106 銃販売
そろそろ頃合いかな? と思ってたら、ガイのおっちゃんが慌てた様子で駆け込んで来た。どったの?
「早く来てくれ! 暴動になりそうだ!」
それを止めるのはオレじゃなく傭兵会館のおっちゃんやろが。ってまあ、いい感じに盛り上がってるんだからいくとしますかね。
「皆。キャンプ地へ」
さあ、儲けにいこうか。
とかなんとか意気込んでキャンプ地に来ると、祭りか!? と叫びたいくらいの人で溢れてました。
傭兵だけではなく商人もいるな。あと、ダークサイドの方もちらほらと。
「やっと来たか」
「時間は決めてない」
明後日としか言ってないし~。そっちも時間指定してないし~。
なんて煽りはしないよ。本当に暴動になっちゃうからね。
「銃は有り余るくらいある。用意するから騒がず待ってて」
傭兵会館のおっちゃん。よろしく頼むよ。暴動になったらオレは全力ダッシュで逃げるから。もうベルホンには来ないんだから。
「ロッシュニーたちは商品の見張りと受け渡しをお願い」
キャンプ地の端を販売所とする。ほら、場所開けて!
「リンさん。あっしらはどうしやす?」
あ、娼館の男たちにも手伝いをお願いしたんだった。
「簡単な的を作って。試し撃ちさせるから」
「わかりやした」
やたら七歳児に下手に出るな。なんか姐さんと呼ばれそうな勢いだわ。
まあ、素直に働いてくれるのならなんでもいいや。お駄賃弾むからしっかり働いてちょうだいな。
テーブルを出して区画を作り、アイテムボックスから銃や弾を出す。
「イビスは受け渡し担当。よろしく」
接客に不向きな性格だが、渡すだけならできるだろう。つーか、そのくらいやれ。人手不足なんだからよ。
「買う人はこちらに並んで。銃はそちらで渡すから」
傭兵会館の人間らしき方々が整理してくれ、客を仕切ってくれた。
「おねーさん。書記お願い。お駄賃にお菓子あげるから」
「任せて!」
やっすいな~。とか言っちゃダメ。マルレインおねーさんの中では重要なことなんだからさ。
「商品はリボルバーにショットガン、そして弾。なにが欲しい?」
まず最初のお客様は傭兵な感じの男だ。
「リボルバーとショットガンを二十ずつ。弾は二百ずつくれ」
なんとも豪気なお客様だこと。ってか、大量買いだね。
「支払いは金貨? 魔石?」
「金貨で頼む」
「なら、合計で金貨六十五枚。今日買う人には弾を百発オマケする」
金貨六十五枚は大金だが、剣も良いものになれば金貨五十枚になることもあるそうだ。そう考えれば……どうなんだ? まあ、価値はそれぞれで確めてくださいな。
「あ、ああ。それで頼む」
マルレインおねーさんに注文書を書いてもらい、金と注文書を交換。イビスのところで受け取ってもらいます。あ、注意事項も教えてもらうんだからね。
と言う流れを作り、銃を販売する。
人は多いが、買う者は一人か二人なので順調に捌けている。
ってか、ごねる者や値切る者がいないことが不思議でたまらない。ベルホンの連中は行儀が良いヤツらばっかりなのか?
「リンを恐れている感じね」
と、リリーが耳元で囁いた。なんでよ?
「そりゃ、黒いウワサがあるところが一夜にして消えたらリンと関連付けるわよ。あ、こいつヤベーんじゃね? って」
守護天使がヤベーとか使うなよ。お下品ですことよ。
「世の中にはバカは多いけど、機敏な者、時勢を読む者も多くいるわ」
たぶん、それは土地柄だろう。ここは商人が治めている。機微に聡く、時勢を見抜かなければ生き残ることも繁栄することも叶わない。
だからこそ、油断はできないのだ。
オレを利用してやると来るなら大歓迎だが、排除しようと来られるのだけは絶対に避けなければならない。オレの能力を悟らせてはならない。オレの野望が叶うときまで敵は少ないことに越したことはないのだ。
銃はその一手。なければ困る、までは無理でもあると便利と思わせ、魔物を一匹でも多く駆逐させる。
これはオレのため。オレが幸せになるための下準備。銃が広がることの諸問題など知ったこっちゃねーわ。なによりオレの命が一番なんだよ。
「……ほんと、クズいわよね……」
自分の命を粗末にするヤツは他人の命も粗末にする。うん。オレ、いいこと言った。
「やってることは最低だけどね」
わかってもらえないことが悲しいわ~。




