111 ルール
ベルホンに来て八日が過ぎた。
あれ? なにしに来たんだっけ? と目的を忘れそうなくらい銃がバカ売れです。
まあ、銃が売れればオレの懐は潤う。未来に希望が持てる。目的を変えても問題はあるまいて。
「……ボ、ボス~。もう限界だ~……」
「限界を超えた先に幸せはある。頑張れ」
「ないよ! 地獄しかないよ! もうやりたくないんだよ!」
前世、戦争な世界で生きて来た感じのクセに、すっかり見た目通りになりやがって。男としてのプライドはどこにやった?
……ちなみにオレは早々に捨てました。邪魔なので……。
「これなら戦場で戦ってるほうがマシだ」
ヤダね~戦争な世界で生きてた(かもしんない)人は~。誰も殺さないのが一番の幸せだってのによ。
「人を殺す銃を創ることは幸せなのかしら?」
あらヤダ。オレは邪神と戦うための銃を創らせてるのであって人を殺す銃を作らせてるワケではありませんことよ。
「人は料理をする道具でも殺しをしたりする」
そこんとこ神様はどう思ってるか、守護天使様の口から聞いてみたいもんですわ~。
「主は見守りたもうなり」
クソ食らえと、指の真ん中を天に突き刺してやるよ。
「ボスぅ~」
ったく、泣き声言うなや。泣いても問題は解決しねーんだからよ。
「──リン様」
万能偵察ポッドからロッシュニーの声が発せられた。どったの?
「例のものを発見しました」
「わかった。その場を確保して」
「はい。わかりました」
通信を切り、ため息を吐く。
ったく。やっとかよ。八日も探して見つからないから諦めかけてたぜ。
「ボス、敵か?」
敵なら殺るぜ! とばかりに目を輝かすイビスちゃん。君はもっと人の心を持ちなさい。
「違う。アレを見つけただけ」
ココアをお代わりし、魔力回復クッキーをパクつく。うん、美味しい。
「……いかなくていいのか? また溢れるのではないか?」
「それはない」
と、はっきり言えないが、オレはないと見ている。
「アレは恐らく血によって創られている。血の濃さか量かはわからないけど、溢れさせるには命を費やすくらいのことが必要なんだと思う」
人の命で邪神の揺り篭が創られるなら何千何万の命が消えているはずだ。
そんな数の命が消えているならウワサくらい聞こえて来るはずだし、誰かが気づいているはずだ。
それがないと言うことは少量の血を使ってばら蒔いていると見たほうが納得できる。そして、血も有限だからそうそうたくさんはばら蒔けないとなれば邪神の使徒はかなりの数がいるってことになるワケだ。
……なんの情報もなく予算も与えず戦えとかクソゲーも真っ青だわ……。
「もしかして、使徒を待ち伏せするのか?」
「使徒は来ない」
「なぜ、そう言い切れるんだ?」
「あいつらは単独で行動してるから」
もちろん、絶対にそうだとは言えないさ。ただ、組織立って動いているならあまりにも稚拙すぎるし、あんな憎悪しかないヤツを使うとか頭悪すぎるだろう。
「たぶん、あれは使い捨て。重要なことは知らされてない。リンたちのように」
仮に黒幕的な存在がいるとしても表に出て来ることは決してないだろう。まあ、出て来ては欲しいが、軽々しく出て来るアホならこんなに苦労してないよ。ったくよ~。
「リンたちは駒。この世は盤。打ち手は神々。ルールがあるなら対等じゃなくちゃ勝負にならない」
と、思わなくちゃやってられんわ。
「……駒、ね。さぞや神々は嘆いているだろうな。駒が勝手に動くんだからさ……」
駒に盤をひっくり返してやることはできないが、自由に動いてよいのならルールをひっくり返してやるさ。お前らの望むままに動いてやるかよ。ケッ!
「銃の販売はあと三日続ける」
「みっ、三日も!? 勘弁してくれよ……」
「銃を売るのは未来への布石。死にたくないのなら頑張る」
まあ、役に立つかはわからないが、少なくとも活動資金は得られるのだ、未来を勝ち取るには今を大切にしなければいけないのだ。
「ボスの力で創ってくれよ」
「無理。リンも頑張ってるから」
ったく。オレがなにもしてないと思ってんの? 起きてるときも寝てるときも、未来を得るために一分一秒無駄にはしてないってーの。
負けたら人生即終了。
百戦百勝しなくちゃならない人生とかほんとクソである。




