133 振り絞れ
動きが鈍くなったティラウスを順調に狩っていく。
苦労しかない人生からか、順調と言うのが落ち着かない。いや、不安しかないと言っていいだろう。
……イヤな人生送ってるよな、オレって……。
それでも手を止めるワケにはいかない。皆の援護をするべくティラウスの頭を狙って撃ちまくる。
「リン様! 災害竜の上半身が動いています!」
ジェスからの悲鳴にも似た報告になぜか安心してしまう。それでこそオレの人生だぜ。
「防御体勢!」
不意打ちでなければ怖くもない。ドンと来い、だ!
魔力バリアーを張ると、災害竜の上半身が上がるのが見えた。
グランディールの槍と野望により真っ二つにされたとは言え、災害竜の全長は四、五百メートル。百メートル食われても上半身も下半身も百メートルはある。首だけ上げても二十メートルくらいにはなる。
見上げるほどになった災害竜の上半身。黒とグレーの皮膚が赤く染まる。
一瞬、音がなくなった──と思ったら災害竜の喉から炎が漏れ、開いた口から黄色い炎が吐き出された。
空に向けて吐き出された黄色い炎だが、首を動かして地上へと振り下ろされる。
暴れる炎の津波になって四方へと唸る。
凄まじい速度でオレたちは飲み込まれ、炎の圧に負けて吹き飛ばされてしまった。
何十回転と転がされて三半規管が爆発しそう。せっかく下からの漏れを堪えたのに上から『モザイク処理』が出てしまう。
「ガウ~」
背中にかかったくらいで文句を言うな。オレの『自主規制』は高価なんだからな! 欲しがるヤツはぶっ殺すけど!
手のひらの創造魔法で即回復させて、辺りを見回す。
災害竜の炎で雪は完全に溶かされ、炎の熱がまるで回復魔法のようにティラウスが息を吹き返していた。
元気ハツラツオロナ〇ンCなティラウスが視界内に軽く四十体はいる。視界外にはもっといます。
「皆、起きて! 死ぬなら勝ってから死んで!」
鬼と言われようが悪魔と罵られようが生き残れるならなんとでも言うが良い。すべては生き抜いてこそである。
「皆、死んだら許さないわよ!」
「殺られる前に殺ってやるさ!」
「殺るぞい!」
多少はスーツの機能が低下してるが、戦士たちの闘争心に衰えはない。それどころか始まったときより燃え上がっている感じだ。
残り少なくなったことでティラウスも纏まりが出たようで、こちらに殺意を向けて来た。
ティラウスは熱を栄養としている感じなので、攻撃は冷気弾にして脚を凍らせる。動きが低下したところにハリュシュたちがフルボッコ。やることは同じだと慌てず騒がず各個撃破。
貯めた魔石や魔力回復薬が秒単位で消費されていく。ほんと、秒単位とか言ってばかりだな! 誰か気休めでもいいから救いをください。心が挫けそうですわ~。
「リン様! アルガ峠です! バケモノの勢いがすごすぎて突破されそうです!」
万が一のために何人か置いて来たが、さすがに無理か。ってか、孫軍はなにやってんだよ。六百人はいたのに突破されそうになってんじゃねーよ!
「無理はしなくていい。狩れる分だけ狩って」
突破されるならそれはそれで構わない。それは指揮する孫や作戦を決めた議員連中。オレたちの責任ではない。末端は受けた依頼を果たすまでだ。
とは言え、元気ハツラツ○ロナミンCなティラウスの猛攻が辛すぎる。
巨体なクセに俊敏だし、結構えげつない火を吐きやがる。尻尾も自由自在に動くしでドワーフたちが近づけないでいる。
オレの冷気弾を惜しみなく放つが、そろそろヤバげな感じ。それにあちらこちらと全力で駆け巡るシルバーの体力がさらにヤバげである。
常にオレの側にいるシルバーだが、ちょこちょこ改造はしているし、栄養剤や回復薬も与えてる。が、生物は生物。常に警戒しながら全速力で駆け、緊急回避を繰り返せば機械でも消耗する。
「……ガウ……」
そして、シルバーの限界が来て、倒れてしまった。
「ご苦労様。お前は休んでろ」
機動力を失われたときのことも考えているので慌てることはない。
全万能偵察ポッドに命令。ティラウスの足元へと突撃させ、自爆させる。
ティラウスは熱を力にしている感じだが、衝撃は力にはできないはずだ。その読みは正しく、脚をなくしてもんどりうっている。
最初からやれよとは言わないで。これは最終手段で災害竜相手のもの。口んなかに突っ込ませて内部から爆破と考えてたのだ。
「狩れるものから狩って!」
すべてのティラウスの脚を奪うことはできなかったが、形勢は逆転。戦いの終盤である。
「戦士たちよ、最後の力を振り絞れ!」
うぉりゃあぁぁぁぁぁっ!!




