105 慈悲はなし
次の日、販売は予定通りに行われ、完売となりました。
ってか、まさか銃がバカ売れになるとは思わなかった。いったいどんなウワサが流れたんだ?
「……ボス。銃なんて広めて本当にいいのか? 歴史的にも倫理的にも……」
「歴史に正しい正しくないなんてない。成るように成った。それが歴史。倫理なんて時代時代で違うもの。遥か未来の歴史家がなんと言おうが、今を生きている者には届かない」
簡単に言うなら知るかボケ! である。
「リンたちに大切なのは未来より今。やれるべきことをやるしかない」
なのでリリーちゃん。弾のコピーとロッカーのコピー、よろしく頼むよ。売り切れにならないようにね。
「わたしの存在意義ってなにかしらね?」
もちろん、オレを助けるために君はいるんだよ。だからオレのためにコピーしまくれや!
明日の試射会だか促進売だかよくわからないものになりつつあるが、参加したいと言う者が多かった。下手したら傭兵団だけではなく一般人も来そうな勢いだ。
「売って売って売りまくる。だから出せるだけ出しまくって」
この世界に銃を広めてやるぜ。
「……わたしは生身だと言うことを忘れないでくれ……」
「リンは仲間の命を無駄にはしない」
その命が尽きるそのときまで、オレが無駄になんかするもんか。殺してくれと言ったって死なせないさ!
「いざと言うときは慈悲を」
「リンの辞書に慈悲はなし」
掲載させたきゃ慈悲がなんなのか八十年かけて教えて欲しいわ。
「そ、そうか。なら、慈悲は神に願うとするよ……」
無慈悲なことをされてまだ神に慈悲を求めるか。オレはもう罵倒しか出ないのに信心深いことだよ。
「好きにしたらいい」
信仰は自由。オレがどうこう言う権利はないさ。
商品はないので片付けはお駄賃を渡して宿の方々にお任せ。オレらは明日の準備に取りかかる。
まあ、準備と言ってもリリーちゃんが頑張るのでオレは早めに就寝。清々しく朝を迎えた。
「いい朝だ」
「……そりゃそうでしょうよ。わたしに押しつけるんだから……」
ハイ、お陰さまを持ちまして魔力全快。今日も元気に生きられまっす!
ルンルン気分で朝食を作り、皆でいただきます。って、イビスがいないな。マルレインおねーさんは当然のようにいるのに。
あれ? 部屋にいたっけ? まったく記憶にございません。
「イビスなら先にいったわよ」
なんで?
「リンにこき使われるなら野で寝たほうがいいって」
失敬な。オレは……するな。うん。って言うか、寝る間も惜しんで出せって言うの忘れてたわ。クソ。
「……そのうち背後から撃たれるからね……」
それから眠れぬ夜を送りたいのなら好きにすればいい。きっと楽しい日々になると思うよ。
「イビスなら昨日のうちに出ていったわよ。これ以上こき使われたくないと言ってね」
失敬な。生きるための相互助力じゃないか。ったくよ。
まあいいやと朝食をいただき、食後のお茶で一息。さあいくかと思ったとき、イビスがやって来た。なにか息を切らして。襲われたか?
「ボス、大変だ! キャンプ地にたくさんの人が集まって収拾がつかなくなっている!」
と言うのでキャンプ地を監視させてある万能偵察ポッドに意識を繋ぐ。うん。たくさんいますわ~。
大盛況でなによりと、お茶のお代わり。あー美味しい。
「ここは慌てるところだが?」
「慌ててもなにも解決しない」
するならいくらでも慌てるさ。だが、解決されることもなければ状況もよくならない。まあ、益々悪くはなるだろうが、そんなこと知ったこちゃない。なんなら暴発して頭を冷やして欲しいくらいだわ。
「屋台でも出せば儲かるかな?」
まあ、人手がないし、準備もしてないから無理だが、やはりこう言うときのために人を育てておくべきだな。
あ、宿屋でもやろうかな? かーちゃんを女将にすればやれんじゃね? 帰ったら話してみるか。ダメでもオバチャンたちにやらせればいいしな。
なんてことを考えながらお茶のお代わり。ハァ~。お茶が美味い。




