130 野望
「ジェス! 突き刺せ!」
蒸気で視界は奪われたが、上空にも万能偵察ポッドを八十個ばかり展開させてあるし、ジェスの位置も把握している。災害竜まで誘導は可能である。
「イビス。ここを任せる」
「了解。気をつけてな」
話のわかるイビスで助かる。
シルバーに山を降りるよう命令し、オレはジェスを災害竜まで誘導する。
「ハリュシュ。孫のところへ。峠まで下がらせて」
死体はオレがありがたくいただくから。
「ガイオーグ。戦奴だった者を連れて峠まで下がって」
もちろん、そちらの死体もありがたく頂きますとも。
ジェスは災害竜へとあっと言う間に近づき、オレが与えたグランディールの槍を構える。
オレが与えたグランディールの槍は暴食の槍。食らうことで成長するように創り出した。
別に形が変わったりはしないが、食うほどに内包魔力は増し、高く、研ぎ澄まされる。
成長する槍は学びもする。敵を知ろうとする。刹那の中で試行錯誤し、相手が強敵だろうと食らい尽くすのだ。相手の力を利用してだ。
そんな都合のよい槍ではあるが物が物だけに燃費と効率がメチャクチャ悪い。ゴブリン一匹食らっただけでは誤差にもならない。百匹食ってやっとイモ一個分くらいの成長になる。
与えて約二年。成長はそれほどしてない。燃費と効率が悪くて神が与えた武器より弱かったのは申し訳ないが、それはこの日のため──とは言いすぎだが、長い年月をかけて成長させるつもりではいました。
脚力全開で飛び上がり、災害竜へとグランディールの槍を突き立てた。
バンカーバスターじゃないと傷もつかないような強度をしてるだろう災害竜の皮膚(?)にレベル9で歯が立つワケもないが、そこはグランディールの槍がやってくれる。災害竜を食らいながらな。
切っ先が硬い皮膚へと突き刺さり、周辺を分解。食らい始めた。
ただ、巨体なだけに食らうスピードが追いつかない。秒速一メートルで食らってはいるし、少しずつスピードは上がるだろうが、それでも四、五百メートルはデカすぎる。
……このまま黙って食われるワケないよな~。奥の手を出される前にこちらも奥の手を出しておくか……。
災害竜は脇腹を食われているのに一向に起き上がる気配はない。ただ震え、蒸気を出し続けているばかり。ってか、なにか仕掛ける気か?
悩む前に動けと、シルバーを災害竜に向かわせる。
三歳のとき、オレは異世界革命を宣言したが、生きるための行動はしていた。
人は追い詰められたとき、攻めるか守るかに出るものだ。だが、オレはどちらにも出ず、どちらも取ることを選んだ。そのときは良くてもあとになれば逆になることがあると知っていたからだ。
だからまずは自分の力で生きることを選び、野望には、グランディールの槍と同じく暴食の能力を与え、力を貯め込み、いずれ来るチャンスと苦難に備えて貯めることにしたのだ。
右腕を災害竜の横っ腹に向け、野望を積んだミサイルを発射する。
ミサイルはなんの妨害もなく災害竜の横っ腹に着弾。粘着物が災害竜に食らいついた。
野望の元はスライム、らしき生命体。まだ鑑定もできなかったから本当にスライムかはわからない。見た目がそれっぽくて、ミミズを体内に入れて補食してたからスライムと思っているだけだ。
もはやスライムかもどうかもわからない摩訶不思議生命体。オレの髪や血、手のひらの創造魔法でオレの意識を混ぜてるので勝手に動いてくれるだろう。
「野望よ野望。オレの野望。血の一滴、肉の一片、骨の髄まで食らい尽くすがよい。オレが幸せになるためにな!」
あとは野望に任せて反転。蒸気を吸引しながら孫の元へ向かう。
しばらく進むと死体が現れるが、思ったより少ないのはなぜや? 蒸気は人を殺すだけ力があったのに。
孫がしている守りの指輪を目印に進む。吸引力を最大にしてるので視界はそれなりによくなり、数十メートル先にたくさんの人影が見えて来た。
……よく生きてること……?
ざっと三百人はいそうな感じだ。
追いつくと、年配の傭兵が多いことに気がつき、蒸気による被害もないこともわかった。
……さすがベテランってことなのかな……?
魔力がある世界だし、なにか防御法があるのだろう。
傭兵たちの間の隙間を通り抜けて先頭に出る。
「峠へ!」
生き残りがいるなら速やかに立て直しをするべきだろう。なにか起こってもいいようにな。




