126 ハルオン都市
春の足音が聞こえる頃、孫がやって来た。
「災害竜の退治をする。マリーサン都市に集合してハルオン都市へ向かう」
ハルオン都市。ここから歩いて八日のところにあると言う。
先発隊は昨日に到着して橋頭堡を築き、万能偵察ポッドを放って地図作りしている。
「なぜマリーサン都市に?」
現地集合じゃなかったっけ?
「あそこは盆地だからね、順番に集結することになったんだよ」
だったらそれを連絡しやがれよ。雇われの身とは言えお前の私兵じゃねーよ。
「すまない。急に決まったんだ。我々の派閥は上位ではあるが、一番ではない。根回ししても覆されるんだ」
ったく。面倒だな。あれだけ優遇してんだからトップになれよな。
「わかった」
ここでごねてもしょうがない。いく先は同じなのだから素直に従うとしよう。
先発隊は十七名なので八十三名でマリーサン都市へと向かった。
マリーサン都市は南へ三日の距離で、都市と言うより町と言っていいくらいの大きさだった。
各都市から集まった傭兵団はカイヘンベルクのときより少ない。ざっと見た感じ、七百人強。二割減って感じかな?
「傭兵団が少ないのはなぜ?」
「各地で魔物溢れが起こっていてそちらに取られている」
まあ、すべてを投入ってワケにはいかないわな。
「でも、少なすぎる」
相手は災害だぞ。七百人強で対処できんやろ。目覚められて暴れられたらアリのように潰されるぞ。
「今回は光の指輪を主としたもの。これでも多いと文句を言われてるくらいだよ」
これ、ダメな流れだ。死亡フラグが振られてるよ。
「全滅も覚悟するといい」
オレは生き残る気満々ですけどね!
「……ぜ、全滅って……?」
「グランディール傭兵団は遊撃。他が滅びようと関係ない」
約束は取っているから他と一緒にいる必要もなければ守ってやる必要もない。貧乏クジはそちらに引いてもらいます。
孫がなにか言いたそうにしてるが、気にすることはしない。うちらとは違う傭兵団を護衛につけている。自分の命はそちらに頼ってください。銃とか優先して回してるんだからよ。
集結地がマリーサン都市らしく、さらに三百人がやって来た。
約千人か。カイヘンベルクでも思ったが、都市の数に傭兵が追いついてないか? 各都市五百人くらいいないと守れないだろう。
団長が集められ壮行会みたいなことをやったみたいだが、孫に任せてオレらは明日のためにご就寝。爽やかに目覚めた。
「これから戦いだと言うのに二日酔いか。傭兵の風上にもおけんヤツらだ」
傭兵の風上に立つイビスちゃんがプンプン丸。君は戦争屋か傭兵屋かはっきりしなさいよ。
ほとんどの傭兵が二日酔いのためか、出発も遅れに遅れ、オレたちが出発したのはお昼頃だった。
「グダグダだな」
光の指輪があるせいか、士気は緩みまくっている。特に災害竜退治を指揮するなんとかって上議員が身も心もたるみまくっていた。
「……あれが指揮官かと思うと涙が出て来る……」
まあ、カイヘンベルクでも同じだったが、話のわかるじーちゃんがいないのが泣けて来るぜ。
「失敗する未来しか見えないな」
と言うか、成功する未来が見えない。
「失敗するならするで構わない」
ああ言うわかりやすいヤツの失敗はわかりやすい。功名心を暴走させて足元を掬われるだろうよ。
いくどか魔物に襲われたが、銃の練習か、無駄に弾丸を消費して倒していた。言っとくが、売ってやる余裕はないからな。弾丸一つが自分の寿命と思いやがれ。
平和と言ってもいい感じで七日。ハルオン都市の入り口、アルガ峠に到達した。つーか、七日もかかってんじゃねーよ。神か邪神の悪戯か?
「グランディール傭兵団は遊撃に入る」
孫に断りを入れて列から外れ、先発隊が築いた橋頭堡に向かった。
橋頭堡を築いた場所は山の上。標高は五百メートルだろうか、三キロ先に災害竜が見下ろせた。
「……怪獣かよ……」
災害竜は竜と言うより四、五百メートルくらいある岩? って感じ。ファンタジーな世界なだけあって角とかやたら生えてるけどな……。
「ゴ──」
「──イビス。似ていても触れてはダメ」
守らなければならないことはファンタジーな世界でも守らなければならんのです。
「さあ、運命の決戦だ」
これに勝てるかでオレの未来が決まるのだ、気合い入れろよオレ!




