159 アルイン都市
最初の目的地、アルイン都市に到着した。
と、言っても半日の距離。朝にダリアンナの町を出れば夕方には着く距離なので旅をした感覚はない。
……なのに、今まで一度も来たことないのだからオレって世間に興味なさすぎだな……。
まあ、世間を知るための伝道巡回なんだが、事前情報を仕入れておくんだったぜ。
都市が大きいとは理解してたのに、それを利用することまでは頭が働かなかった。ここ、自由貿易都市群なのに……。
「宗教じゃなく商売をやるんだった」
いや、今さらか。それに、商売じゃ一都市ぐらいしか影響力を与えられない。権力者か宗教に走るしかなかったのだ。はぁ~。
「後悔ばかりの人生だ」
「罪の多い人生の間違いでしょ?」
「罪を犯しながら生きるのが人。無垢でいられない世界を創った者に言え」
楽園とまではいかなくても人を殺さなくても生きていける世界にしろや。こっちは真っ当に生きたいと思ってんだからよ。
「主は人の可能性を望み、その先へいたることを望んでいるわ」
だから人に艱難辛苦を与えるってか? ふざけんじゃねーよ! そう言うのはノーサンキューなんだよ!
「ほら、不細工な顔になってるわよ。神の子らには笑顔を見せなさいよ」
オレにはカボチャかジャガイモに見えるがな。それか、魔力にしか見えません。
アルイン都市に入る前から信者が道に出て手を振り歓迎していたので、ライジングスターのサンルームへと出て信者の歓迎に応えているのだ。
まず、伝道巡回の最初の地としたのはじーちゃんのホームグラウンドで、教会を建てることをお願いしていたからだ。
じーちゃんが議員を辞めたとは言え、築いた伝や派閥はまだ生きており、ウェルヴィーア教の幹部となったことで市長(いたんだ!?)より力を得た。
お陰で良い場所を得られ、まもなく完成とか。一年でよくやるよね。どんだけマンパワーをかけたんだよ? 強制とか止めてくれよな。
大通りを進み──と言うか行進? パレード? なんかよくわからない盛り上がりを経て市役所へと到着しました。
「市役所と言うより城だな」
カイヘンベルクでもそうだったが、市役所と呼ぶなら市役所らしい建物にしろよ。名前負けしてんだろうがよ。
まあ、市役所呼びに異論はあっても変えようとするほど意欲はナッシング。市役所なら市役所として認めてあげようじゃないか。
「どこから目線よ」
オレのオレによる目線ですが、なにか?
「……主よ、哀れな子を愛したまえ……」
オレ、神に愛された記憶がないのですが? 悪意しか感じなかったのですが?
「ボス。ついたぞ。早く出て来いよ。お偉いさんが待ってるぞ」
クソ。神に文句を言うことも許されないのかよ。4ね。
モヤモヤムカムカを無理矢理押し込め、平常心でライジングスターから降りた。
「お待ちしておりました、リン様」
まずじーちゃんが胸に右手を当てて出迎えてくれた。
「ご苦労様。あなたの働きに感謝します」
大勢の人がオレを見ているので、0円スマイルを返してやった。
「ボス、普通に笑えるんだ」
そこ、大勢の人が見てるんだからお黙りなさい。あと、君も使徒として認識させてるんだからちゃんとしなさいよ。
「リン様。アルイン都市の市長、ベッガルです」
じーちゃんよりちょっと年下な感じの平凡な顔立ち。市長と言うより教頭先生って感じがする。
「初めまして。アルイン都市の市長、ベッガル・バイルガンと申します。使徒様の訪問を歓迎します」
「ありがとう。ベッガル様の温かい歓迎、神に代わり感謝いたします」
安売りはしないが、神の名を使うのに遠慮はしない。神はオレのためにあるのだからな。
「お部屋を用意しました。今日はごゆるりとお休みください。明日には細やかな使徒様の歓迎会を開きたいと思います」
歓迎会はオレが要望した。権力者にウェルヴィーア教の教えを懇切丁寧に説いてあげるために、な。
「それは嬉しいです。アルイン都市の方々に祝福がありますように」
そして、オレが幸せになるために皆様の魔力をいただきます。




