158 ルールを知りたい
あれから六年の時が過ぎた。
「……遠くへ来たものだ……」
故郷はどうなっただろうか? もう面影もなくなっただろうな~。
「まだ六十分も過ぎてないのになにが変わると言うのよ」
「…………」
「あれから何十年ゴッコなら切りよく十年にしなさいよ」
「…………」
「ボスはまた碌でもないことを考えてるのか?」
「…………」
「たんに暇してるだけよ。なにかしてないと落ち着かない民族だったからね」
「働き蟻とか言われてたな。アレって本当だったんだな」
うっさいよ! 暇なら他にいってろよ! オレの逃避行を邪魔すんじゃないよ!
「それを言うなら現実逃避でしょう」
お願いだから黙ってください。そして、一人にしてください。今のオレには孤独が癒しなんだよ!
目で訴えるが誰にも通じない。君たちもっと空気を読めるようになりなさいよ。
なんてできたらとっくに一人になっている。自己チューなヤツらになにを言っても無駄である。
「リンにだけは言われたくないわ」
最近、守護天使の当たりが強いです。
「守護対象も当たりが強いけどね」
「…………」
ヤダ。守護天使に口で言い負かされてる!
勝てないときは無心。オレは貝になって海の底で静かに堪えるまでです。
「ボスはなに拗ねてるんだ?」
「上手くいかない人生によ」
「わたしには思い通りに生きてるように見えるがな?」
そのためにどれだけの苦労と努力がかかってると思う。たった九年の人生に四回くらいの人生が詰まってんだよこんにゃろーが!
「まあ、一時の平和を味わわせてあげなさい。どうせ長持ちしない平和なんだからさ」
「まあ、邪神側の最大の敵だからな。放ってはおかないだろうよ。わたしなら道中を襲うな」
敵がそんな雑魚なら苦労はしない。力で覆せばいいだけのことなんだからな。
「……おそらく、最大の敵はどこかに消えたと思う」
これは勘でしかないのだが、敵の悪意が消えたような気がするのだ。
「それは、雑魚は残ったってことだろう?」
「リンをここに縛りつけるヤツは残したと思う」
オレならする。他の使徒と組まれたら厄介だからな。
「なら、それはわたしが排除するさ。あの女に勝つための糧になってもらうさ」
悔しかったのかな?
「あれはレベル30は行ってる。邪神の揺り籠を少なくとも五つは壊さないと無理」
邪神の揺り籠も恨みか血の濃さ、量で経験値量が決まるものだと思う。
「邪神の揺り籠な~。あれだけ魔物がいてなかなか見つけられないよな~。なんでだ?」
知らんよ。なかなかなくて検証もできないんだからよ。
「……エネルギー切れ、かな……?」
無限に沸き出すなら永久機関炉にしたいよ。
「嫌な敵だ。人を利用して容赦なく切る。なのに、人を集めるのが上手い。邪神の揺り籠より始末に悪い」
「まったくだ」
「まったくよ」
なぜ、オレを見て力強く頷くんですか? オレは敵のことを言ってるんですけど。
「リン様! 魔物の群れです!」
「だって。平和って儚いものね」
同意したくねー! いや、オレは死んでも認めないぞ! 平和はまだ続くんだい!
「ティラウスかな?」
「にしては小さくない?」
「あー確かに。もしかして、ティラウスが生んだのか?」
「そうじゃない。魔物は繁殖するからね」
どこまでも嫌なことを仕込む敵だぜ。勝つことではなく混乱させることに極振りしてるよな。
「ジェス。やって」
あの女騎士に対抗できるのはねーちゃんにイビスにジェスしかいない。いずれ出会うときまで地道にレベルアップしてくださいませ。
「わたしもやる!」
イビスも対物狙撃銃を出してサンルームへと走っていった。
「……次は、レベルアップに力を入れるか……」
オレも魔力量を増やし、攻撃魔法を開発しなくちゃならない。敵をオレの前に引き出すために、な。
なんて、意気込んでみるが、引き出せる未来が見えない。敵は勝つ気がない上に求めているものも見せようともしないのだから……。
「邪神は使徒にどんな力を与えたんだ?」
そう言葉にしてみるが、答える者はいない。リリーも口を開かない。それはつまり、敵もオレの能力を知らないし、教えられないと言うことだ。
「……ルールくらい教えて欲しいよ……」
勝利条件もなければルール説明もなし。嫌な戦いだぜ。




