118 グリフォン
>っと鑑定したらグリフォンと出た。
ここで一つ、疑念が生まれた。いや、前々から疑念、とまではいかなくても不思議に思っていたことがある。
なんで前の世界の魔物(空想上のね)の名前が出て来るん? ってな。
まあ、オレらの前の転生者がつけたのかと思っていた。だが、そうならもっと前世の魔物(空想上のね)がいてもいいと思ってたから気のせいかなと意識から外していた。
だが、あからさまに前世の魔物(空想上のね)がいるとなると、もしかして邪神側にオレらと同じ世界のヤツがいんじゃね? と思えて来るのだ。
仮にいるとして考え、邪神の揺り籠の配置、魔物の種類、あの雑魚のことを足すと、なんか指揮してるヤツが見えて来る。
妄想じゃね? と言われたらそのレベルのものだ。だが、そう考えるとしっくり来てしまうのだ。
邪神側は組織立ってる──とまではいかなくても暗躍してる者らがいる、ってな。
「代表!」
おっと。今は考えに入ってる場合じゃなかったな。
カイドのおっちゃんらがオレを囲むように斧やハンマーを構える。
グリフォンは上空でこちらを、いや、オレを見ている。その目は獣のそれではない。知性に満ちた目をしていた。
しゃべるか? と思ったが、グリフォンは視線を逸らすとどこかに去ってしまった。
「……なんだったのかしら……?」
オレの確認、かな? まあ、手を出さないと言うことはまだ対峙するときではないと言うことだ。
「先を急ぐ」
グリフォンがいる。今はそれで充分だ。空への警戒が意識できることが大切だからな。
しばらく進むと、銃声が聞こえて来た。
「山の中の村か。あるんだ」
いや、あるよ! ってヤツはカナダの山奥で暮らしてみろよ。きっと楽しい暮らしになると思うからさ。
「樵の村だと思う。薪は必要だからな」
魔道具があるとは言え、燃料は薪な時代なんだな~と実感するぜ。
……今は快適に生活してるが、昔のことを思い出して今を戒めよう……。
さらに進むとモーグの群れが現れた。
その手には棍棒が握られ、血走った目をこちらに向けている。山の中では遭遇したくない存在だな。
「殺って」
カイドのおっちゃんらに命令する。
戦闘種族ではないものの魔物狩りしてるだけあって苦なくモーグを挽き肉にしている。
……まったく、パワータイプはキレイに殺さないから参るぜ……。
万能偵察ポッドに死体と言うか挽き肉を回収させる。野望が溜まる溜まる。命のありがたさを感じる瞬間である。
「ミューリーも殺って来ていいよ」
ねーちゃんの指導の元、魔法攻撃を学んでいる。モーグ程度なら余裕だろう。あ、オレが優しい魔法をかけたのは内緒ダヨ。ミューリーの頑張りに応援したくなっただけ。オレのお節介なんだからっ。ふふ。
「する必要なさそうだし、またでいいわ」
だね。カイドのおっちゃんら、難なくモーグの群れをぶっ殺してるし。下手に混ざらないほうがいいわな。
ジェノサイドは五分もしないでジ・エンド。とはならないか。まだメッチャいるし。
この量だと命を使って邪神の揺り籠を創った感じだな。
見てるのもなんか暇なので暇潰しにと、右の袖からミニガン? ってのを改造したものを出して皆がいないところに撃ち込んだ。
出すと言っても砲身だけで、排出した薬莢はリサイクル。なのはいいんだけど、メッチャうるさい。シルバーが堪えられずしゃがんでしまい、危うく味方殺しになるところだった。
う~ん。ミニガン? は選択ミスだったな。挽き肉になっちゃったよ。
群れも減って来たのでカイドのおっちゃんらに任せた。邪魔しちゃってゴメンね。
こちらの勢いにモーグたちの血の気が引いたのか、一匹が逃げ出すと、それが伝染したのか次々と逃げ出した。
生命の危機を感じる能力はあるんだ。バーサーカーとは違うんやな。
「ケガした者は?」
なんて尋ねるのは野暮か。手のひらの創造魔法で返り血をキレイにしてやる。
「今のうちに休憩」
ケガは負わなかったけど、百匹以上を相手したら息切れくらいはするし、スタミナも減る。レベルが上がった者じゃないから体力も種族能力値しかない。よくそれで倒れないのが不思議なくらいである。
「リンちゃん。ナナリたちは?」
「今も元気に虐殺してる」
獲物は小娘と思ってるのか、モーグは退くことなく二人に襲いかかっている。あれだけジェノサイドしてるのに見た目で侮ってるのかな?
十五分くらい休憩して出発。なんとも酷い状態である。西部戦線真っ青でだな。
ねーちゃんもイビスも自重とか知らないのかな?
「どの口が言うのかしら?」
この可愛いお口ですがなにか?
「また休憩」
あの中に入るほうが危険である。終わるまでゆっくりさせてもらいましょう。
その場をキャンプ地として夕飯の準備に取りかかった。




