112 マルレイン
予定通りに銃の販売を終わりにさせた。
のだが、傭兵会館のが片付けの邪魔をして来る。
「どうにかならないか? まだ欲しいと言ってるのがいるんだ」
ウワサが近くの町に広がったようで、終わることの突き上げが傭兵会館のおっちゃんのところに集まり、なんとか延長するよう頼み込んでいる。
「どうにもならない」
どうにかしたいならさらなる利になるものを出しやがれ。そんな頭下げられてもなんの利にも得にもならんわ。
「あと三日、あと三日でいいんだ、頼む!」
その三日でいい理由も口にしないで信じろとかナメてんの? ナメてんならナメ返すよ。
「館長。止めたほうがよろしいですよ」
見かねたマルレインおねーさんが止めに入ってくれた。
あまり、と言うか、無駄話をまったくしないおねーさんではあるが、常に意識を向けており、オレらの性格や行動を探っていた。
言葉少なめなオレの性格(表向き)もおおよそは理解し、決断を変えることはないとわかり、それ以上は頑なになると、傭兵会館のおっちゃんを止めたのだろうよ。
「だ。だが……」
突き上げが厳しいようで引くに引けないのだろうよ。知らんけど。
「リンさん。銃の販売を止めるワケではないんでしょう?」
「うん。止めない」
と言うか止めるワケにはいかないと言ったほうが正しい。
「再開はいつ頃ですか?」
「予定は夏頃。今度は遠くを狙える銃を売る」
狙撃銃も万が一に備えて広めておきたい。イビス。ガンバ!
絶望色に染まるイビスにサムズアップで励ましてやった。
「値段は?」
「一つ金貨十二枚。弾は銅貨八枚。魔石でも可」
さすがにショットガンより安くはできない。遠距離攻撃は高いと知らしめたいからな。
「館長。資金調達に力を入れるよう通達してください。あと、魔物狩りが激しくなると思いますので、冒険者組合にもかけ合ってください。それと、これを機にダリアンナの町に傭兵会館の支部を置いたほうがよろしいかと。ここで動かなければ商人に利を奪われてしまいますよ」
さすがマルレインおねーさん。先を読むだけではなく、状況を利用してるよ。
「あ、ああ。確かにそうだな。よし。すぐに人を用意する」
「それと、わたしは傭兵会館を辞めてリンさんの傭兵団に入ります」
これを狙っていたらマルレインおねーさんカッケェェェェェッ!
「お、おい、お前が抜けたら会館はやっていけないだろう……」
やはり裏ボス的な感じだったんやね。餌付けしてて良かった。
「外にいるより中でリンさんと繋がっていたほうが得策だと思います」
傭兵会館はオレと繋がれて、オレは傭兵会館と繋がられる。なんともよろしい関係どすな~。ムフフ。
「そ、それはそうだが、他の者でもいいだろう。な?」
それはそちらの問題。こちらに求めないでください。と、我関せずで片付けをします。
「他の者とは誰ですか? その者はリンさんとやっていけるのですか? リンさんの考えに沿わなければ邪魔でしかありません。反感を買っては商人たちに排除されますよ」
説得もお上手だこと。
「だが……」
まあ、傭兵会館のおっちゃんの渋りもわからないではない。裏ボスが抜けたら会館の維持とか大変そうだしな。わかるわかる。だからって遠慮してやるつもりはないけど!
「イビス。片付けはいいから先に例のところにいってて」
ゾンビのように動くイビスちゃん。さすがに息抜きさせてやらんと使い物にならなくなる。君にはまだまだ働いてもらわにゃならんからね。
「余力があるなら角猪を狩って来て」
邪神の揺り篭に人員を割いたから角猪狩りは中止した。あとはイビスがいなくても充分事足りるし、狩りで鬱屈を発散できるのなら安いもんである。
「了解だ、ボス! 狩り尽くしてやるよ!」
安いじゃなく易い女である。まあ、童貞みたいだったし、根は易い性格なんだろうよ。
駆けていくイビスを見送り、片付け再開する。
「リンさん」
と、話し合いが終わったのか、なにか晴れやかな顔をしてマルレインおねーさんがやって来た。
「円満に傭兵会館を辞められましたので、グランディール傭兵団に入れてください」
この人はきっと、自分に正直な人なんだろうな~と思う。
「わかった。歓迎する」
マルレインおねーさんゲット。これで少しは楽ができるぜ!




