140 ウェルヴィーア
「男ども、回れ右!」
突然イビスが叫んだ。な、なによ!?
「ボス。ハピネスに服を着させろ」
あ、服。すっぽんぽんでしたね。こりゃ失礼しましたっ。
手のひらの創造魔法でセクスィーな下着を創り、純白のローブを纏わせ、長い金髪を髪飾りで纏める。足は若草色のブーツを履かせた。
うん。見た目バッチリパーフェクト!
「ハピネス。体の調子はどう?」
元スライムとは言え、オレの血により人の肉体になり、充分な筋肉はつけてある。動く感覚も不自由なくしたつもりだが、動いてみないとどうとも言えないのも確かだ。
少し体を動かして感覚を確かめるハピネス。そうしたとは言え品のある動きをするものである。
「……問題ありません」
声は変えた。同じだといろいろ大変だからな。あ、なにかは訊いちゃダメよ。
オレもハピネスの体を触って確かめる。病気一つない健康的な体。百七十センチと高身長。ボンキューボンなスタイル。お前、調子に乗んのもいい加減にしろよと文句を言われそうだが、オレにも拘りがあるとだけ言いワケさせてくださいませ。
「ハピネス。力は使える?」
オレの血を与えたのは手のひらの創造魔法を受け継がせるためだ。
もし、手のひらの創造魔法が使えるならわかることもある。ハピネスが使えたら能力は遺伝できる。できないのなら能力は一過性のもの。この世に残らないってことだ。
能力の遺伝。これがあるかないかで今後の計画を変更する必要が出て来る。まあ、受け継がれる形で計画は進めてるけどな。
「……はい。使えます」
両手を広げ創造魔法を発動させた。
なにをと思ったらイモが両手から溢れ出した。あ、うん、オレの血が受け継がれて嬉しいです……。
「頭のネジがゆるんだところも受け継がれてるわね」
肩にいるリリーをとりあえず遠くに投げておく。
「それくらいでいい。魔力は減った感じはする?」
イモに腰まで浸かりながら尋ねる。つーか、イモで溺れて死にたくねーわ!
すぐにイモをアイテムボックスに放り込む。ふぅ~。
「減った感じはしません」
ハピネスを>っと鑑定──できない。やはりレベルが高すぎると鑑定できない感じだな。
まあ、これまでのエサ(魔物の死骸等ね)や災害竜の下半身(二百メートル弱)を食って生まれたのだからレベル40はあっても不思議ではないだろうよ。
「わかった。あなたのやるべきことはわかる?」
「邪神と戦うことです」
よかった。刷り込みのように教えた甲斐があるってもんだ。
「ハリュシュ。護衛に適した女性を十人選んでこちらに来て」
ハピネスに護衛など必要はないが、まだ生まれたばかりで力の加減もできてないし、環境にも慣れてないのだからしばらくは様子見は必要だろう。
しばらくしてハリュシュたちがやって来た。
「リン様、そちらの女性は?」
ごもっともな質問です。
「ハピネス・グランディール。リンたちの家族」
まったく理解できないとジェスへと目を向けたが、ジェスもどう説明していいかわからず右往左往していた。
……この男はもっと女の扱いを覚えさせなくちゃダメだな……。
初めて会った頃は影のあるイケメンだったのに、今は童貞ヘタレでしかない。英雄にさせるんだからオレ様な男になれよな。
「詳しい話はあとでする。今はハピネスの護衛をして。あと、ネイリーに世話役の人選してここに来てもらうから」
「よ、よくわからないけど、了解したわ」
ハリュシュも前よりは話の通じる女になったものだ。まあ、戦闘よりの考えにいっちゃうのが困ったちゃんだけど。
「ハピネス。ハリュシュと一緒にいて」
「わかりました。あ、あなたのことはなんと呼べばよいかしら?」
あ、そうだな。呼び名を決めてなかったっけ。って、なんて呼ばせればいいんだ? ママ? マスター? おねーちゃん? なんだ?
まあ、普通に名前でもいいのだが、じーちゃんたちにハピネスとの関係性を問われると言葉に詰まる。世間に知らせる関係が必要だ。
しばらく考えて答えを出す。
「……シスターと呼んで」
「シスターですか?」
「ハピネスは神の御使い。リンはあなたを支えるシスター。ジェスたちは聖戦士。ここにグランディール教を開教する」
考えていた。集団を維持するには国を創るか宗教を創るしかないと。
どちらも避けたくて国に寄生することを考えていたが、ここを奪うには宗教が都合がいい。と、思い込もう。
「いや、ウェルヴィーア教と名乗るがよい」
と、ハピネスの肩に乗ったリリーが、いや、神の声が発せられた。またかよ!?
「ククッ。そなたは本当におもしろい。期待しておるぞ」
「……どこまでも人を愚弄しやがって……」
「ふふ。そなたが人だからこそ尊重している。人の尊厳をかけて戦うがよい」
言うだけ言ってリリーから消えてしまった。
「…………」
クソがクソがクソが! くたばりやがれっ!!




