134 女騎士
なんて叫んでみたものの、オレはその場に立ち続ける。
今のオレは八歳児なんだよ! メッチャ体力ねーんだよ! 栄養剤や回復薬をバカみたいに使って体に負担かけてんだよ! 精神だって磨り減りすぎてぶっ倒れそうだわ!
もう立ってるのもやっと。気を抜いたら倒れる自信があるぜ。
「ガウ」
少し体力を回復させたシルバーがやって来てオレを支えてくれる。ありがとな。
シルバーによりかかり、アイテムボックスから回復薬水を飲む。
「……キッツいわ……」
自然と弱音が漏れてしまう。こりゃ相当参ってるわ……。
「リリー。万能偵察ポッドをコピーして」
これまでリリーにはなにもさせなかったのは保険。敵がオレより上手だった場合の奥の手である。
出さないで済むなら出したくはない。戦いに出さなくても終わってからの回復要員や不意の事態に対応してもらいたいからな。
「いいの?」
「ああ。十個でいい。お願い……」
十個なら大差ない数だし、オレを守るくらいなら充分な数だ。
周辺に配置して辺りを見回す。
自爆により脚を奪われたのがほとんどで、五体満足(?)のティラウスは遠くでジェスがグランディールの槍に食わせていた。
……勝利は時間の問題だな……。
安堵から息が漏れてしまった――直後、ねーちゃんが出現。光の盾でレーザーを受け止めた。
「リンの言う通り、本当に現れたよ」
「雑魚の行動なんて大体同じ」
え? なにが起こってるの? と思う方々にお答えしよう。
カイヘンベルクでもそうだが、これだけのことが自然に起きたと考えることは難しい。誰かが仕組んだとみるほうが自然である。
作戦はその人の性格が出る。
カイヘンベルクはただ憎しみだけ。感情のまま動いている感じがした。ベルホンでは賢そうに動いてながら憎しみを制御できない堪え性のないバカな感じがした。去年の事件では用意周到で陰湿な感じがした。
共通して感じたのは人の憎悪だ。
人だからわかる人の憎悪。人の考え。人の行動だ。
世界を、人を、すべてを憎んでいる者が冷静に、そして冷徹に事を進めるなんて不可能に近い。必ず憎悪を知らしめたくなるものだ。
「練りに練った計画の最後、嗜虐心を抑えられず見下したくなって言いたくなるよね、敵に向かってチェックメイト、だってな」
さぞや気持ちいいだろうよ。誘惑に勝てないだろうよ。わかるよ。画竜点睛したくなるのが人ってもんだからな。
数十メートル先にいるグリフォンに、いや、グリフォンに跨がった年齢不詳の美女に向けてニヤリと笑ってやる。声が届く距離でないので顔で語ってやりました。
オレの挑発を理解したのか、ファンタジー感溢れる騎士の格好をする美女は微かに頬を動かした。
……この計画を考えたの、こいつじゃないな……。
性格は服装(装備もか?)にも出る。あんな派手な格好をしたヤツに年数をかけた計画なんて思いつけるとは思えないわ。
「ねーちゃん。気をつけて。あれはガチンコタイプだから」
あの女騎士から体育会系の臭いがする。が、脳筋って感じはしないな。目には冷静さがあるし。いや、冷酷かな?
「ああ、わかってる。強いってビンビン感じるよ」
女の子がビンビンとか使っちゃいけないよ。
「勝てないと思ったら退くんだからね。あれは手先だ」
数十メートル離れているのにオレの声が聞こえたのか、女騎士の右手が左腰の剣ヘと伸びた――と思ったらグリフォンが退いた。
ズドン! と、グリフォンがいた場所の土が爆発する。イビスが狙撃したのだろう。
イビスの注文で創った対物狙撃銃の射程距離は三キロとバカげており、威力も戦車を撃ち抜けるほどある。
バカげたものだけあって創るにはアホみたいに魔力を消費し、弾もオレ魔力二日分と来やがる。
ふんだんに使うことはできないが、グリフォンが危険と感じるくらいの効果はあると言うことだ。
一発の銃で対物狙撃銃の威力とイビスの射撃力を察したのか、女騎士がグリフォンから降りて剣を抜いた。
その隙にねーちゃんがダッシュ。女騎士の懐に入ってオレ製の剣を一閃――したが、空を斬るだけだった。
ねーちゃんの動きすら見えないので女騎士なんて透明レベル。こりゃ不味いとシルバーに跨がり退避する。
ギガン! とすぐ横で金属のぶつかる音と衝撃が襲い来る。
ヤベーよ! マジでヤベーよ! オレの立ち入る隙がねーよ! 入ったら確実に死ぬわ!
熱いバトルは女騎士はねーちゃんとイビスに全力投球で任せます。オレは災害竜へと向かいました。




