49 災害竜派兵
「お前さんはいったい、なにを目指しておるんじゃ?」
もうそんなことはねーちゃんやかーちゃんからイヤってほど聞いたよ。つーか、こっちが聞きたいわ。オレ、なにやってんのよ?
お子さまたちに囲まれながら何度も自問自答したが、答えなんかこれっぽっちも出て来なかったわ。
「皆。あっちで遊んでて」
お子さまたちを引き剥がすために作った砂場やジャングルジムへと追いやる。
「子どもの遊び場か。ここは平和じゃな」
「平和にするのが大人の仕事」
まあ、六歳児のセリフじゃないし、オレの仕事でもないけど!
──いや、お前の仕事だよ。
なんて突っ込みは聞きたくねーわ。世界の平和はこの世界の者全ての責任だわ!
「ふふ。手厳しいのぉ」
まったく。人の身で邪神と戦えとか拷問だわ。
「指輪はできとるかの?」
もう秋かと感じた頃、じーちゃんがやって来たのだが、今日は兵士? 冒険者? 判断がつかない武装集団を連れていた。
お陰でジェスたちも臨戦態勢だ。
まったく止めてくれよ。オレは平和を愛する幼女だぜ。無駄な争いなど御免だわ。
「すまんな。物が物だけに護衛に傭兵団を雇ったんだよ。バカなことはせんと約束する」
傭兵団、にしては清潔なこと。むさ苦しさがない。こんな傭兵団もあるんやね。
「そう」
この場で敵対するような短慮ならオレを懐柔しようと動いている。
「どうぞ」
じーちゃんをうちへと招き入れる。
うちに入って来たのはじーちゃんとたまにくる護衛のねーちゃん。そして、十八、九のメガネをかけたにーちゃんだった。
……この時代、メガネもあるんだな……。
じーちゃんとメガネにーちゃんが座り、護衛のねーちゃんは立ったまま。たまには座ったら?
なんて言っても聞きやしないのだから好きにさせておく。でも、ちゃんと人数分のお茶とお菓子は出しますよ。座らないけど、ちゃんと手をつけるから、護衛のねーちゃんは。
じーちゃんとメガネにーちゃんがお茶に手を伸ばし、落ち着いたところで光の指輪が入った小箱を出した。確認してちょ。
「……これが光の指輪ベータか……」
まあ、ねーちゃんのと区別するためにつけたもの。深い意味はありませーん。
「その箱を開けられるのはじーちゃんだけ。もし死んだら崩れる」
それはじーちゃんの安全のためと発言権を大きくするためだ。なので、頑張ってオレを擁護してね。
「フフ。恐いお嬢ちゃんだ」
違うよ。優しいお嬢ちゃんだよ。間違えたらダメだよ。
「それと、内緒でこれあげる」
小箱を差し出す。開けてみ。
「……指輪……?」
中には六つの指輪が入れてある。
「守りの指輪。命にかかわるような攻撃を一回だけ防いでくれる。ジェスで確かめた」
これはねーちゃんが熊にやられてから創ったもので、かーちゃんとねーちゃんにつけさせてるものだ。まあ、二人のは五、六回受けても大丈夫なヤツだけど。
「……そうか。ならば、ありがたくいただいておこう……」
あげた意味をしっかりと理解してくれたようで、堅い表情で受け取ってくれた。体に気をつけてね。
「お茶のお代わりをもらえるかの」
ん? まだお話があるのか? じーちゃんの表情からして聞きたくない内容の感じだけど。
お茶のお代わりを注ぎ、お菓子も追加する。聞きたくないけど、情報はしっかりと仕入れておかなくちゃならないからな、心を落ち着かせてゆっくり聞くとしよう。
「……来年、各都市から兵を集めてハルオンへ派兵する計画が出ている」
「ハルオンって、なに?」
当たり前のように話されても六歳児にはわかんないよ。
「あ、ああ、すまん。お前さんと話しているとどうもバルンダ婆さんと話しているようになってな」
バルンダ婆さん? なにもんや?
「バルンダとはアルイン貿易都市のお抱え魔法師で、祖父の相談役でもあります」
と、メガネのにーちゃんが教えてくれた。祖父ってことは孫か。前に来たとーちゃん(と仮定する)とは違ってよくできた子やね。
「ハルオンは貿易都市──いや、元貿易都市か。災害竜によって滅ぼされたのでな……」
ヤダ。そんな話聞きたくない! と、耳を塞げたらどんなに楽か。無駄な抵抗はせず、ちゃんと聞こうね、リンちゃん。
「来年、災害竜と戦うためにお前さんところの傭兵を雇いたい」
できて間もない、山のものとも海のものともわからない傭兵団を、ね。マジか? いや、じーちゃんはマジなようだ。
「使い捨てならイヤ」
じーちゃんはしないだろうが、指揮するヤツがしないとは限らない。獣人を戦奴として使う世界だからな。
「そんなことはせん! と言いたいところだが、そうなる可能性が高い。だが、名を売る好機でもある」
「疎まれる原因にもなる」
そんな大勝負で使用した獣人が活躍したら疎まれ、妬まれ、排除されるに決まってる。人権もない世界で獣人なんか獣以下と思ってるんだからよ。
「けど、ちょっとした条件を飲んでくれたら別」
「……どんな条件じゃ……?」
「グランディール傭兵団を単独で災害竜に当たるようにして」
可愛らしく微笑んでお願いした。




