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ウェルヴィーア~邪神と戦えと異世界に放り込まれたオレ(♀)の苦労話をしようか  作者: タカハシあん


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47 リヤカー?

 オレは今日、買い出しにいく!


 なんてくだりは飽きたとか言わないで。オレの心は砕ける寸前なんだからさ。


「買い物にいって来る」


 料理をするオバチャンたちに断りを入れ、村(もうそうとしか言いようがない)の誰かが作った荷車をシルバーに取り付ける。


「ガウ~」


「文句言うな。お前最近役に立ってないんだから」


 ジェスたちがいるので魔物は狩り尽くしてるし、夜も自主的に警備してる。シルバーの存在意義が失われつつあるのだ。


 だからと言ってシルバーを捨てる気はない。守りは多いにこしたことはないからな。お前が最終防衛ラインだ。


「熊車、出発!」


「ガウ!」


 シルバーの背に跨がり、町へと向かった。


 町まで来ると、オレくらいの男の子がしゃがんでなにかをしていた。


 服からして裏町の子かな? 子どもがいるのは知ってたが、見るのはこれが初めて。なんかちょっと感動。


「──来た!」


 オレたちに気がついた男の子が叫び、裏町へと戻ってしまった。なんや、いったい?


 首を傾げながら裏町へと入り、娼館を目指していると護衛の男がやって来た。


「来たか」


 なにやら呆れたご様子。なんやねん?


 男はそれ以上なにも言わず、背を見せて娼館へと戻ってしまう。


 娼館に到着。マーレねーさんが待ち構えていた。


「来たわね」


「うん。来た」


「ミレンから聞いたわよ。傭兵団を創ったそうじゃないの」


「うん。創った」


 隠す気もないので素直に肯定する。


「……あなたはほんと、斜め上をいく子よね……」


 オレとしては正攻法を取ってるんだがな。冒険とか賭けとか極力したくないわ。


「あなた一人なの? 獣人は?」


「リン一人。獣人は来ない」


 嫌われたり迫害されたりで、獣人も人のいる場所にいくのを嫌う者が多い。ましてやオバチャン連中を町にはやれないよ。激情したらなにするかわからんからな。


 ちなみに薪運びはネイリーたち若い娘がやってます。運び込む場所が場所だからからな。


「そう。で、今日も食料?」


「うん。でも今日は表町にいく」


 食料品だけじゃなく生活用品も揃えなくちゃならんのよ。他にも道具とかもな。


「わかった。バオ。引き車をお願い」


「わかりやした」


 護衛の男、バオって言うんだ。初めて知ったわ……。


 引き車──え、リヤカー? リヤカーだよな、これ? リヤカーがある世界──いや、転生者か。転生者が広めたんだな。


 やはり、オレらの前にも神に放り込まれたヤツ(もしくはヤツら)がいると見ていいだろう。


「引き車が珍しいの?」


「これ、買える?」


 買えるなら買いたい。リヤカーは使い勝手がいいからな。


「これは海を渡って来たものだからね。扱ってるところはないと思うよ?」


 そうか。それは残念。


「シルバー。大人しく待ってて」


「ガウ~。ガウガウ」


 ったく。怠け癖つきやがって。そのうちその腐り切った根性を叩き直してやるからな。


 そう心に決めて表町へと出発した。


 娼館の裏から表に出れないので、裏道を回って大通りに出る。


 ……人、いないな……。


 裏町だからなのか、人の往来は少ない。見えるのは地元の人くらいだ。


「裏町に店ないの?」


 店らしき建物は見て取れるのだが、ドアが閉じられ、看板が出ていなかった。


「あるわよ。ただ、裏町は朝と夕方に開くの。裏町の住人は表町で働いてる人が多いからね」


 町に事情あり。歴史あり、だな。


「適当に見る? それともいきたいところある?」


 そうだな。まずは町ブラするか。いろいろ見たいし。


「店があるところ見たい」


 と、リクエスト。


「じゃあ、アルレティア広場にいきましょうか」


 ヴェネチアを思い浮かべてたら、東南アジア系っぽい広場だった。


 ……結構賑わってるな……。


 それぞれがテントを建てて野菜や小物、服や雑貨、肉も売ってる。こう言うファンタジーなら大歓迎なんだがな。


 あっちへフラフラこっちへフラフラと、余すことなくアルレティア広場を堪能する。


「見るだけでいいの?」


「ううん。買う」


 欲しいものはいっぱいあるが、今日は布か古着を手に入れたい。


 風呂と言うものがありながら風呂に入る者は少なく、洗濯も何日に一回と、とても汚く臭いのだ。人がそれなら獣人などもっと酷い。


 ジェスはオレとの付き合いが長いので、臭いや汚いのを酷く嫌ってることを知っているからなるべく清潔にしててくれる。


 だが、他は酷い。水浴びすらしたことないだろと、突っ込みどころか怒鳴りたくなるヤツが多いのだ。


 オレがグランディール傭兵団を仕切っている限り、兵団が汚い臭いなど許さない。清潔で身嗜みよく、威厳と誇りを大切にする傭兵団にするのだ。


 布は問屋から引き寄せてくれるそうなので、古着屋へと連れてってもらう。


「捨てるようなボロ服と大きい男服をたくさん売って」


 古着屋の主人はオレの注文に眉をしかめたが、マーレが娼館の者とわかるとコロッと愛想がよくなり、注文したものを適正価格より安く売ってくれた。


 娼館のネームバリュー、クソタケー!


「ありがとう。いっぱい買えた」


 前世じゃ買い物を楽しいと感じたことないのに、今生はやたらと楽しく感じる。これはやはり女になったからか?


「お礼なんていいわよ。体売るより楽だからね」


 まあ、アレも肉体労働。スゴい運動量になるんだろう。


「また明日も買い物する」


 必要なものはまだまだある。なんてのは建前。明日も楽しいショッピングをしたいだけです!


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