162 聖紋
バルジーヌを皮切りに、商人たちがわらわらと集まって来た。
商人としては大店なんだろうが、バルジーヌと比べると一段落ちるのが否めない。
とは言え、商人の支持はいくらあっても困らない。ウェルカムウェルカムでウェルヴィーア教に迎え入れた。
「あなたたちの働きに期待します」
それでオレの歓迎会と言う名の勧誘会は終了。商人や有力者たちは帰っていった。大物を残して、な。
「リン様。お疲れでしょう。別室でお休みください」
別室、ね。
「わかった」
と、市長の秘書っぽいおねーさんに連れられて別室へと向かった。
別室は執務室っぽく、三人用のソファーがコの字に配置されていた。
「少々お待ちください」
秘書っぽいおねーさんがそう言うと、隣室から小さめの椅子を運んで来て、上座に置き、オレを座らせてロの字となった。
……確実に会談って図だよね……。
「お茶をどうぞ」
「ありがとう」
秘書っぽいおねーさんから受け取り、素知らぬ顔でお茶をいただいた。
半分くらい飲んだ頃、部屋のドアがノックされ、じーちゃんと市長、身形のよい爺どもが四人入って来た。
……議員かな……?
「リン様。お休み中、申し訳ありません。少々お時間をいただけないでしょうか?」
じーちゃんが代表して恭しく尋ねて来た。
「どうぞ」
それぞれがソファーへと座る。
じーちゃんがオレの右手。市長と白髪の爺一人が左手。残りは向かいのソファーへと座った。
この世界の席の配置がどうなってるか知らんが、まあ、力関係の配置なのは違いないだろう。
「お疲れのところ申し訳ありません。リン様に紹介したい者がおりまして」
「そう。よろしく」
じーちゃんが紹介したいと言うなら今後仲良くしていたほうがいいと言うこと。拒む理由はない。
「こちらの者らはアルイン都市を支える者たちです」
と、市長が爺たちを紹介するが、名前は省略させていただきます。そうかかわることもない感じだから。
「余力があるならウェルヴィーア教にもご支持をいただけると助かる。こちらも皆様がお困りのとき、可能な限りご支持したいと思う」
ギブ&テイク。仲良くいこうぜ、って意味だからね。
「リン様は、病気を治せる魔法が使えるとお聞きしましたが、本当なのでしょうか?」
市長の横に座った白髪の爺が口を開いた。
無駄な前置きはいらないが、なんとも単刀直入に聞いて来ること。嫌いじゃないぜ。
「魔力があれば」
ウソは言わん。が、正直に言うつもりもない。
「魔石はあります。どうか孫をお救いください!」
市長の隣に座る白髪の爺が小箱を出して頭を下げた。
さて。どうしましょうと、じーちゃんを見る。これは、誰の得になる話だい?
「リン様。どうか友人の孫をお救いくださいませ」
じーちゃんが得になる話ね。了解了解。
最早、オレとじーちゃんは一蓮托生。あなたの願いはわたしの願い。わたしの得はあなたの得。拒むなどあり得ませんわ。オホホ。
「わかった」
魔石くれやとじーちゃんに目で語り、理解したじーちゃんは小箱をつかみ、オレへと渡した。
袖の下は確かにいただきました。神は甘いお菓子でホイホイ願いまっせ。
イモ八万個分のお菓子とか、気前がよろしいことで。神の奇跡も緩んじゃいそうです。
手のひらの創造魔法で聖紋を二十個創り、テーブルに置いた。
「神は信じる者を守る。聖紋を体に身につけていれば病は治るし、かかりもしない。ただ、祈りは毎日捧げなさい。捧げれば捧げるほど神はあなたを守るでしょう」
そう言ってじーちゃんを見る。それを与えてから元気やろ?
オレの視線の意味を理解した爺どもはソファーから立ち上がり、床に両膝をついて頭を下げた。
……切り替えが早いと言うか、調子が良いと言うか、まあ、神は偉大なり、ってことで流しておくか……。
「聖紋は自由にするといい」
ちゃんと行儀良く分けるんだよ。ケンカしちゃダメなんだから。
「人を守り、都市を守り、未来を築くために身を捧げる者らに祝福あれ。神はあなたたちを見ていますよ」
多少のいけないことには目を瞑る。が、ケダモノのごとき所業はオレが許さんぜよ。腐敗とか平和の敵だからよ。
席から立ち上がり、じーちゃんを連れて部屋を出た。今度こそ休むために、な。ハァ~。疲れた。




