181 出発だぁー!
「……凄く睨んでるわよ……」
うん。睨まれてますね。目からビームとか出しそうな勢いです。
「スズちゃん、大人気」
CD出したら買い占めてくんねーかな。余分のは山──おほん。大事に補完しててくれて構わないからさ。
「止めなさい。おっかない人から謂われない誹謗中傷を受けるわよ」
下らない正義マンの戯れ言など聞く価値などまるでナッシング。右から左にサヨウナラ~だ。
「ってか、なんであの男は下りて来ないんだろうな?」
スカルティラウスに戦わせて男は見てるだけ。遠距離攻撃の手段があれば一殺であろうに。
……ミカンがいるから目からビームを撃たれても余裕のよっちゃんだけどな……。
「動けないから?」
そう考えるのが普通だよな。
「おそらく、スカルティラウスを操っているか、エネルギー源となってるんだろうな~」
無秩序な駒ほど厄介なものはない。まあ、撹乱とか混乱を起こす目的ならそれでもいいが、それは人の多いところじゃないと効果は出ない。無秩序な駒をそこまで誘導するだけでも一苦労だろうよ。
「って言うか、この人の少ない時代にゾンビ攻撃とか悪手だよね」
元の世界のように何億人もいれば未曾有の大災害にもなろうが、町と町が離れ、人口も少ないところでは魔物を生み出したほうが何十倍も効果的だと思うんだがな。
「いろいろ試してるんじゃない?」
「だとしたら随分と悠長なことだ」
無秩序な攻撃はそれこそ悪手だが、だからと言って試しているなんて悠長すぎんだろう。
いや、災害竜なんて言う悠長な計画を立てるヤツだから長期戦を想定しているのだろうが、そんなことでは勝利なんて遥か先だ。ただ弱肉強食な時代が続くだけである。
「スズなら国を興して世界を牛耳るんだけどな」
まあ、それもそれで悠長な計画だけどさ。
「……それに対しての意見はなにもなしですか……」
リリーはオレの心が読める。手のひらの創造魔法で防御しても無理だった。
見られているなら見られているなりに対処はできる。だが、リリーは引っかからない。眉は寄せるけど。
「ただ、手のひらで遊ばれてるだけか。こちらもあちらも……」
ほんと、クソである。
だが、そんなクソな世界でも死んだら終わりだ。ただ苦労しただけの人生だ。
ふざけんな! 人は幸せになるために生まれて来たんだ! オレたちは神の家畜なんかじゃない! 駒でもない! 自由意思を持った人だ!
人には人の矜持がある。それをなくしたらケダモノだ。
「……だから、あの目は嫌い。なにもかも諦めて狂ったような目は……」
本当に反吐が出る。抑えてる理性がブチ切れそうだ。
「ジェス! イビス! さっさとゴミを始末しろ!」
完全にブチ切れる前に二人に喝を飛ばした。
「了解ー!」
「ああ!」
スカルティラウスの攻撃をわざと回避したり、威力の低い銃を使っていたのを止め、二人が本気スイッチをオン。ジェスは見えなくなり、スカルティラウスの頭を吹き飛ばし、イビスはミニガンを出して乱れ撃ち。
「イジメね」
「イジメじゃないよ。片付けだよ」
この世に不要なものはさっさ片付ける。断捨離みたいなものだ。
「適当に言ってるでしょう?」
ハイ。適当です。どうでもいい存在だし。
「……な、なぜだ? なぜ邪魔をする……」
男が小さく呟く。
なんで聞こえるん? と不思議がるあなたに答えよう。ミカンが音声を拾って伝えているからです。
「お前に力がないからだよ」
純然たる理由を教えてあげた。スズちゃん、優しいから。
「さようなら」
人差し指を男の額に向け、ビームを撃つ。
ゴミクズにすぎた威力だが、これはウェルヴィーア教の慈悲である。
ビームは男の額を吹き飛ばした。
「えげつな!」
イビスがドン引きな顔するが、君、よくやってるからね、顔だけ吹き飛ばすの。君の真似したんだからね。
「しかし、張り合いがなかったな~」
数十ものゾンビとスカルティラウスを相手にして張り合いがないとか、完全に雑魚扱いだな。いや、雑魚だったけどさ。
「そうそう強敵がいられたら困るよ」
敵は愚かで弱いほうがいい、ってね。
「もう用はないし、いこうか」
ココアを飲み干し、席を立つ。
「スズ。まだ不死人がいるが、どうする?」
まだいるんかい。面倒臭いなぁ~。
「もう、ボスの魔法でふっ飛ばせば?」
そうだな。大魔法も練習しておかないとな。
「下がって」
カイヘンベルクで使ったイオ──ではなく一式爆弾を村の上空へと放つ。
「退避!」
カイヘンベルクのように失敗しないように全力で逃げ出した。
「ジェス、お願い!」
レベルが上がろうがオレの身体能力はクソ雑魚。二人の走りには追いつけない。なのでジェスに抱えてもらいます。
ジェスに抱えられ退避すること十二秒。後方で大爆発が起こった。
「ボスの魔法はメチャクチャだぜ!」
ジェスのスピードに負けずついて来るイビスが楽しそうに叫んでいる。
「まったくだ!」
ジェスも同感だとばかりに答えているが、その声は楽しそうだった。
「さあ、次の冒険に出発だぁー!」
次はもっと冒険者らしいことをするぜ。




