128 待機
実を言うとオレ、災害竜退治の概要を知らなかったりする。
今さら!? と驚かれる方々がいたらすみません。わざとですから責めないでください。
「なぜに?」
「失敗するだろうし、おそらくややこしくなると思うから」
あの光の指輪に頼った計画性のなさ。ナメた態度。グダグダな行動。味方(仮)を見ただけで失敗するのが目に見えている。
そして、敵を見たらヤバいとしか感想を抱けない。四百文字原稿用紙百枚使ってもヤバいしか書けないくらいヤバい。気を許したら失禁しそうだわ。
ってか、災害竜退治に作戦名とかあるんかい? カイヘンベルクのときも聞かなかったが?
まあ、あったとしても好転する材料にもならないんだからどうでもいい。災害竜退治で進めましょう。
「代表。バウヘン峠から傭兵団が来た。数は約六百」
ハルオンに来て二日。なにもなく災害竜を見詰めていると、ガイオーグから連絡が入った。
「素通りさせて」
下手な問題を起こされてさらに拗れるのはイヤだからな。
「了解。あと、おれの同族が戦奴にされて混ざっている」
バウヘン峠を見下ろす万能偵察ポッドに意識を移す。
ガイオーグと同じ獣型の獣人が三十人くらいいた。滅びたと言うザイフルグ王国の者か?
「なら、これ見よがしに整列して。アルイン都市の旗を掲げて」
一応、どの都市に所属してるか示すための旗は孫から渡されているので、各自のアイテムボックスには入れてある。
「もし、手を出して来るようなら殺しても構わない」
「これから一生タダ働きでいい。助けてくれ」
またそう言う面倒臭いことを言う。
だが、イヤだと言えないのが悲しいトコロ。今、不和を唱えられても困る。内部からヒビが入るなどゴメンである。
「戦奴は真っ先に使い潰されるか捨て石にされるかのどちらか。なら、隙を見て奪えばいい。グランディール傭兵団所属にしてしまえばいい」
強引だが、奪うのはガイオーグ。あとはさっさと下げてしまえばいい。
「予備の万能偵察ポッドをそちらに回す。回復薬も。いつでも逃げれるようにしておいて」
助けたいと言うなら助けたいと思う者が苦労しなさい。オレはもう苦労はお腹いっぱいなんです。
「……すまない……」
「謝るくらいなら黙ってもらってたほうが助かる」
「そう、だな。感謝する」
感謝を形にしてもらいたいもんだ。
「代表。グリュー殿の使いが来たぞ」
今度はそっちかい。そっちはそっちでやれって言うんだよ。
「グリュー様がお呼びだ」
「こちらは依頼通り動いている。邪魔されたくない」
高圧的な呼び出しを一蹴する。これは取引だ。この日のために準備して来たのだ。そちらの都合に付き合ってらんねーんだよ。
使いの男が高圧的に出て来るが、オレの耳は高性能。右から左に光の速さで流します。
「代表。グリュー殿だ」
二時間後、孫が現れた。息切れさせながら。
まあ、標高五百メートルとは言え、都会暮らしの者には辛いことだろうよ。いや、シルバーに跨がって移動しているオレのセリフじゃないけど!
「すまない。会議に出てもらいたいんだが」
「そちらはそちらで好きにやって。リンたちはそちらの邪魔にならないよう動くし、災害竜の気も引く。仕事はちゃんとやる」
こちらも一蹴してやる。
「そ、そうなんだが、わたしの立場も考えて欲しい……」
「知らない。自分の立場は自分で築くもの。それができないのなら議員は辞めたほうがいい」
おそらく、今回じーちゃんが来なかったのは孫を鍛えるためだろう。なら、付き合いの長いオレとしてはじーちゃんの願いに応えてやるまでだ。
「いや、グランディール傭兵団の立場も悪くなるんだが」
「どうなろうともリンの立場は揺るがない。それどころか今のリンなら議員の一人や二人、潰すことも可能。なんなら敵対することもできる」
借りは返って来なくなるが、邪魔されるくらいなら遠慮なく切らしてもらうわ。
「敵対することを恐れるくらいなら議員など辞めたほうがいい。力のない中立者は害悪。早く潰れてもらったほうが助かる」
なにを怖じ気づいてるのやら。あんたはオレと言う最強のカードを持ってんだぞ。もっと有効に使えよな。
「自分の命が惜しいなら無能にすべてを押しつけることを勧める」
議員なら責任回避力を高めろよ。梯子を外されて肥溜めに突き落とされるぞ。
「あと、戦奴をもらうからよろしく」
たまにはこちらから要求させてもらいます。
「……お祖父様の偉大さを痛感させられるよ……」
祖父の偉大さを知る前にたくさんの艱難辛苦を乗り越えろ。オレが健やかに暮らせるようにな。
「あなたは手柄より命を優先。あとはリンたちがやる」
噛ませ犬の出番くらいはくれてやる。精々いい声で鳴くがいいさ。
「……鋭意努力するよ……」
ああ。命と胃があるうちに、な。




