163 堕落
上を掌握した次は下を掌握すべく動く。
と言っても上を掌握したときの疲れは取れてない。三日の休日はいただきます。
「ボス。部屋の中だからって無防備過ぎるぞ」
オレは君と違って戦場の人じゃないの。平和ボケした国の生まれなの。休むときは全力で休むの。
下着姿でベッドに寝っ転がりながらコーラを飲んでポテチを食う。これ以上の堕落はないって姿だろう。あ、干物な妹ではないのであしからず。
「信者が知ったら泣くぞ」
「信者がいないから問題ない」
部屋にいるのはオレ、イビス、シルバー、リリーだけ。一人、違う方向にヤバいのがいるが、信者はいないから泣くヤツもいませんよ。
「暇なら遊びにいって来たら?」
オレが上を掌握してる間に町に出たことは忘れないけどな。
「この姿で遊べるところはないよ」
まあ、逆に遊ばれるだけか。どう遊ばれるかはR18なので明言はできないけどな。
「早く酒が飲める年齢になりたいよ」
そうだな。それはオレもそう思うよ。酒に逃れたいときがあるし。
「町の様子はどう?」
「まるで聖誕祭のような騒ぎだったよ」
すまん。聖誕祭を知らない国で生まれたのでどのくらいの騒ぎか想像もできません。夏祭りくらいか?
「そう。イビスが諜報には不向きなのはわかった」
町に出たら町の様子や人の動き、噂話など仕入れて来いよ。遊びに来てんじゃねーよ。
「それは悪かったな。わたしは実行部隊。そう言うのはボスに任せるよ」
はぁ~。情報収集要員を探すのが急務だな。どこかにいないかな~。0二つなセブンな人。
「異端審問官とかは止めてくれよ」
「リンは宗教の自由を認めてる。ケダモノを狩る部隊は創設するけど」
「ケルベロスかよ」
その突っ込みがわからない。元の世界にそんなのがあったのかよ?
「清く正しい宗教なんてないから」
ケルベロスがなんなのか知りたくないので軽く流し話を繋げた。
「清く正しくが宗教なんだがな」
「イビスの冗談おもしろくない」
ジョークのセンスねーな、イビスちゃんよ。
「リリー。これでいいのか?」
「主は人の営みを肯定するわ」
その顔は否定してるようにしか見えないのですが。
「……育てるしかないか……」
「まさにケダモノの思考だと思うのだが?」
「衣食住を面倒見て、給金と休日を与え、宗教と結婚の自由を認める。ウェルヴィーア教は優良宗教です」
「今、清く正しい宗教はないと言った口はどの口だ?」
この可愛いお口ですがなにか? って投げキッスをしてやる。
「はぁ~。狂人に刃物を持たすなの見本だな」
誰が狂人や? まあ、まともな神経でやってられんけどさ。
「暇ならスラムにいって勧誘して来て。年齢不問。性別不問。ケダモノ不可。イビスの見立てでいいから」
「今まさにケダモノにされようとしてるのだが」
「大丈夫。イビスは躾のいい猟犬だから」
普通なら侮蔑の言葉だろうが、イビスは自分の立場も立ち位置も理解してるし、戦争屋だか傭兵だかのプライドを持っている。下手に褒めるよりこう言うセリフのほうが喜ぶはずだ。理解には苦しむけどな。
「猟犬にも種類があることを理解してくれよ」
「わかってる。暇潰し程度で構わない。リンも休んだら探しに出るから」
「了解。暇潰し程度に見て来るよ」
肩を竦めて部屋を出ていった。
まあ、ゴミ掃除して来てちょうだいな。
「……そのうちイビスに撃たれるわよ……」
「守護天使がいるから大丈夫」
そのときは身を呈して守ってくださいませ。そのローブは防弾性もありますんで。
「主よ。悪魔に神罰を与えたまえ」
守護対象を悪魔とか酷いわ~。まあ、神罰を与えられるなら最初から邪神に与えろだ。こっちに与えるとか筋違いだわ。
手のひらの創造魔法で九年分のジャ○プを出す。
イモ一万個分の魔力が減るが、信者一万人突破記念のご褒美です。さあ、九年分の楽しみを取り戻すぜ!
「堕落だわ」
ハイ、堕落です。九年分を取り返すまでオレは絶対にこの部屋から出ないぜ!




