぬだけ。獣じゃないんだから考えて生きなさいよね!」
リリーちゃん辛辣~。
「……も、申し訳ありません……」
「何度も言うけど、人でありなさい! 人だと矜持を持ちなさい! あなたたちを見下すケダモノと一緒になるな! あなたたちは誇り高く、気高く、勇敢で、理性ある人なのだから」
グランディール傭兵団は獣の集団ではない。人の集団であることを、その心に刻ませる。
数は多ければ多いほどいいが、烏合の衆では困るのだ。団結してこその数である。それには誇りと矜持が欠かせない。言い換えればその二つを煽ってやれば数は最強となるのだ。
「あなたたちは人なの? それとも獣なの? どっちなの?」
「人だ! 獣じゃない! 誇りある人だ!」
ジェスがグランディールの槍を掲げて叫ぶと、他の皆も人だ、人だと叫んだ。
おっ、いい感じ。やはりアイデンティティを持たせると纏まりが出るよね。
ただまあ、使い方を間違えると狂信的になるから要注意だな。選ばれた種族とか宗教とかに走られたら大変だしよ。
「静かに!」
リリーちゃんが両手を広げて皆を静める。
「皆は災害竜のことは知ってるよね?」
オレは知りたくなかったけど!
「はい。いくつもの町や都市を滅ぼした魔物ですから」
うんとリリーちゃんが頷く。
「自由貿易都市群リビラン全土から兵を集めて災害竜に挑む計画が立てられてるの」
さすがにリリーちゃんがなにを言いたいかわかったようで、皆の顔が険しくなった。
「……わ、我々も戦うのですか……?」
「うん。初戦闘と言ったでしょう」
パペットなリリーちゃんなので首を傾げてみせる。
「……おれたちに死ねと言ってるのか……?」
厳ついおっちゃんが静かに怒気を膨らませている。
「イヤだと言うならグランディール傭兵団を抜けてもいいよ。生きる覚悟もなければ死ぬ覚悟もない者にグランディールの名を名乗って欲しくないから」
どうする? と、リリーちゃんが体を揺らす。
「──覚悟がない者は去れ!」
と、ジェスが叫んだ。
「もう怯え、疎まれ、腹を空かし、獣のような暮らしなどまっぴらだ! おれは人として生きて、人として死にたい。そのためにリン様からグランディールの槍をいただいたのだ! ならば、おれは喜んで災害竜とでも戦ってみせる!」
さすがジェス。英雄になる男。カッコイイ!
「これは生きるための戦い。死ぬための戦いじゃないわ。人の尊厳を守るための戦いであり、大切な人を守る戦いでもある。即ち、これは聖戦よ!」
おおっ! と皆さんの叫びに身が揺らされる。
……リリーちゃん、ちょっと煽りすぎでは……?
これはヤバいかもと、リリーちゃんを外そうとしたら、スポンとリリーちゃんが外された。ハァ? エ? なんで?
意味がわからないと、リリーちゃんと右の袖口を交互に見る。
「派遣する数は三十。死を恐れず生に貪欲な戦士は名を上げなさい。聖戦に望む栄誉を与える!」
エ? ハァ? いやいやいや、リリーちゃんったらなに言っちゃってんの? なんで勝手に進めちゃってるの? あなたにそんな機能つけた覚えはないんですけど!
「おれを連れてってくれ!」
「おれがいく!」
「おれだ!」
リンちゃんそっちのけで盛り上がる皆様方。置いてかないでー!
「なら、この光の玉をつかみなさい」
ローブに貯めてある魔力がオレの意思とは関係なく使われる。だからなんでや!?
「その光の玉に覚悟を込めなさい。それはあなたの武器となるから。春、その覚悟を見ます。上位三十名だけを聖戦に連れていきます」
ほんと、なに言っちゃってくれてんの? オレの計画とまるっきり違うじゃないのよ!
「待って! わたしたちにも機会を与えてください!」
と、ハリュシュたち、エルフやドワーフたちが集まっていた。
ちょっと待った! なんてねる〇んシステムはないんですけど!
完全に輪の中から外れた感じで口を挟む隙がありません。
「お願いです! わたしたちにも人である戦いに参加させてください!」
「頼む! おれたちにも機会をくれ!」
燃え上がるエルフにドワーフたち。ヤダ。これ、完全に悪い方向に流れてる!
「血を流し、思い半ばで倒れてもか?」
「後ろから来る者がわたしの思いを継いでくれます!」
そんなおれの屍を越えてゆけとかも採用してないんですけど!
「いいだろう。機会を与えてやる」
ん? なんか口調が変わってません? ってか、この感じ、
どこかで……神様か!?
リリーちゃんがこちらを見て、ニヤリと笑った。
み、見られてた。いや、見てないワケがない。オレたちでなにかを試してるのだから……。
「神の子らよ。聖なる導きの子とともに歩むがよい──」
リリーちゃんが神々しい光を放ち、オレが創り出したパペットのリリーちゃんに戻った。
……や、やってくれたな神よ! オレになんの恨みがあんだよ! これ、完全に聖女伝説まっしぐらじゃねーかよぉおぉぉぉっ!!




