117 魔物モーグ
山脈を北に見て、南はダリアンナの町。南にベルホン。で、東からホブゴブリンがやって来てると言う。
ジェス率いる一番隊とハリュシュ率いる三番隊が魔物狩りに出ているのでうちーー本拠地と呼ぶか。本拠地まで到達することはない。
仮にあったとしても四番隊であるオバチャンたちに瞬殺されることだろうよ。実績はあるからな。
本拠地のことはなんら心配ないのでホブゴブリンを探しているのだが、一日過ぎても発見できないでいる。狩りすぎたか?
グランディール傭兵団の活動範囲は一日でいける距離まで。それ以上はなにかあったら対応できないのでやらせてない。
「ダメだ、ボス。ホブゴブリンどころかウサギ一匹いなかったよ」
キャンプ地で偵察に出たイビスが戻って来た。
「やっぱり狩りすぎたか……」
それに後悔はないが、気軽に狩りに出れなくなったのは困ったぜ。
「もうちょっと足を延ばしてみるか?」
う~ん。どうしよう? そんなどうしても、って気分でもないしな~。
「ねーが帰って来てから決める」
カイドのおっちゃんたちは酒を飲めればどっちでもよさそうだし。
暗くなってからねーちゃんたちが戻って来た。なんか上半身のない毛だらけの下半身をつかんで……。
「リン。これなに?」
下半身を掲げるねーちゃん。その自然体が頼も怖いです。
いろいろ尋ねたが、時間の無駄だから>っと鑑定。
「モーグ?」
初めて聞く魔物やね。
「ああ。この辺にも出始めたか」
カイドのおっちゃん、知ってるん?
「東のほうではゴブリンよりよく出るヤツだな。背はおれらくらいのからシルバーよりデカいのがいるぜ」
所変われば魔物も変わるか。生み出すヤツによって違うのかな?
「群れを成す魔物か。いた?」
「ああ。二十匹くらいいたよ」
事もなげに言う頼も怖いねーちゃん。そりゃ本拠地周辺に魔物は出ないわな。
「もう一日進んでみる」
いるのなら進むか。このまま終わってもイビスは納得しないだろうからな。
「なら、わたしは先に進んでいいか? 早くぶっ殺したいから!」
ここにも頼も恐いのがいるよ。この世界の女、頼も恐ろしいのしかいねーのかよ。
「……リリー。なんで鏡出してるの……?」
「鏡見ろ☆」
可愛い女の子しか写ってないんですがなにか?
リリーの謎の言動はともかくとして、もう一日進んでみることに決定した。
「なら、わたしは先に進んでいいか? わたしもぶっ殺したい!」
なんでオレの周りってジェノサイドが好きなのが多いんだろうね。って、リリーさん、なんで鏡を向けて来るの? 邪魔なんですけど。
「好きにしたらいい。でも、百匹以上いたら連絡して」
我慢させると優しい魔法をかけなくちゃならなくなるからな。優しさも度をすぎたら害(なにかは訊いちゃダメ)になるからよ。
「了解、ボス」
なんとも嬉しそうに駆けていってしまった。
まったく、なんでオレの周りには後方支援タイプが少ないんだよ。最強の剣とか銃とか、ゲームとか漫画の観すぎだわ。邪神と戦えとか年どころか一生を懸けての戦いになるんだぞ。そんな短絡的考えで戦い抜けるワケねーだろうがよ。
この世に生まれて七年。まだ序盤も序盤。力を蓄える時期だぞ。これから先、何十年と戦い続けなくちゃならないのに、戦うことしかしらないヤツしかいないって縛りが多すぎだろう。
「大変ね」
この他人事な守護天使が憎たらしい。もっと温かく見守れや。
悔しいので夜遅くまでコピーさせて眠りにつき、太陽が高くなってからイビスが向かったほうへと出発した。
まるで尻に火がついたようにイビスとの距離がある。どこまでいってんだよ?
「ねー。悪いけど、イビスを追ってくれる? なにか嫌な予感がする」
オレにはわかる。これは悪いパターンだ。
「あの子なら大丈夫でしょう?」
時々ねーちゃんはイビスと模擬戦してるから強さは知っているから心配もしない。つーか、なにをしてるんだか心配して欲しい。
ねーちゃんに先行してもらい昼頃になると、アイテムボックスにモーグが次々と入って来た。
はぁ~。なんでオレがいく先々で魔物溢れが起こるかの?
「呪われてるんじゃない?」
守護天使のセリフじゃねーな。つーか、守護天使なら呪いくらい払い除けろや。
さらに進むと、戦った跡が見えて来てた。
「モーグ、武器使うの?」
ねーちゃんとイビスのではない跡があちらこちらに見て取れた。
「棍棒を自分で作るくらいには知恵はあるな」
それか。地面や木が陥没してるのは。アウストラロピテクスくらいの存在かな?
まあ、知恵があろうと近代兵器には勝てないし、レベル8の斬殺少女に勝てるほどではない。百や二百脅威ではないさ。
と、これがフラグになったんだろうか? イビスから歓喜の報告がやって来た。
「ボス、うん百匹のモーグが村を襲ってる。駆逐していいよな?」
「やって」
ダメと言っても殺るだろうから素直に殺らせる。
「いいのか? 二人だけで?」
「問題ない」
あるとすれば村まで滅ぼしそうなことだな。二人ともブレーキがユルユルだからよ。
「リンちゃん! あれ!」
脇にいるミューリーが空を差した。
見上げれば……なんだ? 鳥? 馬? ん?
「グリフォンだ!」
ヤダ。そんなド定番の魔物なんてノーサンキューなんですけど!




