136 帰るまでがお仕事
「──って倒れている場合かよ!」
女騎士に勝ったからと言って災害竜退治の依頼は終わってはいない。帰るまでがお仕事である。
「リリー。万能偵察ポッドを出して」
オレは戦いに全力とかバカなことはしない。戦いが終わった後のことを考えるタイプである。後始末を怠ける者は次の問題に持ち越す。それは前世で経験したぜ。
「わたしの人生コピーするだけなのね」
うん。君、守護天使ね。人生とか言っちゃダメな存在。まあ、姿は指人形だけど!
ポンポンと万能偵察ポッドをコピーし、災害竜(六割減)の周囲に放った。
「イビス。動ける?」
山にいるだろうイビスに声をかける。あ、一応、スーツにも通信手段はつけてますから。
「ああ。疲れはしたが、動けるよ」
「じゃあ、こっちに来て」
「残党狩りはいいのか? まだ生きてるのがいるぞ」
まだいるのか。どんだけ生み出してんだよ? 恨みが強すぎてドン引きだわ。
「構わない。残党は他に任せる」
すべてをオレらに押しつけられても困るし責任もない。オレが優先するべきはオレの幸せ。そのためならどんな罵倒ですら受け止めるさ。
……まあ、言われないように建前は守りますけどね……。
「了解、ボス」
なんとも頼もしい返事です。アイシテルヨ~。
「リン、無事か?」
ミューリーに支えられてねーちゃんがやって来た。
激闘だったようで全身ボロボロ。オレと同じくスーツの防御力や復元力は高くしたのに機能が死んでるとか邪神側に異議ありと叫びたいわ。
「無事。魔力はいっぱい持ってかれたけど」
あの女騎士の攻撃のスゴいこと。イモ一億個分が消えてしまったよ。
「……まったく歯が立たなかったよ……」
落ち込むねーちゃん。オレとしては歯が立たないと言う慣用句を知ってることにびっくりだよ。誰に学んだのよ?
「悔しいなら強くなればいい」
答えは単純明快。死にたくないのなら、勝ちたいのなら、今より強くなるしかないんだよ。
「リンがいる限り負けはしない」
だって負けたらそこで死合い終了だもの。生きてる限り勝ちでしかないわ。
「ふふ。頼もしい妹だよ……」
それはこちらのセリフだよ。頼もしい姉がいなければオレの人生とっくに詰んでたんだからな。
「今は休んで。ミューリーはねーを守って」
充分すぎる働きをしてくれた。後始末は任せてちょうだいな。
「わかったわ。任せて」
ねーちゃんの癒しとなってくださいませ。
オレも体に良いんだか悪いんだかのココアとクッキーを食べて体を休ませ、なかなか冷めない昂ぶる心を落ち着かせる。
「こんなときは冷たいビールを飲めたらなとは思うよ」
いつの間にかイビスが横にいてレモン水を飲んでいた。
「ご苦労様。助かった」
「なに、ボスがあのバケモノを引きつけてくれなければ当たらなかったさ」
打ち合わせはしてなかった。女騎士がオレに集中すればイビスが当ててくれると信じていたのだ。
「実際、あのバケモノによく当てられたと思うよ」
「うん。イビスのお陰で勝てた。勲章ものだよ」
ねーちゃんと同じく敢闘賞をあげたいところだが、イビスには勲章が似合う気がする。
「ふふ。勲章か。なら、なにかお似合いのを勲章をいただきたいな」
月桂樹の輪に星を象ったものを創り出し、イビスのペッタンコな胸につけてやる。
「あなたがもたらした勝利はたくさんの命を救った。それを賞して特一級栄誉勲章を授与する」
そう言って敬礼して見せた。
きょとんとした顔を見せたあと、表情を引き締めて敬礼を返した。
「慎んでお受けします!」
なにか満足そうな顔に笑みが漏れてしまった。
「なんなら階級も与えようか?」
なんて冗談で言ったら目を輝かせた。
「なら、少佐がいい!」
なぜに少佐? ってか、少佐って偉いの?
「わかった。今日からイビスは少佐。自分の隊を持つことを許す。最強の隊を創って」
「万事、わたしにお任せあれ」
なんの茶番かと思うが、こんな楽しい茶番も人生にあってもいいだろう。オレたちの人生はまだまだ続くんだからな。




