119 これが戦争さ
陽が暮れる前にはモーグは退き始めた。
さすがに二人でうん百匹も相手に全滅させるのは無理で、二、三百匹は山の奥へと逃げていった。
こんなのが世界各地で起こってるのかと考えると胃がキュッとする思いである。ハァ~。
「あー楽しかった!」
お日様のように笑うイビスちゃん。世紀末だったらさぞかし希望の笑顔となるだろうよ。
ねーちゃんを見ればミューリーに同じようにお日様のような笑顔を見せていた。
オレのジャンヌ・ダルクたち。オレが幸せになるためにその笑顔は必ず守る!
おっと。そこな大きなフレンズ、愛の囁きは止めてくれよ。この可愛らしいお耳には叱咤激励しか届かないぜ☆
「二人とも。汗を流して」
用意は万全。お風呂にする? 食事にする? それとも……わ・た・し? なんて冗談はどうでもいいか。ほら、風呂入って汗を流せや。
風呂に入っている間に料理を出して先にいただく。うん、カレーが美味しい。
どちらもカラスの行水なので五分もしないで済ませて来た。女として失格ですことよ!
「お、カレーだ。いただきまーす」
前は祈りを捧げていたが、神をみかぎったようで手を合わせてカレーを食べ始めた。
「リン。これからどうするんだ?」
皆のお腹が膨れ、食休みしたらねーちゃんが今後のことを訊いて来た。
「二人が満足したなら帰る」
今回のは二人のストレス発散のためが主。二人が満足したら帰っても構わない。二人が帰ると言うなら帰るかな?
「あたしはもっとぶっ殺したいな~」
ねーちゃんの殺る気に衰えはなしのようです。
「わたしもだ! ナナリに負けたまま終われないからな」
なに? 君らあの状況で競争してたの? どういう神経してんだよ。
「まずは自分の神経と向かい合ったら?」
うっさいよ! オレの精神はまともだわ!
「なら、明日も続ける」
そう決まってその夜はお休みなさい──したのだけど、夜中に爆発音が起こって目を覚ました。なんやねん!?
「わたしが仕掛けたトラップだ──」
寝る前にいなくなってたのはそのためか。見張りを立たせ万能偵察ポッドは配置してるって言ったのに。
万全の態勢にしてたので慌てる必要はない。と言うか寝ます。
二度寝して目覚めると空は青空。風はちょっと涼しくなって、秋の匂いがした。
「……そろそろベリーの季節か……」
天高く馬肥える秋、にはなってないけど、今日はいい日になりそうだ。
「そろそろ現実を見なよ」
フッ。堪えられないときは現実から逃げるときも大切なんだぜ。
なんていつまでも現実から目を逸らしていてもしょうがないか。目の前の、って言うか、三百六十度がジェノサイド。肉が焼ける臭いがゲロゲロです。
「なんなの?」
なんか戦争映画のラストシーンのようにしゃがみ込むイビスちゃん。まだジ・エンドにはほど遠いぜ。
「……これが戦争なのさ。フッ……」
こいつがなにを言っているかわからない。まあ、その顔から満足してるってのはわかるけどさ。
まあ、しばらくラストシーンに酔いしれてろや。
清々しい朝からほど遠い中、朝の身嗜みを済ませて朝食の用意。さあ、皆。御上がりなさい。
こんな時代で生きてるせいか、生き物が焼ける臭いなど気にせずモリモリ朝食をいただく皆様。繊細なオレには無理……ではありませんね。しっかり食べました。
食休みをしてから皆を集めてミーティングをする。
「モーグの巣を見つけた。殲滅する」
村を襲っていたモーグが山に逃げたので万能偵察ポッドに追わせ、巣と言うのか集まっている場所を見つけた。
そこは人工的な洞窟で、出入口前には数百匹が群れていた。洞窟の中は調べてないが、おそらく中に邪神の揺り籠があるんだと思う。
「あ、あの、ボス。わたしは夜通し戦ってたんだが……」
「ガンバレ」
万全の態勢でキャンプ地を築いたのにそれを無視して戦った君でしょ。文句は聞きません。
「リン。殲滅するなら先にいっていい?」
ねーちゃんも夜通し戦っていたが、こちらはオレが改造──ではなく育てて来た。寝なくても二日くらい余裕で戦えるだろうよ。
「いい。適当にやってて」
目標、殲滅。手段は臨機応変。好きにやっちゃれっ、だ。
「わかった! ミューリーいくよ!」
え? って顔のミューリーの腕をつかんでモーグの巣へと駆けていった。御愁傷様です。
「なんなの、ナナリの体力は?」
「羨ましいなら──」
「──わたしも殲滅にいって来る!」
イビスの頭に手を置こうとしたらサッと避けてねーちゃんのあとを追っていった。
まったく、それだけ元気なら最初から動きなさい。
キャンプ地を片付け、オレたちはゆっくり三人のあとを追った。




