45 製作依頼
オレ、リン。六歳の女の子。ちょっと金策に悩んでます。
ねぇ、どうすんの? これ、どうすんのよ? マジでどうすんだよ? 金がねーんだよ。傭兵団運営、マジで金かかるわ!
なにによ?
食費だよ。本拠地作りしかしてねーから食費に金がかかんだよ!
魔力でなんとかできるじゃん。
ああ。できるさ。だが、四十人分もの食料を出すだけでも大変なのに、村(この度集落から村に昇格しました)の連中のも出さなきゃならんのだぞ。一日使っても追いつかんわ! 手のひらの創造魔法は手のひらに乗れる量しか創り出せねーんだよ。
こりゃ不味いと娼館のばーちゃんに頼んで食料を売ってもらったが、一日銀貨六枚が消えていく。十日もしないで貯蓄が半分もきえたよ。
不味い。不味い不味い不味い。このままでは破綻する。オレの心がな!
ナメてた。傭兵団運営をナメてた。こんなに大変だとは想像もできなかったぜ! 六歳で過労死とかマジ勘弁だわ。
なんとかせねば。まだ体力と気力があるうちになんとかせねば。誰かオレに解決策を教えてくれー!
と叫んで解決策が降って来ることもなし。冷静になろう。
「……禁断の方法をとるしかないのか……?」
言っとくけど金貨を創り出すとかじゃないよ。禁断は禁断でもこの世にはやって良い禁断と悪い禁断があるんだからね。オレがやろうとしてるのは回復薬のほうだ。
まあ、回復薬と言っても普通の回復薬ではない。欠損や病気を治せる万能回復薬のことよ。
ヤバイよね。ヤバすぎるよね。これに手を出しちゃったらスペシャル級にヤバイよね。もうアレがこうなっちゃってアレしちゃうよね。
だが、いっきに稼げる方法はこれしか思い浮かばないのだ。オレよ。こんなときこそ知恵を見せやがれってんだ!
あークソ。なんも出ね~!
「お前さんのところ来る度に変わっとるの」
ウロウロしてたらじーちゃんが来た。あ、お久です。全然来なかったから死んだのかと思ったよ。
「いらっしゃい」
金づるはいつでもウェルカム。でも、愛想がないのはアイムソーリー。
「今日は大人数ですまんな」
確かに今回は多いね。十三人って最長記録じゃん。どうしたのよ?
「少し、話をしたいのだが、よいだろうか?」
なにやらマジな顔。周りの側近っぽい連中を見れば同じくマジな顔をしている。
これまでじーちゃんは貴族かと思ってたが、ばーちゃんの話からして議員なのかもしれない。それも有力ってつきそうな議員だ。
「わかった。三人だけ来て」
と言うと、じーちゃんの横にいた四十代くらいの男が声を上げようとして、じーちゃんに肘打ちされて黙らされた。なんや?
「お前たちは外にいろ。バリュード、ファーエンは来い」
いつにない厳しい声で命令を出すじーちゃん。オレの読みが正しいのを証明してくれてるぜ。
……命令するのに慣れた口調だな……。
三人を家へと迎え入れる。
「中に招かれるのは……」
で、言葉をなくすじーちゃん。まあ、外の見た目と中の作りが違うのだから驚くのは当然だな。
「靴脱いで。下が家」
うちは土足厳禁なんです。
「ほー。アイカワ帝国と同じか」
ん? 土足厳禁のところがあるとな? しかもアイカワだと? 聞き捨てならんぞ。
「同じとこある?」
「ああ。アンディアル大陸と言うところにある大きな国だ」
ってことはここには大陸間航行ができる船があり、流通もあるってことか。まあ、今はどうなのかはわからんけど。
問題はアイカワって名前。明らかに日本人の苗字だ。絶対ではないが、神の存在を知っていれば独自に生まれたとは思い難い。関係あると見るべきだ。
帝国となるのだからそれなりの歴史があるってこと。なら、オレたちの代(と言っていいのかは知らんけど)ではない。オレたちの前の者だ。
神は試している。
その勘で言うなら神は、どう邪神に対抗するために有効な手を探っていることになる。
神は「こんなものか」と言った。なにか才能なり思いなりを見て選んだワケじゃない。たくさんのケースを見るためにランダムで選んだのだ。
なら、その前になにかを試していても不思議ではない。まあ、オレたちと同じくランダムに選んで試したかはわからないが、誰かが生き残るくらいにはこの世界に放ったはずだ。
ふざけんじゃねー! オレたちはモルモットか! と叫びたいが、今は怒りをギュッと抑え込む。じーちゃんの相手をしなけりゃならんからな。
地下へと下り、リビングにじーちゃんたちを招いた。
「好きなところに座って」
雪ウサギの革で作ったソファーに座るよう勧め、オレは台所へ向かいお茶の用意をする。
夏なので冷たいものと、ササに氷を入れて三人に出した。
この時期に氷が! と言う驚きもない。あって当たり前かのように口にした。
……これはどう理解したらいいんだ。オレだからか? 夏に氷が作れる技術があるからか? なんなんだ……?
考えていると、アイスササを飲んだじーちゃんが厳しい顔でオレを見る。
「ナナリ、お前さんの姉が持ってる光を撃つ指輪は、お前さんが作ったものか?」
「うん。リンが創った」
隠すことではないので正直に言う。
「……隠す気はなしか……」
当然である。権力者なり強欲な者を釣るためのエサなんだからな。ただ、もっと早く釣れて欲しかった。いらぬ苦労しないで済んだんだからよ。
「創ってもらえるか?」
あれ? 引き込みじゃないの? 製作依頼なの? ここは、お前の力をわしのために使わせてもらう、ってとこじゃないの?
「無理、か?」
「無理じゃない。なんで?」
「もちろん、魔物対策じゃよ。魔物の中には人の手ではどうしようもないものがおるからな」
真っ当な理由かい。君の才能を活かしたいからとかにしろよ。オレはそれで満足やぞ。
なんでどいつもこいつも引き込もうとしないんだよ。オレはいつでもウェルカムなのに。
ほんと、上手くいかない人生だぜ!




