116 二人はプリッてる
災害竜討伐は来年の春となるかは本決まりではないらしいが、じーちゃんはそのときに合わせて正式に依頼を出した。
もちろん、グランディール傭兵団としても正式に受け入れた。
本来は秋かと思って準備はしていたが、約一年の猶予ができたワケになる。
「……ボ、ボス、我に慈悲をくれ……」
「神にでも祈れ」
生憎オレは慈悲を安売りしたりはしない主義。無慈悲ならポケットから溢れるほど詰まってるぜ。
朝から晩まで狙撃銃を生み出すイビスちゃんが涙を流してるが、お前、ちょっとメンタル弱すぎじゃね? よく戦争に従事してたよな。それとも今の体に捕らわれてるのか?
「リボルバーやショットガンも出す」
銃を欲しいってヤツが毎日のように来ている。
ったく。こっちは家内制手工業。時間をかけなければ大量生産なんてできないんだよ。
川向こうでは宿舎だけじゃなく、銃を買いに来た商人たちが職人たちを引き連れて建物を造っている。
……資本も人材も豊富で羨ましいぜ……。
ベルホンから帰って来て二ヶ月。たった二ヶ月で店を構えたところもあり、マルレインおねーさんと銃を買う交渉を始めている。
他にも職人や人足相手の屋台もでき、オバチャン連中も小遣い稼ぎか、洗濯屋みたいなことをやったり風呂屋をやったりしている。なんとも商魂逞しいオバチャンたちである。
「……ボ、ボス……」
はぁ~。まったくメンタル弱すぎなんだから。
口から魂を出しているイビスの頭に手を置いて手のひらの創造魔法を発動。命にも精神にも優しい魔法をかけてあげた。
あのとき、手のひらの創造魔法を選んだ自分、グッジョブ!
「あれ? なにしてたんだっけ?」
「狙撃銃を出してる」
アイテムボックスにある狙撃銃を出してイビスに見せる。
「あ、ああ。そうだった。寝惚けてたか?」
優しい魔法はしっかり利いてるらしく、心は穏やかになり、瞳に生気が戻ったが、さすがに三回目だと利きが薄そうだ。
「疲れてるなら狩りにでもいって来たらいい」
こいつの休息は戦いをさせるのが一番。ちょうどよくホブゴブリンがまた出て来たので狩りでもさせようかね。
「いいのか!?」
「いい。ついでにリンもいく」
オレも気分転換をしたくなった。派手にジェノサイドを咲かせてやろうじゃないか。
マルレインおねーさんにスケジュール調整してもらい、今度はドワーフをメインとした狩猟隊を組んだ。
「今度こそ根絶やしにしてやるぜ!」
目の奥で炎を燃やすイビスちゃん。生命力って神秘だね。
「リン様。用意できたぜ」
狩猟隊を指揮するのは二番隊を任せてるカイドのおっちゃんだ。
ドワーフは物作りに長けた種族で、あまり戦闘が得意じゃないが、全員が全員と言うワケじゃない。傭兵を選んだだけにパワーバトルには長けていたりする。
神から武器を与えられた者は二人しかいないが、斧とハンマーを持つ姿はいっぱしの傭兵には見えた。
狩猟に斧やハンマー? など首を傾げる者がいるだろうが、今回はイビスの発散とオレの気分転換が目的。ジェノサイドである。ジェノサイドするなら斧でもハンマーでも構わんでしょ。
「リン。あたしらもついてっていい?」
と、ねーちゃんとミューリーが現れた。狩りに出かける準備して。
「どうしたの?」
ねーちゃんならまだしもミューリーはただの女の子だ。ゴブリン一匹狩ることはできないだろうよ。
「ミューに戦いを経験させようと思って」
なんでまた? ミューリーなら戦いに身を投じなくても生きていけるだろうに。
ねーちゃんほどの戦闘力を持ってるなら最大限利用もするが、力のない一般ピーポーならできることをさせる。労力に見合わないことはしたくないわ。
「アレを破壊させる」
なんとも鬼畜な所業を思いつくねーちゃんだこと。
「ナナリの側にいたいから」
ねーちゃんとミューリーが手を繋いだ。
なにやら友情を超えたなにかが二人の間にあるようですが、二人の人生に口を出す気はない。好きにやれである。
「わかった」
二人はプリッてるなら愛の力で最終回まで乗り切れるだろうし、ねーちゃんにペアができるなら戦いの幅が広がる。ここはチャンスと見ておこう。
マルレインおねーさんに任せ、ホブゴブリンが出ていると言う地へと向かった。




