137 野望が叶うとき
このままエンドロールが流れてめでたしめでたしで人生が終わるならいいのだが、オレの人生まだ八年。まだ先は続き、苦労はエベレスト級に聳えている。次に向けて素早く動け、だ。
「皆、ティラウスを相手しつつ災害竜のところに集結して」
リリーを叱咤激励して万能偵察ポッドをコピーさせまくり、皆のところへ向かわせる。
その途中に事切れているティラウスを万能偵察ポッドに回収させることも忘れない。死んでも野望の糧となる。取りこぼしなどいたしませんわ~。
「ジェス。ティラウス狩りはいいから災害竜を食らって」
ティラウスも美味しいが、孫軍が来る前にさっさと災害竜を食らってもらって消滅させてもらいたい。
……口出しされる前に証拠隠滅しなくちゃね……。
「あんなバカデカいのがなくなったら騒がれるだろう」
「だから早く消すべき」
真実を知るのはオレらだけ。孫や他の議員には証明できないのだからなにを言っても雑音でしかない。
「イビス、まだ動ける?」
「ああ。動けるが、まだ動く必要があるのか……?」
「ある。ティラウスがいた場所を調べる必要がある」
まだ邪神の揺り籠を見つけていない。
万能偵察ポッドを突っ込ませて爆発させたが、経験値は入ってこなかった。
それはつまり、邪神の揺り籠があると言うこと。壊す必要があるってことだ。
「生き残りがいたら困るから排除して」
隠れて後ろからグサッとかイヤだからな。しっかり掃除しないとよ。
「まったく、容赦ないボスだよ」
「敵に容赦ないことされるよりマシでしょう」
どっちもマシじゃないとか言っちゃダメ。オレは愛のある命令しかしませんから。
「そりゃそうだ」
「邪神の揺り籠があったら連絡して」
「了解」
イビスに万能偵察ポッドを五つつけて任せた。
皆が集まるまでに陣地を築く。
しばらくここにいることになるだろうから竈を三つに風呂を二つ(男女別だからです)を創り、食事の用意をする。
徐々に皆が集まり始め、来た順に食事を取らせ、風呂に入って休ませる。
「リン様、我々がやりますから休んでください」
働きづめのオレを心配して言ってくれるが、駒なくして将はなし。将なくして駒はなし。将なら駒を生かすためにあるべきだ。
……いやまあ、盾がないと落ち着けないってだけなんですけどね……。
「うちに帰るまで油断しないで。休めるときに休んで体調を回復させて」
同じことをもう一回やれるくらいに身も心も回復しやがれ。
「わ、わかりました」
納得したならとっとと休みやがれ。
「ジェス。進行はどう?」
野望のほうはもう少しで下半身を食い切る感じだ。
「あと頭だけです」
グランディールの槍も食いながら成長してるので速さは増している。頭だけなら陽が沈む前には食い切りそうだな。
「わかった。終わったらイビスに合流して」
「わかりました」
「イビス。どんな感じ?」
通信をジェスからイビスへと切り替える。
「水浸し、って感じだな」
水浸し? なんだそりゃ? 万能偵察ポッドに意識を移してみる。
確かに水浸しやな。つーか、湖みたくなってんな。あの蒸気はこれが原因なのか?
鑑定すると温度を三十八度。風呂にするにはちょっと温いな。まあ、ティラウスが浸かっていたところに入りたいとは思わんけどよ。
「どうする? 潜るか?」
「しなくていい。排水する」
ハルオン貿易都市にも川はあり、アルガ峠からバウヘン峠に流れている。時間はかかるが、アイテムボックスに収納して排出すればいいだろう。
「生き残りはいる?」
「いる感じはしないな。ただ、卵の殻みたいなのがたくさん見える」
卵の殻か。ってことはカルシウム、なのか? まあ、一応回収しておこう。肥料になるだろうからな。
雪が消えた分のスペースはあるので卵の殻を収納させる。
「水が引けたら探索の続きして」
「なんだか邪神の揺り籠がある気配はしないな」
邪神の揺り籠に気配なんてあるのか? あるんなら是非とも教えて欲しいもんだよ。
「とにかく探索して」
災害竜がここを選んだ理由があるはず。それがなんなのか想像もつかんけどよ。
意識を戻して陣地から野営地へと変更。元気のある者にテントを張るように指示する。
陽が暮れる頃に野望が下半身を食い切り、少ししてジェスも上半身を食い切った。
これで長年仕込んで来た“野望”が叶うぜ!
「ジェス。ご苦労様。疲れたら休んでもいい。残党もいないみたいだから」
災害竜の上半身を食らったことでグランディールの槍は神の武器に匹敵するものとなった。
まあ、神の武器がどんなもんかは知らないが、ティラウスくらいなら一突きで食い尽くすだろう。もちろん、他にも機能はつけてますが、それはいずれ、ね。
そして、陽が暮れた頃、孫軍ーーと言えるほどの纏まりはなくなっており、百人いるかどうかになっていた。
「勝った、のかな?」
やつれた孫が力なく尋ねて来た。
「勝った。被害は甚大だけど」
グランディール傭兵団にも死者は出た。あれだけ用意したって言うのにだ。
「……ああ。頭が痛くなるよ……」
だろうな。全滅に近い死者を出したんだからな。
「頑張って」
としか言いようがない。なにかあるならこちらが教えて欲しいくらいだ。
「とにかく、勝ちは勝ち。グランディール傭兵団の依頼は完了した。勝利の報告はそちらでやって」
「……報告、か。どう報告したものやら……」
「頑張って」
あなたがトップ。誰も代わってやれないのだから自分でなんとかするしかありません。
「都合のよい報告すればいい。知ってるのは生きた者だけ。覆すことはできない」
まあ、アドバイスはしてやるよ。あなたにはもっと働いてもらわなくちゃならないからね。フフ。




