129 エネルギー充填(?)
ハルオンに来て五日目。連合傭兵団? がやっと動き出した。
主力となるのは孫がいるほうで、バウヘン峠のほうは待機のようだ。
孫軍──と仮称して、バウヘン峠側は第二軍と仮称します。
「完全に光の指輪頼りの作戦だな」
横で千里眼双眼鏡(障害物がなければ二十キロ先の毛虫でもくっきりはっきり見えちゃいます)を覗くイビスが呟いた。
愚かだなぁ~とは思うが、神や邪神のことを知らなければこんなもんだろうと理解できるので、イビスの呟きに返したりはしなかった。
「そう言えば、光の指輪って一つだけなのか?」
「ううん。追加で二つ渡した」
もちろん、ぼったくり価格でお譲りいたしました。
「威力的にどうなんだ? 効くのか、あれに?」
「わからない」
災害竜に鑑定してもなにもわからず、いろいろ見方を変えてるが、表面体温が八十度になってるとしかわからなかった。
よくそれで生きてるよな。核融合で動いてんのかなと疑いたくなるわ。
「けど、表面はいけると思う」
表面はとても硬そうに見えるが、うん万度の熱に耐えられるとは思わない。まあ、反射対応とかされてなければ、だけど。
「まあ、効かなくても熱することはできるか」
それで細胞とか死んでくれるなら万々歳だけど、そう上手くいくとも思えない。それどころか言いようのない不安がオレの中で燻ってるんだよな……。
「ってか、そもそもあの怪獣は生きているのか?」
生きている、とハッキリ言える。
ただ、なんのためにあの体勢で生きてるのかわからない。
理由はあるはず。疲れたから寝てま~すってワケでもあるまいしな。理由があるからあんな体勢なんだろう。あ、うつ伏せって感じ?
「災害竜をあそこまで大きくするには想像を絶する苦労があったと思う」
あのサイズを一年や二年でどうこうできると思わない。なにを食ってるかは知らないが、相当量のエネルギーを必要とし、あそこまでになるには百年単位でかかることだろうよ。
「恨みかな?」
「だと思う」
金や虚栄心であそこまでできると思わない。人は夢と恨みには凄まじい行動力をみせるからな。
光の指輪を嵌めただろう男を先頭に三百人ほどの傭兵たちが続き、災害竜の頭のほうへと向かっていた。
「バカかな?」
「英雄になりたいんでしょう」
>っと千里眼で光の指輪を嵌める男を見る。
体格がよく精悍。いかにもなプロパガンダ。作られた英雄か。いろんな意味で可哀想だこと……。
「アレ、放ったりしないよな?」
どうでしょう? オレらと同じ世界の者がかかわってたら放つと言う選択肢外さないだろう。
まるで纏まりのない行進をゆっくりと続け、居眠りしかけたところで災害竜の正面──起き上がったら据え膳食わねばなんとやらな位置で停止した。
ちなみにオレらは脇腹側に陣取ってます。放たれたらイヤだもの。
千里眼は声まで聞こえないので、なにを話しているかわからないが、なんか芝居がかったことをして観客(傭兵)たちを煽っていた。
「なんのコメディだか」
外国に茶番劇ってないのかな?
一通り芝居が終わると、英雄(笑)が災害竜と対峙した。
「一人だけ?」
製作者としては性能に信頼をおいてくれるのは誉れではあるが、一つで四、五百メートルの存在をどうこうできると思える思考がわからない。それとも試し撃ちだろうか?
英雄(笑)が光の指輪を向け、一拍おいて発射。光は一直線に災害竜の頭(と思われる)へと駆け抜け、そして、光は吸い込まれた。
「え? はぁ? どう言うことだ?」
イビスの困惑を聞きながら冷静に考える。
レーザーの威力には自信がある。効かないはずはない。効かないのはカラクリがあるから。
知恵熱でも出そうなくらい考えてたら英雄(笑)がまたレーザーを撃ち、災害竜に吸い込まれた。
吸い込まれたところが赤く、と言うか黄色になってる。
……もしかして、熱を吸い取っているのか……?
>っと鑑定。表面体温を探ると百度を超えていた。
「ボス! 災害竜が動いたぞ!?」
探りを止めて全体を見ると、まるでエネルギー充填とばかりに災害竜が震えている。
「皆、防御体勢!」
イヤな予感がしたら即防御。皆の戦闘スーツを強制的に乗っ取り魔力バリアーを展開させた。
なにか熱を感じた──と思ったら、災害竜と地面の間から凄まじい蒸気が噴き出した。
全方位に蒸気が駆けていく。その速さも凄まじく、あっと言う間に盆地は蒸気に支配されてしまった。




