120 ゴリラかよ!
シルバーに跨がりながら山を登っている。
アウストラロピテクスのことに詳しくないんでモーグと生態が同じかわからんが、随分と急な山に住んでること。エサとかどうしてんだろう? あんな数いたらエサを求めて広がると思うんだがな?
「こんな急な坂を登るとかなに考えてるんだ?」
カイドのおっちゃんも同じことを思ったようで、そんなことを呟いた。
モーグが通って獣道化してて、そんなに登るのはキツくはない。いや、シルバーに跨がってるから苦労もないのだが、もうちょっと楽なところに巣を作れと文句を言いたくなるぜ。
イビスたちをのんびり追っていると、銃声や爆発音が耳に届いて来た。
……派手にやってること……。
「わしらの出番はなしだな」
急ぐワケでもないと、ちょくちょく休憩してたらカイドのおっちゃんが呟き、他の者も苦笑いで答えた。
「訓練だと思えばいい」
オレは気晴らしだと思ってるけど。
「わしらも戦う訓練がしたいんだがな」
それはごめんなさいね。あの二人、いや、三人の中に入るのは危険でしかない。そんなのに巻き込まれて潰されるなんて嫌なんですよ。
とは言え、訓練できないのも困ったことだよな。実戦経験してもらってオレの盾になってもらわなくちゃならんのによ。
「──リン。今どこ?」
と、ねーちゃんから連絡が来た。なんや?
「モーグが洞窟に逃げ込んで籠っちゃったんだよ」
まあ、命の危機を感じたら巣に逃げるわな。不思議じゃない行動だ。
「イビスは?」
「横にいる」
特攻! な性格じゃなくてなによりです。
「すぐいく。そこにいて」
二百メートルも離れてないのですぐに到着。そこで違和感が湧いて来た。
人工的な洞窟にも違和感があったが、洞窟の前が広いのも人工的だった。まるで戦いやすいように平地だった。
……もしかして誘われた……?
「全員退避!」
シルバーの横っ腹を蹴った。
最近足にしか使ってないが、オレの機動力を甘やかしたり怠けさせたりはしない。いざってときに動けるようにはしている。
「ガウ!」
仕込みのできを示すようにシルバーが踵を返して逃げ出した。
振り向けばカイドのおっちゃんらも必死について来ていた。ねーちゃんらの心配はしない。それで死ぬならとっくの昔に死んでるわ。
これまで少なかった出番を取り返すようにシルバーの走りは鬼がかってる。振り落とされそうである。いや、しっかり固定してるから落ちないんだけどね!
下って約三百メートル。一瞬、音が消えたと思ったら次には凄まじい音が襲って来た。
すぐに防御体勢。まあ、ローブの中に隠れただけなんですけどね。
カイヘンベルクの失敗を活かして防御力を高めたので無問題。なんの衝撃もありませ~ん。
自分だけ助かるとかクズじゃね?
ハイ、クズですがなにか? オレは自分の命を優先させる女。一片の躊躇いも後悔もしないのです。
まったく振動がないとなにが起こってるかわからないので、外を見えるようにはしている。
衝撃が強かったのかシルバーも吹き飛ばされ、崖崩れまで起こっていた。
ちょっと不味いかな? とは思ったけど、死なないのなら我が手が死なせない。だから生きててね。
そんでなんとか停止し、すぐにローブから手足を出して皆を助けるために動いた。
各自に渡してある腕輪型のアイテムボックスが居場所を示してるので迷いなし。虫の息のヤツから回復魔法をかけまくった。
「リン! 無事?!」
「ボス!」
「周りを警戒して!」
嵌められた。完全に嵌められた。誰だか知らないが、確実に命を狙われた。
クソ! やってくれるじゃねーか。危うく死にそうになったわ。オレの勘、グッジョブだぜ。
悪態だか称賛だかわからないことを心の中で叫びながらカイドのおっちゃんらを回復しまくる。
「リン! モーグよりデカいのが現れた!」
「猿の次はゴリラかよ!」
回復に忙しくてそちらに目を向けられない。何段構えだよ! 徹底すぎんだろうが!
「任せる! 近づけさせないで!」
クソクソクソ! ピンチなんてお呼びじゃないんだよ! オレの人生ヌルゲーでいいんだよ! 弱い敵をバカ笑いしながらぶっ殺すのがお似合いなんだよ! こっちくんな! あっちいけ! ねーちゃんたちにぶっ殺されろや、こん畜生がよ!




