113 シンクロニシティ
ベルホンへと来た主目的は角猪狩りだ。
まあ、目的を喪失しそうになったのは認める。が、狩りはロッシュニーたちに任せていたし、十日くらいで数百を狩り、番で十四組捕獲した。
贅沢を言えば番はもっと欲しかったが、ダリアンナまでの運搬が大変で、十四組がやっとだったらしい。
狩りと見たら成功であろう。肉大好きな獣人が毎日食べても二年は……持つかな? まあ、一年は軽く持つだろうからオッケーだ。
主目的は角猪狩りだが、真の目的は邪神の揺り篭だ。
角猪の被害が大きいと聞いたとき、魔物溢れだと思った。
前世でも猪の被害は問題になっていたが、あれは猟師不足や法の問題でおおっぴらにできないだけ。銃刀法もなく世紀末な感じのところで狩りなんてやりたい放題。狩り尽くしても文句は言われないだろう。
そんな環境(時代か?)で被害が出るほどいる。邪神の揺り篭のことを知っていれば魔物溢れと繋げるのは自然である。
ましてや邪神の揺り籠を撒き散らしている存在との遭遇。近くにあると確信もするわ。
まあ、見つけるのに時間はかかってしまったが、その時間を銃販売に使えたのだから万々歳だ。
「……またわからないところに……」
生み出したのがあの雑魚野郎かはわからないが、邪神の揺り篭はキャンプ地(南)の反対側(北)にあり、周辺にある村の廃屋にあった。
……よく見つけたものだと思うし、よく村の連中にバレなかったと思うわ……。
「生み出されるところ見た?」
「はい。子として生まれ、あの穴から出ていきました」
廃屋なだけあっていたるところに隙間や穴が空いている。子として生まれ、夜にでも出ていったらわからないかもしれないな。
「どうやって見つけたの?」
「足跡を見つけ、辿ったらありました」
なるほど。足跡か。って、よくよく見たら足跡があるわ。気がつかんかったわ。
「ご苦労様。よく見つけてくれた」
見つけたのはガットと言う元戦奴で、捕まる前は狩りで生きて来たんだって。
「ご褒美」
神の力を与えられなかった者なので、手のひらの創造魔法で創った魔弓を与えた。
「ガットだけが使えるガットだけの弓であり、魔力の矢を射れる魔弓。使わないときに魔力を籠めて。アイテムボックスに入れたままでもできるから」
「……いいんですか……?」
「構わない。これは見つけてくれた礼でもあり謝罪でもあるから」
邪神の揺り籠を探るための必要経費みたいなものであり、新規者のやる気を起こさせる意味もある。神の武器をもらった者らばかり優遇したら差別だなんだと騒がれるからな。新規者にも利を与えて出世(?)できるようにしておくべきだろうよ。
「あ、ありがとうございます! 大切にします!」
それで喜んでくれるのなら安いもの。これからもオレのために励んでくださいまし。
「ハシュ。リシュ。来て」
双子を呼ぶ。
エルフで双子は珍しいことであり、人と同じくシンクロニシティがある。
「二人で同時に玉を壊して」
壊せることは知った。神に選ばれた者じゃなくてもレベルアップできると知った。
次は、その力は複数で分け与えることができるかを知りたいのだ。
レベルが上がるのはいい。だが、一人では上がりすぎるし、一人一つずつなんてやってたら効率が悪いんだよ。とは言え、同時になんて難しいので、まずは双子で試すのだ。
「「わかりました」」
そのシンクロニシティに賭ける。
二人が同時に頷き、同時にナイフを抜いて、同時に玉に刺した。
以前と同じく邪神の揺り籠は壊れた。
「「……凄い……」」
驚く二人に>っと鑑定。
よし! 二人ともレベルアップしたぜ!
フフ。どちらもレベル3。足して6か。邪神の揺り籠としては低いようだが、オレは大満足。そして、邪神様に感謝だ。
「ベルホンでやるべきことはやった。うちに帰ろう」
カイヘンベルクにいったときより短いが、疲れが心を弱くし、うちが恋しいと思わせる。
あ~。次なる戦いが来るまでゆっくりしたいなぁ~。
なんて無理なのはわかってはいるが、願望くらい言わせて欲しい。たまに現実逃避しなくちゃやってられんのよ。
「と言うか、イビスのこと忘れてない?」
あ、ああ、うん。忘れてました。
「どこまで狩りにいったのやら」
イビスにつけてる万能偵察ポッドに意識を移すと、なんかゴブリンの群れと戦ってました~。
「なにしてんの?」
「見ての通りさ!」
うん。じゃあ、虐殺してるとこ見させてもらうよ。
「応援いる?」
「いらん! これはわたしの獲物だ!」
よほど鬱憤が溜まっているようだ。ごめんね、気がついてやれなくて。
「じゃあ、リンたちは先に帰るから。もし、邪神の揺り籠があったら動かせるか確認して。もし、できたら持って来て。ダメなら壊していいから」
「了解だ、ボス。万事わたしにお任せあれだ!」
と言うのでお任せして意識を戻した。
「じゃあ、皆。帰ろうか」
まあ、いろんな人に挨拶したりマルレインおねーさんを迎えたりと、ベルホンに一旦いかなきゃならんのだけどね。




