107 リン(オレ)が原因
大大大の大盛況や~。
ちょっと焦らして購買欲を煽ってやろうとしたが、そんなこと必要がなかったくらいバカ売れである。
……ムフフ。油断したら顔がニヤけそうだぜ……
「逆にイビスの顔から表情が消えそうになってるけどね」
それは自助努力で頑張ってください。オレにはどうしてやることもできないんでさ。
「いや、どうにかしないと心が死んじゃうわよ、あれ」
ったく、精神弱すぎんだろう。
「リンと比べたら失礼よ」
お前が一番失礼だよ! オレだって繊細なところはあるわ! どこって言われたら返答に困るけど!
「マルレインおねーさん、ここお願い。イビスと代わる」
今、イビスに壊れられたら儲けが減るし、これからの戦いのこともある。こんなところで壊れられたら困るんだよ、畜生め。
「イビス。交換。休んでて」
首根っこつかんで下がらせる。
「リリー。イビスについててあげて」
今だけイビスの守護天使やっててちょうだい。
「しょうがないわね。勝手に死なないでよ」
死ぬ報告して死ぬほどマヌケではありません。オレは八十歳まで生きる予定だわ。
銃と弾の引き渡しにどんな精神負荷がかかるかは知らんが、これはこれで一苦労だな。オマケしろと言うバカも多いしよ。
バカをあしらいながら夕方には販売終了できた。ふぅ~。無事に終われてよかったぜ。
試射会は? って問いには娼館の男が仕切ってくれました。マジ優秀な野郎どもだよ。お礼に酒もつけてやるか。
「嬢ちゃん。これからも定期的に銃を売って欲しいんだが」
片付けしようとしたら傭兵会館のおっちゃんがやって来てそんなことを言った。
「リンのところに来れば売る」
こちらから売りには来ないので悪しからず。
「……ダリアンナか……」
ん? なにか問題があるのか?
「もしかして、ダリアンナの町に傭兵会館がないのを知らんのか?」
え、ないの? なんでよ? いや、待てよ。あるなら組合長が出て来るワケねーか。気がつけよ、オレ!
「ダリアンナの町はここ数年、魔物の発生がなくて仕事にならんからベルホンに吸収されたんだよ」
ハイ、まず間違いなくグランディール傭兵団のせいですね。野望を叶えるために毎日のように魔物狩りしてましたから。
「なら、ダリアンナの町の組合長と相談する」
うちに押しかけられても困るからな。
「それは助かる。まだしばらくは狩りをするんだよな?」
「する。まだ角猪はいるから」
たぶん、邪神の揺り篭があるんだろう。それを見つけて破壊するまでは帰れまてん。
「なら、手間が空いたときに売ってくれんか? 各傭兵団から要望が上がって来てるのだ」
手間が空いたとき、とは言ってるが、まずそうならないのは目に見えている。
「傭兵会館で人を出してくれるなら構わない」
買いたいと言うならよろこんで! だが、手間をかけられるのはゴメンである。こちらもやることはたくさんあるんでな。
「……わ、わかった。用意しよう。三人でいいか?」
「今日のような感じなら六人はいたほうがいいと思う」
まあ、丸投げするから三人でも構わんよ。苦情はそちら持ちだしな。
「あ、ああ。六人用意しよう」
「明日、今日と同じ時間にここによこして」
そう言って片付け開始、ぱっぱと済ませ宿に帰る。いっぱい働いたから今日も早目に就寝しようっと。
なんてルンルン気分で帰ったら、なんか樽が山積みされていた。なによ!?
「町中からエールを集めて来た。頼むよ」
あ、そう言えば酒を頼まれていたんだった。目先の欲にくらんで忘れてたわ。
なんて驚いてはみたものの、アイテムボックスに入れてアイテム工房で作るからこれと言った苦はない。
「帰るまでには作る」
「ああ、頼むよ。報酬は金貨でいいかしら?」
「構わない」
ってか、金貨をこんなに集めて町の経済は大丈夫なのか? 金貨、凄い量になってるけどよ。
「古い小麦とか集められる?」
どこの町も備蓄はしている、はず、だよね?
「ああ。できるが、古いのでいいのかい?」
「構わない。これで買えるだけ買って。手間賃も引いておいて」
渡された金をそのまま姉ばーちゃんに返す。
「助かるよ。ちーとばかり無理したからね」
それでも無理したってことは酒が思った以上に不足してるってことかな? いや、エールは五十樽くらい集められるんだから高級酒が不足してるってことだろう。
んじゃ、夕食の準備をしますかね。今日は手伝ってくれた野郎どもいるから角猪をバラしますかね。




